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執筆者の写真Yukihiro Nakamura

珈琲豆 その2

更新日:2020年2月15日


 珈琲の新たな品種が見つかることはまだあるかもしれない。パカラマ種ゲイシャ種やSL28などは最近登場した品種だ。今回はそんな珈琲豆の品種をベースに栽培が世界各地に拡大していった歴史を調べた。


 

珈琲の栽培地拡大の歴史

 

 エチオピアに自生していたアラビカ種。それが6~9世紀に飲料の原料としてイエメンに渡った。その後、イエメンから2つのルートで世界に広まる。

  • ティピカ種のルート:1699年にオランダの東インド会社によってインドネシアのジャワ島に運ばれ栽培された。その後、オランダのアムステルダムで栽培され、フランスに送られた。そこから1728年にフランスのパリ植物園にあった苗木がマルティーニ島へ運ばれ、そこから中南米諸国に広まった。

  • ブルボン種のルート:イエメンからフランス人によってブルボン島(現在はレユニオン島)へ持ちこまれたアラビカ種が突然変異を起こす。その後、イギリス領だった東アフリカ(ケニアやタンザニア)に移植され、中南米に広がった。

  1. 1616年 イエメン・モカからオランダへ

  2. 1658年 オランダがセイロン島で栽培開始

  3. 1670年 ババ・ブータンが苗木をインドへ持ち出す

  4. 1699年 インドからジャワ島に珈琲が入る

  5. 1714年 オランダからフランスへ苗木を献上

  6. 1718年 スリナム・オランダ領で栽培開始

  7. 1722年 ギアナ・フランス領で栽培開始後ブラジルへ

  8. 1728年 フランスからマルティニーク島へ苗木を運ぶ

  9. 1728年 マルティニーク島からジャマイカ・イギリス領へ

  10. 18世紀後半 コロンビアで栽培開始

  11. 1825年 ブラジルからハワイへ移植

  12. 1865年 ベトナムで栽培開始

  13. 1878年 小笠原で実験栽培開始

  14. 1931年 タンガニーカでSL-28品種改良で誕生

  15. 1953年 ゲイシャがコスタリカへ持ち込まれパナマへ

  16. 1958年 エルサルバドルでパカラマが誕生


 珈琲栽培の黎明期オランダが活躍していたことが印象的だ。そしてフランス、フレンチルートと言うのを聞いたことがある。2011年6月「コロンビアのコーヒー産地の文化的景観」がユネスコの世界遺産に登録された。かように珈琲栽培が盛んなコロンビアでの栽培開始時期がわからない。いくら調べてもはっきりしなかった。文化遺産ということでは2013年にユネスコの世界無形文化遺産に「トルココーヒーの文化と伝統」「日本の和食」が登録されている。

 

品種


被子植物門ー双子葉植物網ーアカネ目ーアカネ科ーコフィア属ーコフィア亜属

  • アラビカ種:酸味が特徴的で風味豊か。広く一般的に好まれる味わいを持つが、標高1000~2000mの熱帯高地で栽培されるため、栽培には大変な手間が掛かる。また、霜、乾燥、病害虫などにも弱いのが特徴で、栽培が難しい品種。モカ、キリマンジェロ、ブルーマウンテンなどなじみのコーヒーは多くがアラビカ種。

  • ティピカ種(原種):アラビカ種の中で最も古い品種。病気に非常に弱く、生産している場所も限られているので、流通量が少ない。味わいは上品で、さわやかな酸を感じることができる。

  • ブルボン種(原種):ブラジルではコーヒーの原型と言われている。ティピカ種よりも丈夫で収穫量も多いが、隔年収穫なので流通量は少ない。酸味と苦味のバランスが良く、コクも丸みがありやわらかい。

  • ゲイシャ種(原種):エチオピア原産。エチオピアのゲイシャという街付近で発見されたことからこのように名付けられた。改良されずに生き残っている希少種。パナマのエスメラダ農園のゲイシャ種がコンテストで一躍有名になった。生産量は極めて少なく、高級品として名を馳せている。果実の風味が強く、一度飲んだら忘れられないと多くの人から絶賛されている。スターバックスで高価格のコーヒーがこのゲイシャ種を使っていた。

  • スマトラ種(原種):インドネシアのマンデリンで発見された品種。コーヒー店によってはスマトラ種と分けずにティピカ種と記載していることもある。濃厚なコクと重量感、独特の苦味が特徴。

  • マラゴジッペ種(原種):ブラジルのバイア州マラゴジッペで発見されたティピカの突然変異種。樹そのものも果実も大きく、豆自体も大きい。収量は低い。

  • カトゥーラ種(混合種):ブラジルで発見されたブルボン種の突然変異。ブラジルのカトゥーラという街で発見されたことからこの名前になっている。ブルボン種よりも病気や直射日光に強く収穫量は多いが、隔年収穫はブルボン種と同じなので流通量としては少ない。豊かな酸味と強めの渋みが特徴。

  • ムンドボーノ種(混合種):ムンドボーノ種はブラジルのサンパウロで発見された。ブルボン種とスマトラ種の自然交配によって誕生したと見られている。ムンドボーノとはポルトガル語で「新世界」を意味し、ブラジルの多くの農家で栽培されている。ブルボン種と違って病気に強いため安定して収穫できる品種。マイルドな味わいだが、生産性を意識して栽培されているため、他のアラビカ種と比較して風味が劣ることもある。

  • ケント種(混合種):1920年インドのマイソールでケント氏が発見したことからケント種と呼ばれ、ティピカ種と他の品種との雑種と言われている。サビ病への耐性があり生産性が高い。ハードで酸味がまろやかなところからブルボンに近い香味がある。

  • カトゥアイ種(混合種):カトゥアイ種は、カトゥーラ種とムンドボーノ種を人工交配させて誕生した品種。病気や害虫に強く、標高が低くても栽培できるという、とにかく耐久性に優れている。味わいは軽めで飲みやすく、万人受けする。

  • パカマラ種(混合種):ブルボン種の突然変異のパカス種とマラゴジッペ種が組み合わせて作られた品種。とても大きな豆で、ゲイシャ種みたいな香水のような香りと独特な酸味が特徴。ただし生産量が少なく、とても希少な豆。

  • SL-28(混合種):タンガニーカでコーヒーの植生を観察していたスコット研究所の研究員が、ブルボン種の一種が乾燥耐性を持っている可能性に気づき、1931年にそのコーヒーの種子を研究所で栽培した結果、この種が乾燥耐性に加えて優れた風味特性も持つことが確認され、SL-28というコードがつけられた。ケニアやウガンダをはじめとするアフリカの国々、またラテンアメリカの一部でも栽培されている。ベリー系、特にブルーベリー、ラズベリー、ブラックベリーのように芳醇で濃厚な味わいが特徴の珈琲。

  • カネフィラ種:病気に強いのが特徴で、標高が低くても栽培することができ、アラビカ種に比べて栽培が容易と言われている。葉が大きく一度に実がたくさんつくため、1本の木からの生産量が多い。麦茶のような独特の香ばしい味わいと強い苦味が特徴。ストレート(ブレンドしない)で飲むことはほとんどなく、インスタントコーヒーや安価なブレンドコーヒーなどブレンドして飲まれることが多い。


 参考図書:珈琲の事典/伊藤博監修 成美堂出版 1996年


 

追記


 興味を持つと、調べて、試して、納得する。納得した答えを整理すると、スーッと体の中に染み通って自分のものになった気がする。整理が着くとようやく聞こえてくる言葉がある。今までなんども聞いたかもしれない言葉も、それまでは素通りしているのだ。整理をするというのは、全体像がなんとなくわかるということかもしれない。一つ一つが全体のどこに位置するかがわかると、空いているところが見えてくる。ある日、それが今まで聞いていた言葉だったりして、ああここに入るものだったんだと。パズルのピースがはまってゆく。

整理には不要なものを取り除く働きもある。今までごっちゃだったものが、整理されると、そのピースはどこにも入る余地がないことがわかることがある。正しい位置にきちんと置く整頓と似ているけれど違う。


 平成時代スペシャリティー珈琲が注目され、エルサルバドルで始まったパカラマ種が一世を風靡。パナマで始まったゲイシャ種が中米を中心に大爆発。次に人気が出そうな品種としてSL28が注目されている。


 珈琲豆は同じ品種でも栽培する土地で特徴が異なり、今までは生産地に関連する名称で呼ばれることが一般的だった。最近は品種が注目され、生産地が異なっていても、品種名が前面に出ている。ゲイシャ種がその筆頭だ。実際はどこで取れたかによって味が異なるはずだから、結果的には生産地で選ばれるのだろう。飲むのなら是非パナマ・エスメラダ農園のゲイシャを飲んでみたい。



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