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執筆者の写真Yukihiro Nakamura

メッシュ その3

更新日:2020年2月15日


 カリタ・ネクストGは15段階のメッシュを使い分けることができるが、実際に使用しているのは、両端と真ん中の3メッシュのみである。ミルの性能を知った上で、ベストなメッシュを使うための実験を行うことにした。

 また、エスプレッソは極細挽きが適しているが、細挽きで代用している。エスプレッソマシン導入時に極細挽きと細挽きを飲み比べてあまり違いを感じなかったからだが、再度確認することにした。

 

実験方法

  1. ミルの15段階を、細挽きゾーン、中挽きゾーン、粗挽きゾーンの3タイプに分ける。

  2. 細挽きゾーンに乳鉢で挽いた極細挽きメッシュ0を追加

  3. 粗挽きゾーンに豆を引かないメッシュ16を追加

  4. それぞれに適した抽出法でメッシュを1段づつ変化させ比較する。

細挽きゾーン:メッシュ0〜5

 条件:珈琲豆7g深煎り/エスプレッソ

 検査項目:粒径/抽出時間/抽出量/テイスティング


中挽きゾーン:メッシュ6〜10

 条件:珈琲豆10g中煎り/90℃のお湯100cc/コーノ式ドリップ

 検査項目:粒径/抽出時間/蒸らし具合/テイスティング


粗挽きゾーン:メッシュ11〜16

 条件:珈琲豆7g深煎り/水100cc/12時間浸したコールドブリュー

 検査項目:粒径/色付き具合/テイスティング

 

結果


実験に使用した珈琲豆:キリマンジャロAA+VSP

状態の項目は、EPの時抽出量、DPの時蒸らし具合、CBの時色付き具合とした。

粒径はメッシュの代表的なサイズの長辺とした。

CB:コールドブリュー/DP:ドリップ/EP:エスプレッソ

メッシュと粒径

細挽きゾーン:0〜5

  1. メッシュが粗くなるに従い挽き豆の体積が微妙に増える。

  2. メッシュが粗くなるに従いタンピングを強める必要がある。

  3. メッシュが粗くなるに従い抽出時間が短くなる。

  4. メッシュが粗くなるに従い若干クレマが少なくなる。

  5. メッシュが変わっても抽出液の見かけはほとんど変わらない。

  6. メッシュが粗くなるに従い明らかに味が薄くなる。

  7. メッシュが粗くなるに従い苦味が薄れ酸味が出てくる。

  8. メッシュ0とメッシュ1の差は微妙。

  9. メッシュ2以降はエスプレッソに向かない。

  10. エスプレッソに合うベストはやっぱりメッシュ0。

 資料によると珈琲豆7g/9気圧/90℃でエスプレッソを抽出した場合、20秒〜30秒で20cc〜30ccの抽出が適切だという。長くなると出がらし状態になり、短いと旨みが出し切れないうちに終わってしまうことになる。豆の状態によって抽出時間が変わるため、抽出時間が20秒より早い場合はメッシュを細かくし、30秒を超えるならメッシュを粗くして調整する。(旭屋出版/横山千尋著/バリスタ・バールマン教本p96−97参考)

 デロンギEC860Mは9気圧(仕様)/80℃(実測値)でメッシュ0の抽出が33秒31cc。メッシュ5の抽出が27秒30ccであった。マシンが異なるため一概には言えないし温度が低いことも気になるが、この結果からメッシュに着目するとメッシュ0よりメッシュ5の方が条件に合っている。しかし味を比較すると明らかに0の味が一番で5はNGだった。0.1mm粒径が変わるだけで体積も変わりタンピングも変えなくてはならない、その結果は味にも大きく影響する。実験から言えることはメッシュ0がベストで、ぎりぎりメッシュ1もあり。

 

中挽きゾーン:6〜10

  1. 粗くなるほど蒸らしのふくらみが少なくなる。

  2. 細かくすると滴下速度が落ちる。

  3. ドリップに合うメッシュ:8かな、どれもあまり違わない・・・

 ドリップはメッシュの差が出るだろうと予想していたが、差はほとんど感じられなかった。メッシュが細かくなるほど滴下速度は落ちるものの味の違いは極めて微妙。つまりメッシュ6でも10でも、もちろん8でも、いつも飲んでいる美味しい珈琲を楽しめる。

 

粗挽きゾーン:11〜16

  1. 浸す時間が長いほど色の付き具合や味の差は微小となる。

  2. 豆を挽かないと珈琲エキスは出てこない。

  3. コールドブリューに合うメッシュ:16以外

入れたて

12時間後

 12時間経った段階では、メッシュが細かい方が酸味、コクなどが微妙に濃く、バランスがよい。とりあえず色の付き具合をメッシュ11を10として12〜16に対する評価を行なった。さらに時間をおけば差はほとんど感じなくなる。豆のまま冷水にいくら浸しても何も溶け出す気配はなく、エキスを溶け出させるためには豆を砕く必要がある。メッシュを細かくすれば短時間で抽出できるが、12時間以上水につけるなら一番粗いメッシュで十分にコールドブリューを作ることができる。フレンチプレスやパーコレーターはメッシュで味が変わるかもしれないが、その実験はまたいつか。

 

結論


 エスプレッソはメッシュによる違いが大きく出るためメッシュ0か、ちょっと譲ってメッシュ1を使うべき。ドリップやコールドブリューはメッシュよる違いはあまり感じない。細挽きはメッシュ1、中挽きはメッシュ8、粗挽きはメッシュ15で良いだろう。

 

抽出方法・メッシュ・焙煎のまとめ

 今まで試した抽出方法のメッシュと焙煎の関係を整理した。ドリップは中挽きが良い。粗挽きだと抽出が薄く、細挽きだとフィルターが目詰まりを起こす。エスプレッソは短時間で旨みを抽出するのに極細挽きが適している。ドリップとエスプレッソは同じ透過法でも、抽出のアプローチが異なるからメッシュも異なる。その点、浸漬法はお湯または水の中にしばらく浸すため、メッシュが異なっていてもそれなりに抽出することができる。乱暴な言い方をすると、浸す時間が長ければ粗挽き、短ければ細挽きが向いている。


ミルの手入れ

 実験を終えミルを掃除した。微粉や、粉砕されずに歯の間に挟まった豆が溜まっていた。これらが残っていると豆の味が混ざったり、酸化して臭いが出る。定期的な掃除は美味しく珈琲を飲むために不可欠だが、ついさぼってしまいがちだ。

 カリタ・ネクストGの刃はセラミック製のフラットカッターである。金属製に比べ静電気が発生しにくく、熱伝導性も低いため、豆の付着やフレーバーが失われにくい。硬度も高く耐久性もあるが、固い生豆などで刃こぼれする場合があるので要注意だ。浅煎りのつもりで焙煎した豆は煎りが浅すぎて生に近かく、グラインドすると異様にゴリゴリという音がして刃こぼれするのではないかと心配したことがある。フラットカッターはメッシュが均等になりやすく、摩擦熱が発生しにくい。つまみを回すことで向かい合ったカッターの隙間を変え目的のメッシュを得ている。実際に15段階の粒径を測った結果、概ね線形に推移しており、均等なメッシュが作れていた。


微粉について


 どんなミルを用いても豆を挽くと微粉が発生する。ペーパーやネルはドリップ実験で確認したように微粉を気にする必要はなかった。あくまでも個人的な見解だが、むしろ微粉がある方がコクが出る。しかし、金属フィルターの場合は違う。エスプレッソの金属フィルターは目視できないくらい小さな穴なので問題ないが、マキネッタやパーコレーター、金属フィルターのドリッパー、フレンチプレスなどはフィルターの穴が微粉より大い場合、珈琲が粉っぽくなる。粉っぽさを避けるためにはふるいにかけて微粉を取り除くといいのだが、微粉を取り除くと豆の量が2割ほど減り抽出が薄くなる、その分を考慮して豆を多めに挽くとしても、取り除いた微粉は使い道がなく捨てるしかない。

 

追記


 珈琲を発見した人類は、細かく砕きお湯に浸して飲むと美味しいことを1000年も前に気づいている。どうして気づけたのだろう。豆を挽かずに水出しを試したところ、少しも珈琲エキスを取り出せないことを体験した。昔の人も似たようなことをしただろうか。だとすれば砕いてみようと思ったかもしれない。それとも大方の穀類を砕いて食べたり飲んだりしていたかもしれないから、その延長線上で珈琲も砕いたかもしれない。そんなとりとめもないことを思いながら実験をした。パターンが多いため豆も沢山必要となり、テスト用の豆を発注した。17杯のテイスティングは1日で試飲できる量を超えている。計画に1日、発注から納品まで5日、焙煎に1日、実験に2日、まとめに1日と大掛かりになったが、久しぶりに充実した日々だった。


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