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執筆者の写真Yukihiro Nakamura

焙煎度 その2

更新日:2020年2月15日


 手動の焙煎機で適当に焙煎しても美味しい。これは偶然なのか、焙煎機の性能が良いのか、ただ違いがわからないだけなのか。もう少し焙煎のことを探った。


 

焙煎すると珈琲豆はどう変化するのか


 珈琲、プリンのソース、おこげ、炒めた玉ねぎなど、加熱すると茶色くなり、香ばしさ美味しさが増す。これはメイラード反応とカルメラ化が起きているからである。メイラード反応はアミノ酸やタンパク質と、糖が結びついて、褐色物質であるメラノイジンや香味成分を生成することで、カルメラ化は糖が加熱によって水分を失ってゆく過程で、糖の構造が壊れたり、結合することで茶色で苦味を持つ物質を作り出すことである。

 生豆は青臭く、美味しそうではないが、焙煎すると、美味しそうな香りが立ち、風味や苦味が現れる。焙煎の要は、メイラード反応とカルメラ化をどこまで進め、その際いかに均一に加熱するかということだ。

 

焙煎の段階と豆の状態


蒸らしの段階

 生豆は11~13%ほどが水分で、加熱しても豆全体に熱が行き届かない。焙煎の最初は豆内に含まれる水分を飛ばす“蒸らし”と呼ばれる工程となる。低温でじっくり豆を熱することで徐々に乾燥させる。蒸らしが完了するまでは、おおよそ6分~8分ほどの時間を要し、痰緑黄色だった生豆は、茶色みを帯びる。


1ハゼの段階

 生豆を加熱していくと、内部の組織がだんだん硬くなってゆく。はじめのうちはやわらかくなった細胞の隙間から逃げていた水蒸気などのガスが硬化した組織の中に取り残され、加熱によって圧力が上昇し、豆が内圧に耐えられなくなったところで「パチン」と音を立てて爆ぜる。焙煎ではこのハゼが大きく2回起こり、それぞれを「1ハゼ」「2ハゼ」と呼ぶ。1ハゼは大きくはっきりとした音がする。この時点でかなり茶色く色付き、1ハゼの前後くらいから飲むことができる。


1ハゼと2ハゼの間

 1ハゼと2ハゼの間で豆のシワを伸ばし、豆の表面と芯の煎り加減を同じにする。間隔が短い場合は火力が強く、間隔が長い場合は火力が弱い。火力が強い場合は味が鋭く、きつい苦みが出る。火力が弱い場合は渋みやエグミが出る。ダンパーやカバーが無い手網みや手回し焙煎機は火力が弱いと渋み、エグミが強くなるため、強火で1ハゼと2ハゼの間隔を短かくすると、甘みや風味が出やすい。排気装置のある業務用焙煎機の場合は、熱効率が良く、シリンダーに入る豆の量も多いので豆同士熱くなり続けるため火力調整、ダンパー調整を行い、1ハゼと2ハゼの間隔をしっかり取って仕上げる。


2ハゼの段階

 2ハゼは、1ハゼに比べると音が小さく、耳を澄ましていないと聞き逃すこともある。1ハゼ後、豆の組織からさらに水分が抜け続け、硬化しきった豆の細胞が弱くなり、もろくなった部分がはがれるように爆ぜるのが2ハゼである。1ハゼのように高い内圧がかからないため、大きな音は鳴らない。この2ハゼと前後して、珈琲に含まれる成分が熱で変質したり増減するため、止めるタイミングによって味や香りが大きく変わる。2ハゼが進むにつれて、茶色かった豆はつやのある黒へと近付いてゆく。焙煎が進むと、突然煙が多くなる。これは、珈琲豆内部に含まれていた油が豆の表面に染み出してくるためで。密閉型の焙煎器は排気をしないと珈琲の香味にいぶしたような香りが加わる。すっきりさせたい場合は排気を行い、排気をコントロールして適度にいぶして特徴をつけることもある。

(Wikipediaより)

 

焙煎度について


浅煎り

  • 1ハゼ直前で止めるとライトロースト

  • 1ハゼが起こっている途中で止めるとシナモンロースト

  • 1ハゼが終了すると同時に止めるとミディアムロースト

 ライトローストやシナモンローストは、一応飲むことはできるが浅すぎることが多く、通常の方式で入れると生臭かったり青っぽい匂いがしておいしくないものが多い。ミディアムローストまでいくと青臭さなどは消え、酸味が強く残り、まだ苦味を感じず、珈琲らしくない味わいかもしれない。


中煎り

  • 1ハゼから2ハゼの間で止めるとハイロースト

  • 2ハゼ開始直前~直後に止めるとシティロースト

  • 2ハゼが起こっている最中に止めるとフルシティロースト

 酸味が落ち着くようになり、爽やかな苦味も感じられるようになる。また、カラメルっぽい甘みを感じやすい。シティローストは酸味、苦味、甘みのバランスがとりやすく、ほとんどの豆でおいしく飲むことができる。


深煎り

  • 2ハゼ終了直前~直後に止めるとフレンチロースト

  • 2ハゼが終了してから止めるとイタリアンロースト

 味わいに焦がした苦味が加わり、酸味はほとんど感じられなくなる。しっかりとした深煎りでは、味も香りも単純化する傾向がある。

一般的な焙煎と酸味苦味等の関係


(Wikipediaより)


 

豆によるハゼの違い


 ブラジルとジャワのロブスタ、インドネシアのマンデリンは1ハゼ音が小さく少ない。品種や精製方法、クロップなどで差はあるが、だいたい小さくて短く、ロブスタに関してはまったく聞こえてこない時もある。ハゼが小さい豆を無理にハゼさせる必要はないが、全く聞こえない場合はカロリー不足である。ハゼが弱い豆の場合、生豆が緩んで水分を出し始めたら火力を上げる。最初から火力を上げ過ぎると、表面から色付き芯残りの仕上がりになるため。火力をあげたら、ダンパーの開き加減を合わせ、来る熱と排出する熱のバランスが合えば、スモーキーさや味抜けのない焙煎ができる。



焙煎度の評価


 焙煎度は同じ豆でも見る人によって表現が一致するとは限らない。焙煎度に客観性をもたせるためカラーメーターで測定し、焙煎度を数値で表す方法がある。


(Wikipediaより)

 

追記


 ここで記述している浅煎り〜深煎りと各ローストとの関係は「焙煎度 その1」でまとめた段階と異なっている。ミディアムローストを浅煎りとするか中煎りとするか、フルシティーローストを中煎りとするか深煎りとするかなど、いままでも書く度に違っている。資料でも様々なので正解はないのかもしれない。焙煎店で頼んだ浅煎りは2軒ともミディアムローストだった。今はだいたいこんな感じということにとどめ、決めないでおく。


 しれば知るほど、焙煎は温度とタイミングが難しい。温度コントロールのできない手動焙煎機が美味しく焙煎できるのは。火をつけたら回すだけで、コントロールできる要素が少ないから、かえってちょうど良い焙煎ができているようだ。うまく設計された焙煎機なのだ。いつものことだが、難しく考えず、そのまま自然にやればいい。憧れの業務用焙煎機は、制御するところがたくさんある分、焙煎には技術と経験がいるだろう。




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