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執筆者の写真Yukihiro Nakamura

ブレンド その3

更新日:2020年2月22日


 思いの外に期待通りに出来て満足。以下は実験の詳細である。


 

第5段階:ブレンドの実験


豆について


 8種類の豆を準備した。いずれの豆も一度テイスティングしているが、少しでも違う豆を試したいと思い、ゲイシャ以外は銘柄は同等で異なる豆を手配した。

 例えばエチオピアのモカはハラーイルガチャフィーを試したが、シダモは初めて。マンデリンはブルー・リントンを試したが、マンデリンG1は初めて。コロンビアブラジル、ガテマラジャバロブは以前購入した店と違う店の豆である。



豆の詳細


 品種標高精製方法は様々である。クロップは概ね2019年だが、モカガテマラはオールドクロップ、少し古かった。

 生産地は代表的な地域で、アフリカ2種、東南アジア2種、中南米4種。

 コロンビアブラジル、ガテマラモカタンザニアマンデリン電動焙煎機で中煎り、ロブスタは電動焙煎機で深煎り、ゲイシャ手動焙煎機で浅煎りにした。手動焙煎機を使うのは久しぶりである、2ハゼが始まった段階で焙煎を止め冷却した。焙煎時間は約13分。電動焙煎機の換気穴が詰まってきているのか、最近ちょっと中煎りが深煎りより。

 

シングルオリジンのテイスティング


 以前テイスティングした時は個別にテイスティングしているため、例えば甘味についての判断は、苦味・酸味と比べてどのくらい甘味を感じているかと言う結果で、コロンビアゲイシャの甘味が同じ7となっているが、同程度の甘さと言うことでは無なかった。

単独でテイスティングした結果


 今回は8種類の豆を同時に味見して、どの豆の甘味が絶対値として一番大きな値となるかと言う点に注力してテイスティングした。

 テストは少量ずつ、それぞれカップに2.5gの中細挽きの豆を入れ、80℃のお湯を20cc入れスティーピングで比較した。

同時にテイスティングした結果


 前回の評価と多少変化しているが、大筋は同じだった。同時に飲み比べると、違いや似ている所がよくわかる。コロンビアからマンデリンまでの6種は際立った差があまり感じられない。モカの香の違いに期待したが、これも微妙で、ブラジル、ガテマラは似ている。その点、ロブスタゲイシャは味も香りも全く異なり同じ珈琲とは思えない個性がある。今回の豆の特徴を言葉にすると以下の通り。


  1. コロンビアは飲み心地が一番甘い。

  2. ブラジルは酸味と甘味が印象に残る。

  3. モカは酸味・甘味・苦味のバランスが良い。残念ながら今クロップの香りは弱い。

  4. ガテマラは個性が弱く特筆すべき点が見当たらない。

  5. タンザニアは甘味とすっきり感がある。

  6. マンデリンは丸い感じでそれは甘味だろうと思う。

  7. ロブスタは麦こがしの風味が個性的。苦味一番だがよく味わうと甘味がある。

  8. ゲイシャは確かにフルーティーで味の質が異なる別物である。酸味と香りが良い。

 

 いずれも単体で美味しい。ロブスタは深入り、ゲイシャは浅煎りにしたため、より個性が際立っている。他の豆も浅煎りにすると酸味やフルーティーな感じが出るだろうし、深煎りにすれば苦味が出るだろうが、今回はそこまでは探求しない。

 

ブレンドの配合

 配合の比率をそのままグラムとし合計で10gの一杯分とする。比率の右に1gあたりの単価、表の右端に1杯あたりの単価を示した。ゲイシャ以外は1gあたりの単価がいずれも2〜3円と差がない。このブレンドでゲイシャの風味も味わえれば嬉しい。


テスト方法


  1. 焙煎3日目〜5日目の浅煎り、中煎り、深煎り豆を用意する。

  2. 配合表に従いトータル10gとなるようにブレンドする。

  3. テスト直前に中細挽にして香りを確認する。

  4. コーノ式を用いて100cc、85℃のお湯でドリップする。

  5. 膨らみ具合と香りを確認する。

  6. 一口目の印象、喉越しの味、余韻をテイスティングする。


 

結果その1 B1〜B4まで


 焙煎して間もないため、どのブレンドも蒸らしでよく膨らみ美味しそうだ。


  1. B1の酸味について:一口目に酸味を感じ、冷めてくると甘味や苦味が楽しめる。モカブラジル、ガテマラがモカ香を楽しませてくれる。余韻が残る。

  2. B2の苦味について:一口目に苦味を感じる、これはひとえにロブスタの効果だと思う。コロンビアブラジルタンザニアの効果で甘味も出ている。

  3. B3のコクについて: コロンビアブラジル、の効果で甘くまろやかで、コクのあるマンデリンガテマラがあいまって味に奥行きがある。ただ、B1、B2もコクがあり、B3が際立ってコクがあると言う感じではない。

  4. B4のポピュラーさについて:甘みのコロンビアブラジル、酸味のモカ、苦味のロブスタを合わせることで、全ての要素を持たせた味を狙っている。モカの風味が弱く感じるため、モカの分量を増やした方が良かったかもしれない。ロブスタ は少量だが、十分に役割を果たしている。よく味わってみると個性がないということに気付く。何もかもを求めると相殺しあって没個性になってしまうのかもしれない。


 望んでいた味が得られたと感じている。シングルオリジンで飲み比べた時は個々の違いがわからないこともあったのだが、ブレンドすることで、かえって個性が引出され、それぞれの良さが感じられた。一つ一つの豆の素性を知っているからそう思うのかもしれないが、ブレンドすることで着地点を目指すことができる手応えを感じる。個性の強い豆は少量でも存在感を発揮する。クロップによって豆の風味は一定ではないから、風味の弱い豆をブレンドする場合は配分を少し多めにすると期待した味になるかもしれないが、モカガテマラはオールドクロップだったから香りが抜けていたのかもしれない。次回はクロップもよく確認して購入したい。よほどまずかったり、異質の味を加えない限り、美味しい豆のブレンドは、美味しい珈琲になると感じる。


 珈琲の甘味、苦味、酸味は個々の絶対値がいかに高いかというよりも、バランスで味を感じていて、例えばこの珈琲は比較的甘さが勝っているとか、苦さが勝っているとか、酸味が勝っているというような感じ方をしているのだと思う。今回の4種類の実験はコロンビアの甘味に酸味や苦味に特徴がある豆を合わせることで、バランスを酸味より、苦味よりに味付けしているわけだ。だから全てを求めると、ぼやけてしまうのだろう。



結果その2 B5の2種


 「甘さに清涼感」を目指したブレンドのアイデアをもとにコロンビアモカゲイシャ3種類の配合を2通り試す。配合を変えることでどの程度の変化があるか、どちらの配合が甘さと清涼感を実現しているかを確かめる。

 美味い。ゲイシャのフルーティーさと、モカの良い香りに、ほんのりとした甘味が、複雑でコクのある風味を作っている。苦味は少ない。


  1. B5-1について:こちらの方がコクがある。

  2. B5-2について:ゲイシャが少ない分味も薄く、スッキリしている。


 ゲイシャは個性が強く存在感があるが、1gと2gではだいぶ味が変わる、ゲイシャが多い方が美味しい。甘味はコロンビアだけでなくモカゲイシャの甘味も加わり柔らかい甘味になっている。モカ単体ではあまり感じなかったモカ香がゲイシャと相まって、心地よく香ってくる。酸味による清涼感を期待していたが、コクがある分清涼感は薄く感じる。飲み終えた後の余韻も長くB5-1の勝ち。


 

第6段階:オリジナルブレンドを創る


 実験結果を参考に、オリジナルブレンドの着想を練る。


  1. 美味しい豆のブレンドは、美味しい珈琲になるという結論から、好きな豆を混ぜたら美味しかろうと言う安直な考えでもいけるかもしれない。

  2. ゲイシャロブスタは個性が強烈だから、組み合わせたら強烈なフレバーになり面白そうだ。

  3. トラジャも甘味に特徴があるから、甘みのパートをトラジャ に受け持たせるのも面白そうだ。


 着地点のイメージ:甘さと苦さのバランスが良く爽やかなフレーバーの珈琲。



 組み合わせとして3案をイメージしてみた。今はお腹いっぱいの感があるので、しばらく時間をおいてから、トラジャ を仕入れて試すことにする。実は甘さと苦さのバランスが良く爽やなフレーバーというのは全てを求めているようなものなので、欲張ると、失敗するかもしれない。



 

第7段階:ブレンドの必然性を考察する


  • ブレンドはどちらかと言えば安くておいしいイメージがあった。おいしい豆ばかりをブレンドすると美味しくなるかもしれないが、安くなるとは限らない。これからは割高のブレンドも受け入れられるようになるかもしれないが、今はどうだろう。

  • オリジナルを生み出すにはまだ経験不足だ。ただ、以前よりブレンドの必然性を感じている。もしお店を開くなら、お店の個性を表現したオリジナルブレンドを持ちたい。価格を抑え味を整えるためのブレンドも、お店を維持するためには必要かもしれない。お店を開くつもりは毛頭ないから、関係ないのだが。

  • シングルオリジンとブレンドを比べて優劣をつけることも意味がなさそうだ。珈琲の味は複雑だが、豆による違は微妙な差である。好みも人それぞれ、1番を決めるのは難しい。ただ、今回の実験でブレンドするとシングルオリジンよりも複雑な味わいが楽しめたようには思う。

  • 美味しさにこだわるなら、焙煎する時期を調整することもブレンドの技になるかもしれない。なぜなら、焙煎後の飲み頃が豆によって異なっているためだ。むしろ、豆の状態を毎日調べて風味の度合いに応じて割合を変える方がいいかもしれない。豆の状態を把握できるスキルがあれば、毎日最良のブレンドを提供できる。

  • たかがブレンド、されどブレンド。


 

追記


  • 単体テストを行った時、残った珈琲8種を全て混ぜてみた。スティーピングで淹れているため、珈琲オイルも入っているし、だいぶ濃い珈琲になっている。でも、何も考えずに飲むと、ただ美味しい珈琲だと思う。複数の珈琲を混ぜても濃くなるわけではなく、味に微妙な変化があるが、珈琲としての風合いは変わらない。

  • オールドクロップだったモカガテマラは風味が落ちていた。ちゃんとエイジングできていれば熟成された旨味が出るようだが、そうでなければ、水分が抜け風味も抜けてしまう。購入時に気を付けるべきだった。

  • 今回の実験でブレンドの一旦を味わうことができた。正直を言うとちょっとめんどくさい。個人が適当に珈琲を楽しんでいる領域では、余った珈琲を適当に混ぜて、さてどうなるでしょう、的な楽しみ方もありだと思う。気分によって求める味は変わってしまうし、美味しい豆を組み合わせたら大体おいしいのだから。

  • 豆を挽く度にミルに風味や微粉が蓄積されていく。掃除をしても全てを取り除くのは難しい。シングルオリジンを挽いているつもりで、それまでに挽いた豆の風味が微妙に加味されているに違いない。個性の強い豆を挽いた後は尚更だ。ブレンドしているつもりはなくても、ナチュラルブレンドになっている気がする。

  • 今は面白がって、とりあえずやってみて、自己満足している。いろいろ試し、経験することで、これはと言うブレンドを作ることができる日が来るかもしれない。そう思いながら、今日の一杯を味わう。


新年に着想したブレンドの考察もようやく一段楽した。


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