2021/9/1
COFFEE HUNTERSのパカマラ・クラテル
モンテカルロス農園のパカマラ・クラテルは、パーカスとマラゴジッペの良いところを受け継ぎ、黒糖のような香り、トロピカルフルーツの風味とジューシーな酸。爽やかな余韻が広がります。
豆について
PC:パカマラ・クラテル
生産国:エル サルバドル共和国
生産地:アワチャパン県アパネカ市
農 園:モンテ カルロス農園
農園主:カルロス バトレス
標 高:1300〜1500m
栽培種:アラビカ種パカマラ
プロセス:ウォッシュト
原料豆輸送:リーファーコンテナ
賞味期限:2022/06/15
フレーバー
強く感じられる:黒糖
微かに感じられる:パイナップル、ザクロ、バタークッキー
味わいの強さ 8/10
酸味 6/10
甘味 7/10
苦味 6/10
焙煎度 3/10
COFFEE HUNTERS STORYより
パカマラは、エル サルバドルで生まれた人工交配種です。エル サルバドル生まれの多収量でやや小ぶりのブルボンからの突然変異種パーカスと、ブラジルでティピカから生まれた高木でアラビカ種最大の実をつける突然変異種マラゴジッペを交配させ、それぞれの良いところを残したのがパカマラです。その品質の高さが評判となり、現在では多くの生産国で栽培されています。1970年代、エル サルバドル国立コーヒー研究所(ISIC)に留学し珈琲の勉強をしました。この研究所の遺伝子課が取り組んでいた品種改良の一つが、パカマラでした。新種の開発は、異なる二つの種を人工授精させ、その実から採った種を植え、ある程度育ったら選抜し再び種子を取り選抜を繰り返す非常に地道な作業です。そうして25年以上かかってパカマラが生まれました。当時学生だった僕は、研修でパーカスの雌しべにマラゴジッペの花粉を振りかける作業をしました。僕にとっては、思い入れのある栽培種です。モンテ カルロス農園があるアパネカは、エル サルバドルでも有名なコーヒー産地です。ここは、栽培環境に恵まれた地域ですが、唯一の問題が風。毎年10月頃になると北から強風が吹いてきます。そこで防風林のコパルチを、碁盤の目のように植えて栽培するのがこの地域の特徴です。モンテ カルロス農園のオーナー、カルロス バトレスは、エル サルバドルでも早くからパカマラを植えた生産者です。パカマラを知り尽くした男カルロスが、丹精込めて作ったパカマラは、その特徴であるフルボディをしっかり出したコクのあるコーヒーです。
感想
開封すると甘い香りがする。豆はマラゴジッペに似て大きくふっくらとしている。豆を挽くときも、ドリップするときも甘めの香りだ。一口飲むとフルーティーな酸味の中に甘みがある。知って飲むからだろう、マラゴジッペとパーカス両方の風合いがある。どれが一番とは決められない美味しさだ。
マラゴジッペとパーカスを掛け合わせて誕生したからそんな名前がついたことを後で知るのだが、パカマラとはなんともお茶目な名前だと思ったものだった。おうちカフェをスタートした頃、まだ珈琲の味の違いもわからないし、自分で焙煎したこともない状況で、なんとなくまの抜けた名前と、最近のトレンドであるという案内に乗せられて、初めて自家焙煎に挑戦した記念すべき珈琲豆がニカラグア産のパカマラだった。自分で焙煎したコーヒーが飲めることに舞い上がってしまって、味はよくわからなかった。今思うと浅煎り気味に焙煎したパカマラは、苦味の少ないすっきりとした爽やかなコーヒーだった。でも当時はまだ珈琲の酸味が分からず、パカマラはこんなものかと、その他の珈琲ばかりを飲んだ。ようやく一通り試してある程度納得した所で、2度目の出会いはサンセバスティアン農園のパカマラでMiCafetoのPremier Cru Cafe だった。今度はいきなり高級な珈琲で価格が脳裏をよぎりよさがわからなかった。COFFEE HUNTERSのパカラマが3度目の出会いだ。今回はマラゴジッペとパーカスを味わってのパカマラで、順序立てて飲むことでそれぞれの良さと微妙な違いを味わうことができた。ようやくパカマラのよさも少しわかった。そしてまたしてもウロボロス、ぐるっと回って振り出しに戻ったような気がする。
追記
「コーヒーハンター」では種に関する記述が随所に見られる。後学のため覚えとしてここに抜粋する。
1915年ブラジルのミナスジェラス州の農園で、矮性で葉が大きく厚く、節間の短い多収量の変わったコーヒーの木が見つかった。後にこれがブルボン・ロンドからの突然変異種だと確認され、カトゥーラと名付けられた。ブルボン・ロンドからの同様な矮性の突然変異種はエルサルバドルでも見つかり、パーカスと名付けられ、コスタリカではビジャ・サルチ、ガテマラではパチェと名前がついている。これらの品種は全く同じではなく、それぞれに特徴があり、同じ矮性突然変異でもその地の土壌や環境によって変化に富んでいる。また、ムンドノボはブラジルで確認された自然交配種で、ブルボン・ロンドとティピカが自然に交配してできた栽培種である。P148
種とさび病
ティモール・アラビカは、アラビカ種との戻し交配の繰り返しによって、アラビカの血をより多く引き継ぐアラビカタイプだが、サビ病への対抗遺伝子をカネフィラ種から受け継いでいる不思議な木だ。そしてこれと、ブラジルで生まれたブルボン・ロンドからの突然変異種で高収量のカトゥーラと掛け合わせて、カティモールが作られた。栽培種のコロンビアやカスティージョ、コスタリカ95などは全てカティモールで、それぞれの国で交配させたカティモールに独自の名前をつけたものだ。交配に使用するカティモール・アラビカは、ポルトガルのリスボン郊外オエイラスにあるCIFC(コーヒーさび病中央研究所)で、さび病のタイプ別に対抗性のある純正種が栽培されていて、生産国はこの研究所から自国のさび病に合わせて苗を入手している。P152
今回の川島良彰 著 「コーヒーハンター幻のブルボン・ポワントゥ復活とマラゴジッペとパーカスとパカマラのコーヒー3本セット」は、今まで調べてきたことのまとめのような出会いだった。振り返ると、必要な時にこれだよという豆に出会えてきたようで不思議な気がする。「求めよさらば与えられん」。人生もそうであったなあと独り言ちる。
価格の変化
珈琲豆販売店から「さて、昨今の報道でもありますように、ブラジルの降霜の影響で
相場が急騰しており、現在の価格での商品のご提供が厳しい状況となっております。つきましては、誠に心苦しく存じますが、2021年9月1日よりコーヒー豆の販売価格を改定させていただくこととなりました。」と連絡があった。
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