2021/6/21
国産の珈琲豆を手に入れた。Makuakeに登場した福岡県産「杏里ファーム・椛島珈琲園」の生豆100gとカスカラ32g。
40gを電動焙煎機で中煎りに焙煎。早く味見をしたい。
豆について
生産国:日本
生産地:福岡県
農 園:杏里ファーム
標 高:3m
栽培方法:温室ハウス内鉢植え栽培
栽培種:アラビカ種
プロセス:ナチュラル
地図で杏里ファームの標高を調べると3mだった。今まで出会った中で最も標高の低い土地で栽培された珈琲だ。そして、今まで手に入れた中で最も高額の珈琲でもある。
20gずつ小分けにされた生豆とカスカラが入っていて、説明などは一切ない。「椛島」と書いて「かばしま」と読むらしい。
特徴
杏里ファームは福岡の農園である。ハワイのコナコーヒー農園で働いた経験を生かし、生育不良木の見極や対処を行うことで、日本に合うようにアレンジした温室ハウスでの鉢植え栽培をしている。珈琲栽培は年間平均気温が20度ほどで、雨季と乾季があり、日差しが強すぎず、水はけの良い土壌が適している。四季がある日本では冬の寒さ、真夏の強い日差しを和らげる必要がある。寒さ対策は温室ハウスの暖房で回避し、夏場は遮光カーテンで日差しを和らげ生育環境を整えている。栽培本数も一本一本徹底して管理できる本数にとどめ質を高めている。海外ではコーヒーベリーボーラー(CBB)通称「ブロッカ」という害虫からコーヒーチェリーを守るため農薬が使用され、輸送中も生豆の劣化を防ぐため、ポストハーベスト農薬(防虫剤・防カビ剤)を使用している。ファームでは、化学肥料や、害虫防除の農薬を最小限に抑え、体に優しい珈琲を栽培している。品種はアラビカ種で、必要なときに必要な水と肥料を与え、大きく引き締まった豆を育て、雑味が少なく、フルーティーで苦味と酸味が程よいコクのある味に仕上げている。精製は豆を水に一晩浸けた後、4〜5日ほど天日干し乾燥させ脱穀する。果肉はカスカラに加工しカスカラティーにしている。カスカラは焙煎機に入れて1分程火にかけて煎じると風味がより楽しめる。
Makuakeの杏里ファーム解説より抜粋
珈琲豆は粒揃いが良く、新鮮そうな青臭い香りがする。気のせいか、異国から来た生豆より素直な香りだ。薬品臭がしない。今まで農薬や輸送時の薬剤のことをさほど気にして来なかった。農薬は精製時に洗われることを期待できるが、輸送時の薬剤は生豆に付着したまま届いているだろう。手動焙煎の時は豆を洗っていたが、電動焙煎機は豆を洗わないように指定されていたことから最近はどの豆も洗わずに焙煎している。結局薬剤に気づかないまま味わっていることになる。MiCafetoは空輸かリーファーコンテナ(温度管理が出来るコンテナ)を使用していることから輸送時の薬剤使用にも気を使っているだろうと思う。しかし大抵の豆は輸送にどれほど気を遣っているだろう、そもそも情報がない。インド・モンスーンなどは輸送時に湿気を含んだモンスーンに晒されて独特の味が出るなどと言っているぐらいだから、長期間船に積まれて輸送されるわけで、防虫剤・防カビ剤を当然のように使っていそうな気がする。薬剤はありがたくないが、現実は精製時や輸送時に付く独特な物質や匂いを風味に感じていることになる。いいことも悪いこともひっくるめて味になっている。だからこそ「悪いものは使っていませんよ」という生産者の声はありがたい。
結果
コーヒー
電動焙煎機による自家焙煎の中煎り、中挽き、焙煎2日目。
豆を挽くと、少し香りが違う。苦味の香りが少ないという感じか。
コーノ式で飲む。
蒸らしの膨らみはとてもよく膨らむ。
一口飲むと甘味と酸味が口中に広がる。
喉越しスッキリ、少し麦焦がしの風味がある。
予想以上に美味しい。
低い標高で育った国産の珈琲豆は、味に深みが出ず、ともすれば紅茶のような珈琲になってしまう。そんなイメージを抱いていたが間違いであった。
温室できめ細かく環境管理されているのだろう。甘味、酸味、苦味のバランスがとれた美味しい仕上がりだった。
ティーポットで頂く
カスカラ10gにお湯200ccを入れ4分待つ
一口飲むと甘酸っぱい
甘味が際立ち苦味はほとんど感じない
カスカラはコーヒーチェリーの果肉と果皮を乾燥させたもので、甘酸っぱい香りがする。まだ乾き切っていないように見える。
カスカラティーは3分で淹れる予定だったが、あまりに色が出ないので4分お湯に浸した。見た目は番茶のようだ。
以前に飲んだボリビア産のカスカラと比べると、色は出ないがもっと甘い。薬品臭もなくさっぱりしていてとても美味しく、そしてフルーティーだ。
左:ボリビア産カスカラ/右:国産カスカラ
追記
明治11年(1878年)東京農業大学の創始者榎本武揚氏が、ジャワ島の苗を小笠原諸島で試験栽培したのが国産珈琲栽培の始まりらしい。しかし、現金価値の高いサトウキビや南瓜の栽培が重視され、珈琲の木は放置され野生化してしまった。戦後に再開され、沖縄、小笠原、徳之島・沖永良部と栽培地も広まったが、いずれも流通量が少なく安定供給が難しい。量販店で苗を買うことができるし、喫茶店で実をつけた珈琲の木を見ることもできるのに、国産の珈琲を飲む機会には出会わない。そもそも日本の気候が珈琲を栽培するの適していないのだから仕方ない。2年前の2019年6月に手に入れた我が家の珈琲の木も枯れずに育っているが実をつけるには至っていない。
国内の栽培状況
屋久島で珈琲栽培に成功したというニュースがあった。
本州でも耐寒性のある珈琲の品種をハウス栽培して収穫している例がある。例えば雪深い北陸の富山県では、県の植物園で栽培した珈琲を試飲できるイベントなどが開催されている。
沖縄珈琲生産組合があり、沖縄の農家からは年間で200kgほど収穫されている。小笠原の場合は野瀬農園という有名な珈琲農園が年間200kgほど収穫に成功している。
熊本阿蘇の阿蘇中央高校生が珈琲栽培に取り組み収穫焙煎まで実施している。熊本地震で被害を受けたが、仮設住宅の方に試飲してもらったり、復興の地域興しを担おうと頑張っている。
長崎県大村市に日本初の観光珈琲園「長崎スコー珈琲パーク」がある。所在地が「長崎県大村市寿古町(すこまち)」なので「寿古珈琲」と名付けている。温帯気候区における収穫を目的とした本格的珈琲の温室栽培で、試験栽培から数えて40年以上という年月を経て、約300坪という小規模ながら、年間70kg~100kg程度の収穫が見込まれる程になっている。
中井貴一のサラメシで「沖縄の珈琲農園で奮闘中の父と息子を支える、母手作りのまかないランチ」が2021/05/09放送された。そこでは珈琲の風味が薄いと話していた。
こう言ったニュースを見て、通販の時代だし、いつでも手に入るだろうぐらいに思っていたが、いざ手に入れようとするとなかなか機会に恵まれなかった。探し始めてかれこれ2年ようやく今回飲む機会を得たのである。想像以上に美味しい珈琲を日本で栽培していた。もっと簡単に手に入るといいのにと思いつつ。とにかく日本で育てられた珈琲を飲むことができてとても嬉しい。
台湾咖啡
日本統治時代の台湾において、国策で咖啡栽培が始まり、台湾で作られた咖啡を日本で国産と言いっていた時代があった。1933年(昭和8年)大規模なサビ病が発生し咖啡の木は伐採されてしまったが、栽培は続けられ今や知る人ぞ知る咖啡の生産地となっている。台湾の主要咖啡農園は西側(台湾海峡)に多く東側(太平洋)が少ない。総生産量は1000t前後。高温多湿な環境下で育った台湾咖啡は苦味や酸味が少なく、アロマのような芳醇な香りとフルーティーな甘味が口の中に残るのが特徴だという。 世界的高評価を受けているハワイのコナ咖啡に並び称され、2012年、USA today「世界10大咖啡都市」に Taiwan Coffeeが選ばれるなど咖啡文化、咖啡生産ともに注目されている。ちなみにその他の咖啡都市はウィーン、シアトル、ハバナ、メルボルン、リスボン、ポートランド、オスロ、サンパウロ、バンクーバー。いつか台湾珈琲を飲んでみたい。
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