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執筆者の写真Yukihiro Nakamura

珈琲豆 その3

更新日:2020年2月15日


 珈琲豆は精製方法で味が異なるということだがピンときていなかった。そのため珈琲豆その1でも2種類の精製方法を調べるにとどめていた。その後何種類か珈琲豆を味わい。微妙な風味の違いを体感して改めて精製方法に目を向けると、なるほど風味の違いがここらへんにあるのかなということを感じる。そこで今回はもう少し踏み込んで調べてみた。2019年6月現在5種類の精製方法を見つけることができる。


珈琲豆の精製方法

  1. 非水洗式(ナチュラル)

  2. 水洗式(ウォッシュト・フリーウォッシュト)

  3. パルプドナチュラル(ハニープロセス)

  4. スマトラ式による精製方法

  5. アナエロビコ(アナエロビック・ファーメンション)



 珈琲は種をまいて約2か月で発芽し、苗床で約1年育て、農園に植え替えて2~3年経つと珈琲チェリーを収穫できるようになり、10年間くらい収穫できる。出荷するためには収穫された珈琲チェリーから生豆を取り出すために、ミューシレージ、果肉、皮などの部分を取り除く必要がある。これを精製という。


 ミューシレージは珈琲の果実の中に入っているパーチメントという部分の外側に付着した粘液で糖分と酸味がある。生豆はミューシレージを取り除いたものだが、いかにこのミューシレージの糖分や酸味を持たせるかが精製方法によって変わってくる。以下精製方法の概要である。

 

1.非水洗式(ナチュラル)


 収穫した実をそのまま乾燥させる方法。実のまま、脱穀せず果肉がついたままなので、生豆の色もウォッシュトとは異なり、特有の香りが残る。慣れてくると生豆、焙煎豆、味わいだけでナチュラルと分かるくらい特徴的らしい。

 大量の水を必要としないため、安い値段で加工でき環境にも良いが、ウォッシュトに比べるとどうしても異物が混入しやすく欠点豆が多くなりがち。また乾燥させるためには晴れている必要があるので天候に左右されやすく、乾燥させるために広大な平地も必要になる。  昨今の手間ひまかけた高品質のナチュラルの珈琲は、誰がどう飲んでも分かるほどの素晴らしいフルーツ感があり、高品質珈琲としてはウォッシュトより高価であることが多い。攪拌しては水分値を計測し撹拌する繰り返しを行うため難易度も高くなている。

 

2.水洗式(ウォッシュト)


 収穫した実の一番外側に付いている果肉をパルパー(果肉除去機)で除去し、ミューシレージリムーバと言われる機械か、発酵槽に入れて酵素の効力でミューシレージを取り除き、水で洗浄する。洗浄することによって水気が多くなってしまうので、含水率が11%~12%になるまで乾燥させる。最後に脱穀機でパーチメントを取り除く。

 ウォッシュトは、何段階にも分けて珈琲生豆を精製するので、より欠点豆の少ない品質の高い珈琲生豆を生産することができる。一方で、加工の過程で大量の水が必要になるため、水の確保と、水質汚染に対する配慮が必要となる。


 またこのウォッシュトの中でも、ミューシレージの除去の仕方で呼び名が異なる場合があり、国によって微妙な違いがある。

  • フルウォッシュト:発酵槽につけて発酵した後に除去

  • セミウォッシュト(メカニカルウォッシュト,ホワイトハニー):機械で一気に除去

  • ケニア式(ダブルウォッシュト):発酵槽で除去、洗浄後、再度水に漬ける(これをソーキングと言う)

 

3.パルプドナチュラル(ハニープロセス)


 ナチュラルとウォッシュトの間に位置する精製法がハニープロセス。この精製方法は2000年以降にブラジルで発明された新しい加工方法で、ウォッシュト同様に果肉を機械で除去した後、ミューシレージを取り除く作業をせずに、ミューシレージを残したまま乾燥させる。この方法は大量の水を必要としない割に欠点豆の量が比較的に少なくなる。そのために最近になって人気な精製方法であり、実際に今まではナチュラルで加工していたけど、ハニープロセスに変更している珈琲生産国もある。ミューシレージの残存率に応じて

  • ホワイトハニー10%

  • ゴールデンハニー25-20%

  • イエローハニー50%

  • レッドハニー80-75%

  • ブラックハニー100%

と呼ぶ。それぞれで乾燥のスピードも違うため細かい工夫があり基本的に高価なことが多い。スペイン語ではミューシレージのことを「ミエル(miel)」と呼び、ハチミツのことも「ミエル」と呼ぶのでこのように呼ばれるようになった。パルプドナチュラルはブラジル産のものに使われ、ハニープロセスは中米産のものに対して使われている。ハニープロセスは、珈琲豆を乾燥させる過程で、ミューシレージの中に含まれている糖分と酸味が凝縮されて珈琲豆の中に染み込むので独特な味をだし、ウォッシュトよりも特有の甘味のある香味になり、ナチュラルほどクセのある味わいにはならない。

 

4.スマトラ式による精製方法


 ナチュラルやウォッシュトとは少し異なる方法で精製されるのがスマトラ式。スマトラとはインドネシアにある珈琲豆の有名な産地の1つであり、スマトラ産珈琲豆のマンデリンなどはこのスマトラ式という精製方法によって加工されている。

 収穫した実を果肉除去機で果肉を取り除き乾燥させる。ここまではハニープロセスと同じ、スマトラ式ではここで完全に乾燥させずに、半乾きの状態で脱穀をする。そして脱穀した後に再度乾燥させるという方法をとる。もともとインドネシアは雨季が多く乾燥させる期間を他のエリアよりも短縮させる必要があるためにこの方法がとられたのだが、それがスマトラ式の独特な味わいにつながっている。

 乾燥前の生豆は非常に柔らかいため、生豆にしてからの乾燥中に形がいびつになることがある。︎マンデリンの生豆が濃い緑色であったり、変わった形のものが多いのはこのため。

 

5.アナエロビコ(アナエロビック・ファーメンション)


 アナエロビコはかなり特殊な珈琲豆の精製方法で、ハニープロセスにおけるミューシレージ残存率100%に更に他の珈琲豆のミューシレージを浸けて、ミューシレージまみれにするという精製方法。他の珈琲豆のミューシレージに浸けることで嫌気性発酵をさせることができ、複雑で独特な味わいを実現させることができる。

 

 

追記


 精製方法を少し変えるだけで珈琲の味は変化する。今後更に珈琲豆の味に多様性をもたらすために様々な精製方法が発明されるのではないだろうか。紅茶では茶葉に香料を加えたブレンドが当たり前に存在している。珈琲も精製過程でフレーバーを加えたりすることで独自性を出すところが出てきてもおかしくない。


 カスカラと呼ばれる珈琲の果肉や皮を乾燥させた部分を、お茶のようにお湯や水出しで飲むコーヒーティーというものがあるらしい。


 資料を書いた多くの人は現地を訪れ、実際の環境、精製方法を自分の目で確認している。短絡的ではあるが珈琲農園を見に行きたいと思ってしまう。


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1 Comment


Yukihiro Nakamura
Yukihiro Nakamura
Jun 14, 2019

収穫年度による分類と良し悪し


分類

 生豆は収穫された年度によって以下のように分類されることがある。生豆の収穫年度は毎年10月1日を初日として計算される。

  • ニュークロップ:その年度に収穫され出荷された新しいコーヒー豆。特に10月に新しい収穫年度になってから呼ばれることが多い。

  • カレントクロップ:最新の収穫年度に得られたコーヒー豆。ニュークロップと同じものを指す場合もあるが10月から時期が経過した場合にこう呼ぶ場合が多い。

  • パーストクロップ:前年度に収穫されたコーヒー豆。

  • オールドクロップ:広義にはそれ以前に収穫されたコーヒー豆を指す。ただし狭義にはパーチメントコーヒーの状態で数年保管していたものに対する銘柄として扱われる。なおこの狭義のオールドクロップに相当するコーヒー豆は現在ではほとんど入手不可能と言われる。

  • オールドビーンズ:狭義のオールドクロップとの混同を避けるため、広義のオールドクロップに相当する言葉として作られたもの。ふるまめ。


良し悪し

 新しい方が新鮮で良さそうに思っていたが、あながちそうとばかりは言えないようだ。

  • 生豆は新しいほど緑色が強く、時間が経過するにつれて黄褐色に変化していく。ただしコーヒー豆の精製方法によっても色調が異なるため、色だけから判別することは出来ない。また時間が経過することにより、生豆の含水量が徐々に低下し、ロット内でのばらつきが少なくなると言われる。このため、古い生豆の方が焙煎のときに失敗することが少ないと言われている。

  • 香味についても、新しい生豆と古い生豆では異なると言われている。一般に、新しい生豆は良くも悪くも豆の個性がはっきりとしていて香りにも優れていると言われ、古い生豆は個性に欠けるが味に落ち着きがあると表現されることが多い。どちらを嗜好するかは人それぞれであり、一概にどちらかが優れていると結論付けることは出来ない。


(Wikipediaより)


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