2024/1/17
日本コーヒー文化学会発行 『専門家が語る!コーヒーとっておきの話』を読む。
目次
ニッポンのコーヒーカップ(井谷善恵)
日本のアメリカンコーヒーの発祥地(鈴木志男)
津軽藩兵を救った珈琲(成田専蔵)
焙煎機の歩みとその構造(福島達男)
コーヒージャーナリズムとリテラシー(狭間寛)
サンゴの森に眠るコーヒー(中平尚己)
コーヒーの旅で出会った人と本のこと(小山伸二)
日本喫茶店史と日本最初の喫茶店(星田宏司)
多様性を極める現在のコーヒー流通形態(小野智昭)
獅子文六の小説の中のコーヒー・喫茶店(飯田敏博)
コーヒーの風味は複雑すぎて難しい(堀口俊英)
渋沢栄一の体験した第二帝政のカフェとコーヒーを巡って(山内秀文)
コーヒーフェスティバルを読み解く(後藤裕・廣瀬元)
世界の希少豆を求めて(上吉原和典)
世界のコーヒー品種の流れ(今井夫)
愛知県の喫茶店のモーニングサービス考察(井上久尚)
焙煎について知ったこと・失敗したこと(菊地博)
コーヒーと健康生活(高妻孝光)
私を育ててくれた珈琲の世界の先達たち(繁田武之)
伊藤博文庫と器具展示の珈琲ギャラリー開設まで(平湯正信)
スマトラ・マンデリンとは(中根光敏)
ブレンドコーヒー創造のために何が必要か(細野修平)
サステナブルコーヒーの取り組み実例(山本光弘)
セラード珈琲の歴史とこれから(山口彰男)
美味しいコーヒーとはピッカーが作る物(山岸秀彰)
喫茶逃避行(小坂章子)
私のコーヒー(大坊勝次)
コーヒーの無限の可能性(佐野俊郎)
金沢でコーヒーと共に半世紀(西岡憲蔵)
コーヒーといけばな・ひとりよがりのものさし(小原博)
珈琲問屋の海外出店状況(佐藤光雄)
感想
面白い本だった。しかし最初はページが進まなかった。31人が珈琲を語っているのだが、名前を知らない人ばかりで、資料性はあるもののお年寄りの思い出話的な感じがして、2人読んで本を置いてしまった。昨年の暮れのことだった。
しばらくして続きを読み始めると、漫然と珈琲を飲んでいる最近の自分の目を覚させてくれる様なそんな話がどんどん出てきた。珈琲のことにこんなに一生懸命な人たちがいる。一人についてほんの数ページなのだが、タイトルでは読み取ることのできない、人生を通して珈琲と向き合った体験や知識が詰まっていた。
「実にうまくできた、まずここまでできたのだから、などと喜びをおぼえることは誰もが経験していると思う。このようなとき、奥義にふれたと思っていいのだろうし、私もそう思う。しかし、やがて時がたって、それほどのものではないとわかったり、つまらないものだったと思えたりすることが誰にもあると思う。ふれた奥義の力が弱いものになって、奥義と思えたものが違っていた。と気づくようなことがあるにちがいない。しかし、必ずしもそうなるともきまっていない。むしろ逆に、いまのほうが、自分は落ちた、奥義から遠くなった。などと思うこともある。ここがまことに厄介なので、奥義はついにわかりにくいものだときめてかからねばならない。」コーヒーといけばな・ひとりよがりのものさし(小原博)p274より
珈琲の探求を始めて5年、いろいろなことがわかった気になったのはいいけれど、最近鈍感になったというか、5年前の真摯さというか、生真面目さが失われ、適当になってきている。母の珈琲は変わらず丁寧に淹れているけれど、自分で飲む珈琲はいい加減だ。最近は同じような豆を淹れているせいもある。味の吟味もほどほどにのほほんと飲んでいる。確かに奥義に触れたと感じた気もしたのだが・・・。
追記
本書に川島良彰氏や旦部幸博氏の名前がないことが残念だった。自分にとって珈琲を語ってくれた人だったから。それにしても本書に登場する31人の名を知らないのは、ただただ自分が無知なだけだった。唯一わかるのは今はもう閉店してしまったがブルーボトルにも影響を与えた表参道のネルドリップの名店「大坊珈琲店」の大坊勝次氏だ。その他の面々は日本コーヒー文化学会の会長や、富士珈琲の代表取締役をはじめコーヒーに関係する会社や組織の代表であった。
いくつかの書籍に出会ってふっと思うのだが、派閥の様なものがあるのだろうか。あるグループでは度々名前が出る面々があるかと思えば全く登場しないグループがある。なんだかそんなふうなものを感じる。面白いとも思うが残念な気もする。
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