2022/8/14
COFFEE HUNTERS の「グリーンウェル農園 ハワイ コナ」。意外なことにブレンドはあったもののシングルのハワイコナがMiCafetoから登場するのは初めて。なぜ意外かといえば、川島さんはUCC時代ブルーマウンテン、ハワイコナ、マンデリンの珈琲園を手がけている。だからこの3種はとっくにCOFFEE HUNTERSで出ていてもおかしくないと思うのだ。しかし不思議なことにハワイコナとマンデリンはなかったのである。不思議といえばインドネシア産がラインナップに見当たらない。マンデリンもそうだがCOFFEE HUNTERSのトラジャを飲んでみたいと思うのだが、大人の事情があるのだろう。大人の事情という点では彼が苦労して探し出し、復活を果たしたブルボン・ポワントゥこそ飲んでみたい。と、いろんなことを思う珈琲であるが、ようやくCOFFEE HUNTERSのコナを楽しむ事ができる。
コナの大地から湧き立つエネルギーを身に受け止めて、天に向かって伸び行く枝葉と赤く輝く芳醇なコーヒーチェリー。ティピカ種が持つ様々な表情は火山灰質が優勢なテロワールにおいて、キレのある酸と香り豊かで立体的な甘味へと昇華される。アフターに残る白花豆のフレーバーに心から癒されるような味わい。MiCafetoより
HK:ハワイ・コナ
生産国:アメリカ合衆国
生産地:ハワイ州 ハワイ島 コナ
農 園:グリーンウェル
農園主:トム グリーンウェル
標 高:570m
栽培種:アラビカ種ティピカ
プロセス:ウォッシュト
原料豆輸送:航空貨物
賞味期限:2023/8/3
強く感じられる:白花豆、和三盆、グリーンティー
微かに感じられる:黒糖、日向夏、ヨモギ、ニッキ
味わいの強さ:9/10
酸味:6/10
苦味:5/10
甘味:8/10
焙煎度:4/10
COFFEE HUNTERS STORYより
ハワイ島南コナのグリーンウェル農園は、マウナロア山(標高4169メートル)の西側斜面に位置します。この地域は、日中は常夏の太陽と海からの暖かい風で畑の温度が上がり、夜になるとコナエコーと呼ばれるマウナロアからの冷たい吹き下ろしで温度が下がります。この寒暖差によって、コーヒーチェリーはゆっくり成長し密度の高いずっしり重い豆を作ってくれます。この農園は、1850年ヘンリー ニコラス グリーンウェルがイギリスからコナに移住し開園した歴史ある農園です。代々グリーンウェル家で受け継がれ、現当主4代目のトミーになってからは、コーヒー栽培だけでなく、精選から輸出までできる規模になりました。彼は非常に熱心な生産者で、品質と生産性向上のために様々な試験を繰り返しています。そして息子のベンも、跡取りとして農園で修行中です。ハワイの青い海を見下ろすティピカ100パーセントの畑から、完熟豆だけを収穫してもらいました。
感想
開封するとほんのり香ばしい。
中挽きで挽くがあまり香りが立たない。
MUGENを使用して1人分10gでドリップ。
豆が膨らみ美味しそう。
淹れたての香りも控えめな感じ。
一口目に酸味がやってきた。
喉越しに甘みが残る。
飲み終わった後はスッキリしている。
苦味は少なく透明感がある。
冷めても美味しい。
珈琲豆がパカマラみたいに大きい。香りは控えめだが、味はしっかりしている。浅煎りらしく、酸味が程よく甘みを引き立て、苦味は引っ込んでいる。飲み終えた後の心地よい感じが白花豆のフレーバということなのだろうか。白花豆をよく知らないので、そこのところはよくわからないが、とても美味しい珈琲だ。COFFEE HUNTERSの発売と同時に、Premier Cru Caféの限定ボトル「グリーンウェル農園 ハワイ コナ」も発売されている。
栽培している標高が気になった。マウナ・ロアは標高4,169mと富士山より高い山なのだ。だから十分高いところで栽培できそうだが、コナを栽培している標高は570mである。一般的に良質なアラビカ種の栽培が標高1500mを超えているのに比べてかなり低い。まるでロブスタ種が栽培される標高みたいだ。どうしてだろうと地図を見ると、その理由がわかる気がする。農園はマウナ・ロアの麓で海岸に近く、農園より山側は緑がなくなっている。マウナ・ロアは世界最大の楯状火山で、溶岩の粘度が低く流動的なため、斜面がなだらかで盾を伏せたような形をした活火山だ。 激しい噴火は稀だがハワイ型噴火が起こり今でも溶岩が流出している。きっと農園より標高が高い土地は植物が育たないのだ。また地図を見ると、東海岸の方が圧倒的に緑地面積が広いにも関わらず、山と海に挟まれた狭い地域で栽培が行われている。見れば見るほど西海岸のコナ周辺は特殊な地域に見える。きっとこの特殊な地域こそコナ栽培に適しているのだろう。
追記
ハワイ・コナは社会人になりたての頃友人に教えてもらった珈琲だ。友人が手に入れたコナはハワイの親戚から来たものだった。封を開けると甘い香りがした。異国のチョコレートのような匂いが第一印象となって刻み込まれ、コナ珈琲のイメージとなった。ところが自分でコナを焙煎したところ、記憶にある香りはそこになかった。焙煎のせいかなと思ったが、お店で飲んだ時も記憶にある香りと味はしなかった。コナってこんなだったかと長い間違和感を持っていた。いくつかコナを飲む機会を得て、今はコナの本質は酸と甘みのハーモニーだと感じている。第一印象で受けた異国のチョコレートのような甘い香りはパッケージの匂いだったかもしれない。
第一印象が、その人の感覚、物の見方、印象をほぼ決めてしまう。でも本質は違がうかもしれない。その誤りは時と共に解けて真実に近づく機会がやって来る。例えば第一印象が悪かった人が、付き合ってみると好感の持てる人であったりする。ただ第一印象の呪縛が解けるには結構な時間がかかる。本来良い出会いになったかもしれないのに第一印象が悪かったために縁なく過ぎてしまうことだってある。でも人生というものは面白い物だと思う。だからこそ気になってしまうこともある。コナは私にとって本質と第一印象が異なってしまった珈琲だった。だからこそ記憶に残りいつまでもこだわってしまう珈琲となったのだ。
そんなコナ珈琲は日本人とも関わりが深い。
”今でこそハワイ コナと言えば世界的に有名な銘柄ですが、José. 川島 良彰が農園開発のためにハワイ島コナに赴任した1989年当時は、衰退の一途を辿っていました。 ハワイのコーヒーの栽培の歴史は古く、1820年代に遡ります。一時はハワイのどの島でも盛んに栽培されたコーヒーでしたが、その後サトウキビがそれに取って変わります。そんな中でも平地が少なく溶岩が多いコナの地域ではそのままコーヒー栽培が残りました。コナコーヒーの栽培を担ったのは、19世紀に入植した日本人移住者たち。その後世界的にコーヒーの需要が増え、一家総出で収穫や精選に携わり、コナの地域だけは学校もコーヒーの収穫に合わせて学期が組まれる程の産業に成長します。その後コナコーヒーは歴史の渦の中で盛衰を繰り返します。1929年の世界大恐慌、第二次世界大戦によるアメリカ軍の消費、大戦後には世界的な需要の増加と、戦争から帰還した日系人の働きもあって最盛期の15万袋(1袋45kg)もの生産をむかえます。しかし、1959年にハワイがアメリカ合衆国50番目の州に制定されると、最低賃金も上昇。更にハワイのお土産としてマカダミアナッツが定番となると、手間がコーヒーほどかからないため畑もマカダミアに変わっていくなど、コナコーヒーは衰退の一途を辿り、José. 川島が初めてコナを訪れた1988年夏には生産量も最盛期の10分の1程度まで落ち込んでいるという状況でした。 その後1990年に入るとアメリカでも品質のよいコーヒーを飲む風潮が生まれ、再びコナコーヒーの需要が高まります。”MiCafetoからのメールより。
コナを飲める喫茶店は多くない。浜松には”Kona's Coffee Hawaiian pancake Cafe"というお店があるらしい。扉を開けた途端にハワイを感じさせてくれる「一番近いハワイの食卓」という店だ。もちろんコナを飲ませてくれる。いつかゆきたい。
追記の追記
さて、第一印象と本質が異なる面白さを感じながら。実は第一印象にこそ本質が潜んでいるのかもしれないと思う今日この頃。人は見たいところしか見ないくせに、第一印象では案外全体を捉えていたりする。
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