モヒート

11 時間前
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2026/9/9

モヒートを飲む。ミントとライムの香りがふっと立ちのぼり、喉の奥にほのかなラムの温もりが残る。ストレートで煽ったときのあの舌が痺れるような強烈さはなく、すこぶる心地よい飲み心地である。母はこれがすっかり気に入った様子で、もう一杯おかわりを求めた。
「モヒート」はキューバのハバナで生まれたカクテルで、時間をかけて気長に味わうロングドリンクなのだそうだ。今回はグラスに氷を浮かべ、バカルディのモヒートを注ぎ、同量の炭酸水で割ってから、ライムのスライスを添えてみた。
それにしても、私はいつこの「モヒート」という酒の名を覚えたのだろう。ヘミングウェイか村上春樹の小説で読んだような気がしていたのだが、調べてみると、どうやらヘミングウェイの作品には登場しないらしい。村上春樹の方は『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の中に顔を出している。しかし、ヘミングウェイを貪り読んだのは二十代の頃であり、村上春樹のその本を手にとったのは六十を過ぎてからのことだ。二つの間には、ずいぶんと長い年月が横たわっている。
私としては、もっとずっと昔にこの酒の名を聞き、どこか遠い国の爽やかな風に想いを馳せるような、ささやかな憧れを抱いた記憶があるのだ。あれは二十歳の頃、アルバイトをしていたあの飲み屋の片隅だったのだろうか。
ふと見ると、母もまたその名を知っていたようで、どこか懐かしそうに、似たような憧れをそのグラスに重ねている気配があった。モヒートという酒には、人をそんな静かなノスタルジーへ誘う、ふしぎな響きがあるのかもしれない。

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