2021年3月2日、HARIOが「ダブルステンレスドリッパー・粕谷モデル」を発表した。ネルドリップの奥深い味わいと職人が生み出すような丁寧な時間をより手軽にたのしめるドリッパーだという。確かにネルドリップは美味しいが手入れのめんどくささから遠ざかっていたので、手軽にネルの味わいが楽しめるならとチャレンジした。先に結論を書くと「あくまでも個人の感想だが、難しいドリッパー」だと思う。
製品情報
品番:KDD-02-HSV
カラー:ヘアラインシルバー
製品サイズ:幅 120 × 奥行 100 × 高 100mm
容量:1~4杯用
材質:本体・スタンド/ステンレス
特徴
粕谷モデル:コーヒー抽出の世界大会「World Brewers Cup」で、アジア人初の世界チャンピオンに輝いた粕谷哲氏がプロデュースしたモデル。
手入れが簡単: 手入れや管理が面倒だったネルを、ステンレス素材に置き換えることで手軽にネルフィルターと同じような味わいが出せる。
ネルフィルターの味わい: スタンドがあるためサーバーに置いても、手に持ってもドリップすることができる。側面のダブルメッシュはコーヒーオイル をしっかり抽出しながらも微粉の出にくい構造。新開発の底面メッシュによりお湯抜けも良くなり、 マイルドでクリアな味わいをたのしむことができる。
テストドリップ
まず1人分を淹れてみたが難しい。
1杯分10gの豆量ではドリッパー側面のダブルメッシュに届かない
1投目、注ぎ口から豆面まで高さがあり注湯の勢いでそっと蒸らすことが難しい
2投目、湯量が増えるとようやくダブルメッシュが効いてくる
中挽き(カリタ・ネクストGの8/15段階)だと目が詰まりドリップ速度が遅い
時間がかかった分エグ味を感じる
時間がかかったせいで珈琲が冷める
結果的に珈琲が美味しくない
取扱説明書には「中挽き〜粗挽き、1杯分12gを目安に必要な杯数分のコーヒー粉を投入する」よう書かれている。挽き具合は中挽き〜粗挽きとあるため、中挽きも大丈夫に見えるし、1杯分で淹れることも想定しているようだが、中挽き1杯分のドリップは淹れにくい。粗挽き2杯分以上で淹れる方が淹れやすいだろう。
対策
粗挽き寄りの中挽き カリタ・ネクストGの10/15〜12/15段階
2杯分20gの豆量でドリップを行う
安定した美味しい珈琲を淹れるには、ネルドリップ同様の技術や慣れが必要だ。
実験について
ダブルステンレスドリッパー、ネルドリッパー、ペーパードリッパー、KINTO ステンレスフィルターを飲み比べて実験しようと計画したが。どうにもダブルステンレスドリッパーで美味しい珈琲を淹れられないため、実験をやめた。
現段階の結論
ダブルステンレスドリッパーはネルより手入れがしやすい。しかしネル同様のドリップ技術が必要となるため、ある程度慣れれば美味しい珈琲を淹れられるが、慣れないといまいちの珈琲になってしまう。微粉がそこそこ出ることも気になる。
補足
ダブルステンレスドリッパーとKINTO ステンレスフィルターはいずれもステンレスメッシュのドリッパーだ。ダブルステンレスドリッパーの方がメッシュが細かい事が目視でわかる。さらに二重構造なので微粉を通しにくそうだが、お湯抜けをよくするため底面メッシュの穴が大きめになっており結局そこから微粉が出てしまう。KINTO ステンレスフィルターもペーパードリップの要領で珈琲を淹れられコーヒーオイルを楽しめる。しかし思いの外に微粉が多く結局出番が少ない。微粉は篩にかけることで取り除くことができるが、珈琲豆が2/3ほどに減ってしまうため、多めに挽く必要があるし、余った微粉は保存しておいても風味がなくなってしまうだけなので処分することになり勿体無い。金属フィルターは今の所どうしても微粉を避けることができないようだ。ペーパードリップや、ネルドリップは少々の微粉を気にせず利用できる点で好ましい。
HARIO ダブルステンレスドリッパー
HARIO ろか布ネルは微粉が出ることはないが、一杯淹れるごとの洗浄に手間がかかることや、ネルを水につけて冷蔵保存するなど手入れが面倒なため使用頻度が少ない。ダブルステンレスドリッパーはネルほど面倒ではないが、二重のステンレスに油分が付着するためペーパーフィルターの手軽さには勝てない。またメッシュに微粉が入った場合は歯ブラシなどで洗浄するよう取扱説明書に記載されており、手放しで面倒ではないとは言えない。
コーヒーオイルを楽しみむ場合フレンチプレスやネルドリップが有効だ。前者は手軽だが雑味が出ることがあり、後者は味をコントロールできるが管理がめんどくさい。ダブルステンレスドリッパーは第3の方法として期待したのだが、出番は多くなさそうだ。
追記
今年に入ってHARIOは面白い道具を立て続けに発表している。蒸らしを必要としないペーパードリッパーMUGEN や今回試したダブルステンレスドリッパー。さらにミルク出しコーヒーポット(道具を購入しなくても手持ちのポッド、例えばフィルターインボトル等で試せそう)なんていうのもある。
MUGENは誰でも美味しい珈琲を簡単に淹れることができすばらしい。対照的にダブルステンレスドリッパーは経験が必要となる製品だ。ミルク出し珈琲という提案も面白く、HARIOはなかなか攻めていると思う。惜しむらくはデザインに不満がある。MUGEN はV60のきらりとした美しさがなくなってしまった。ダブルステンレスドリッパーは持ち手がもう少し長い方が扱いやすいし、スタンドや持ち手が薄く感じられる。厚みがあった方が手触りもよく、高級感が増しただろう。
左からネルドリップ/ダブルステンレスドリッパー/ステンレスフィルター/MUGEN
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