インスタント珈琲を考える。
インスタント珈琲について
珈琲の抽出液を乾燥させて粉末状に加工したインスタント食品で、お湯を注ぐだけで珈琲ができる。その誕生は諸説あるようだがWikipediaの解説がわかりやすい。
1771年イギリスで水に溶かすインスタント珈琲が発明されたが、製品の貯蔵可能期間が短く発展しなかった。
1853年アメリカで開発が試みられたが保存に成功しなかった。
1889年ニュージーランド、インバーカーギルの珈琲・香辛料販売業者デイビッド・ストラングが「ソリュブル・コーヒー・パウダー」の作成法の特許を取得し、「ストラング・コーヒー」として製品化したのが、記録上確認できるはじめとされる。
1899年アメリカイリノイ州シカゴに在住していた日本人科学者のカトウ・サトリ博士が、緑茶を即席化する研究途上、揮発性オイルを使用した珈琲抽出液を真空乾燥する技術を発明した。
1901年カトウはニューヨーク州バッファローで開催されたパンアメリカン博覧会で「ソリュブル・コーヒー」と名づけて発表した。
1903年カトウは特許を取得したが、商品化には成功しなかった。
1906年アメリカでジョージ・コンスタント・ルイス・ワシントンがインスタント珈琲製法の特許を取得し「Red E Coffee」として製品化し成功を収めた。
インスタント珈琲を発明したのは日本人だという記述をよく見かける。確かに日本人が発明していたら嬉しいけれど、実際にはカトウ博士が発明する100年も前にすでに発明されている。何を持って初とするかは諸説あるものだが、自分たちに都合のいい内容になっていく。どうであれ、日本人がインスタント珈琲の誕生に関わっていたことは確かなのだと思う。ストラングやカトウの製法とワシントンの製法との関連はよくわからないが、現在の製法は以下の4通りのようだ。
スプレードライ製法:抽出濃縮した珈琲液を噴霧して、高温高速で瞬間的に乾燥させる方式。微粉末状で冷たい水にも溶けやすく、大量生産にも向いている。
フリーズドライ製法:抽出濃縮した珈琲液を-40℃で凍結させ、真空状態で乾燥させる方式。風味や香りが逃げにくいのが特徴 。
挽き豆包み製法:丁寧に微粉砕した焙煎珈琲豆をネスレ独自の珈琲抽出液と混ぜ合わせて乾燥し、ソリュブル珈琲の粉の中に封じ込める製法。
エキス抽出液体式:わかりやすい解説が見つからないが、珈琲エキスを抽出した濃縮液体のことだろうか。
かつてインスタント珈琲は瓶詰めが主流だった。小袋入りもあるにはあったが数は少なかった。今や時代の要請で詰め替えや、1杯ずつ包装されたスティックタイプが隆盛を極めている。(Wikipedia参考)
実験した珈琲
いずれもスティックタイプの無糖で、飲み慣れた、ネスカフェ、マキシム、ブレンディに加え、カルディ、スターバックスのヴィア、今年発売されたブルーボトルのインスタントを比べる。この11種類がインスタント珈琲を比較する上で必要十分なチョイスかどうかはわからない。何種類あるかさえ定かではない中での選択基準は飲みたいと思ったものだ。
豆の種類、重さ、単価、湯量、製法など、並べて比較すると違いが見えてくる。
インスタント珈琲はロブスタ種が多く使われていると聞いていたが、実験に用いた珈琲にはいずれにもロブスタ種の記述が見当たらない。ゴールドブレンド、ブレンディは使用している豆の記載がないから、もしかするとロブスタ種が使われているかもしれないが、はっきりしたことはわからない。
「日本で最も多くの消費者に愛飲されてきたネスカフェ、インスタントコーヒーの歴史に終止符を打ち、ネスカフェを新しいカテゴリー“レギュラーソリュブルコーヒー”へと進化させます」というネスレの挽き豆包み製法が如何なるものか、知名度一番の珈琲に期待は高まる。
同じAGFの商品だがマキシムはフリーズドライ製法、ブレンディはスプレードライ製法であったことに初めて気がついた。
ソリュブル珈琲とインスタント珈琲という2通りの記述が見つかり、区別せずに使っているところや、違うというところもあるが、どこがどう違うかは判然としない。
ネスカフェ、マキシム、カルディ、スターバックスは1杯分約2gだが、ブルーボトルは4gと倍である。湯量も倍なので1杯分の考え方が違うようだ。
ブレンディは11gと随分重い。ミルクが含まれるからだろう。顆粒なのにお湯を加えるとクリーミーな泡ができ、カフェラテが味わえるのは不思議な気分がする。スティックタイプはミルク入りに魅力的な製品が多い。
ミルク入りは甘さ0と書かれているが水あめが入っていたり、食塩やpH調整剤など添加物も結構な種類が入っている。クリーミーな泡を作るために必要なのかもしれない。その点、ブラック珈琲は添加物が見られない。
2010年スターバックスは、ネスカフェなどと同じインスタント珈琲の一種なのだが、従来のインスタントコーヒーとは一線を画していると主張する、ヴィア コーヒーエッセンスを発売した。香が違うと言っている。
ブルーボトルは厳選した豆をハンドドリップで入れることにこだわっていたはずなので、対極にあるインスタントを出すというのはちょっとした驚きだ。ネスレがインスタント化を持ちかけ、商品名にもネスレの文字が入っている。一見単価が高く見えるが、分量で見るとスターバックスと変わらない。
ネスレ、AGF、カルディとスターバックス、ブルーボトルは単価に約8倍の隔たりがある。香りや味の違いにこの差を見ることができるだろうか。
結果
指定量のお湯を注いで、これまでのテイスティングと同様の採点を試みる。お湯の温度は約80℃とした。珈琲の香りをいかに再現するかということがどのメーカーもアピールしている点であり、香味、風味に注目して、レギュラー珈琲との違いを探った。
1位:スターバックスVIA
封を開けると甘い香りが心地よい。珈琲の味もインスタント臭さがなく、豆本来の味わいがある。冷めても美味しく、なかなかいい感じだ。飲み後に微粉が残るが粉っぽくはない。気に入ったのはコロンビア中煎>イタリアンロースト深煎>パイクプレイスロースト中煎の順。viaとはどういう意味だろう「~を経由して、~を通って、~を用いて」を意味する前置詞が見つかる。スターバックスはどういう想いを込めてこの名前にしたのだろう。
2位:マキシムBLACK IN BOX
お湯を注ぐと、ふっとチョコレートのような甘い香りがやってくるのに、カップに鼻を近づけると、チョコレート臭はなくなり、苦い珈琲の香りになる。好みはコロンビア>モカ>キリマン>ブラジルの順だ。コロンビアは求めていた甘味があるし、モカはモカ香があるのが嬉しい。それぞれの珈琲の違いが明確にわかる。手軽さと味で選ぶならマキシムは好みに合っている。ブラックボックスアソートはいろいろな味も楽しめていい。フリーズドライの顆粒も粒揃いがよく、美味しそうな色だ。
3位:ブルーボトルINSTANT
どこかインスタントだという香り、味がする。喉越しに不思議な苦味と酸味がある。キレが悪いのではないが、なんとなく何かが残る。1杯230ccは時に多く感じることがあるだろう。沢山飲みたいときは2本入れれば良いのだから、他社と同じ2gだったらよかったのにと思う。パンフレットにチョコレートを思わせるコクと書かれていたが、しっくりこない。お店で飲むブルーボトル 珈琲を自宅で飲めるというわけにはいかない。かなり期待していたので残念である。
4位:カルディTHE MILD
封を切ると甘い香りがした。飲みやすいが若干インスタント感がある。冷めると酸味が出てくる。カルディはお店に入るときに美味しい珈琲を無料で飲ませてくれる。砂糖とミルクが入ったマイルドカルディだ。あれは、インスタントなのだろうかドリップなのだろうか。
5位:ネスカフェGOLD BLEND
そうだゴールドブレンドだという味、それは代表的なインスタント珈琲の味だ。香りは少なめ。酸味、甘味も少なめ。ロブスタ種が混ざっているような気もする。飲み終えると微粉がカップの底に溜まっているが、粉っぽいわけではない。ゴールドブレンドのネームバリューでつい買ってしまうが、飲み比べると、煮詰まったように感る。
番外:ブレンディCAFE LATORY
スティックタイプのミルク入りは、パッケージとしては同類だが、ブラック珈琲と同列に比較すべき飲み物ではない。香りはさほど立たないが、泡立つまろやかなクリームは濃厚で美味しく、バランスがいい。シリーズの他のものも飲んでみたいと思う魅力がある。
総評
いずれもお湯で解くと素早く溶ける。香りはスティックを開けたときに一番感じる。どのメーカーも香りに重点を置いているのだが、珈琲自体の香りは期待ほどではなく、インスタント臭を感じるものも多い。
ブルーボトルのインスタントは自家焙煎した珈琲よりも単価が高いが、単価の違いに見合うような感動は得られなかった。その点スターバックスは、おや、ちょっといいじゃないか、いろいろな種類があるから別のも飲んでみようと、価格に見合ったものを感じる。特筆すべきは価格も安く種類も豊富で味もいいマキシムかもしれない。
ミルク入りのスティック珈琲は別次元だ。エスプレッソマシンで入れたカフェラテとも別物だが、かなり美味しい。マキシムといいブレンディいといいAGF恐るべし。
インスタント珈琲の良さは、長期保存、携帯性、お湯さえあればどこでも珈琲が飲めるという手軽さだ。子供時代から既に当たり前にあったから、珍しいものではないが、改めて見直すと、画期的な商品である。そして進化している。
追記
詰め替え用を手持ちの瓶に入れた「マキシム・モカブレンド」がある。蓋を開けると、ふわっと珈琲の良い香りがする。味は苦味が強く、酸味、甘味は少ない。苦味に独特な感じがある。酸化した感じはしないが、モカという感じは既にしない。
ところが、いつ購入したかわからなくなったぐらい時間が経っているのに不味くない。これこそインスタント珈琲の凄さかもしれない。スティックの良さは風味を逃さないことだが、瓶入りの良さは、飲むときの量を調整しやすいことだろう。こうして風味も結構留めているのだから、実は気に入ったインスタント珈琲は瓶入りが使いやすいということかも。
お店で飲むような美味しい珈琲を自宅で飲みたい。その欲求を手軽に満たしてくれるのがインスタント珈琲だ。でもなんだか少し求めているものと違うと感じて、挽いた豆を買って淹れてみる。まだ違う気がして淹れ方を工夫する。次には自分で焙煎をする。ああだいぶ良くなったと満足する。そうして、あらためて、インスタント珈琲を飲んで、歩んできた道のりを再確認する。振り出しに戻ったようだが、ちょっと違う、螺旋階段を登っている。幾度も経験するこの感覚ウロボロス。
2024/4/6
カフェモーメント・スムース
スターバックスのお店を訪れた時の心地の良いひとときをイメージした。バランスの良い、シリアルのような味わいのコーヒー。
2024/4/6
カフェモカ
抹茶ラテ
2024/3/16
厳選した抹茶を使用し、やわらかな泡、滑らかでクリー味な深い味わい。103kcal
甘すぎず抹茶を楽しめる。
トフィーナッツラテ
2024/1/26
スターバックのお店の味をお家でも。お店と同じ高品質のアラビカ豆100%を使用した、期間限定のスターバックス トフィーナッツラテ。柔らかな泡、甘く煮詰めたバターの風味と香ばしいナッツの豊かな味わいをお楽しみいただけます。(スターバックスパッケージより)
おいしい召し上がり方に「熱湯は使用しないでください」と書かれている。1スティックにつき85度の180mlのお湯を注ぎよくかき混ぜると。泡だった甘ーくて香ばしいドリンクができる。甘さが際立ち珈琲感は引っ込んだ感じ。寒い日にぴったり。
スターバックスロースト
2021/6/29
スターバックスは3種類のインスタントコーヒーを出していた。インスタントの深煎り(ダーク)・中煎り(ミディアム)・浅煎り(ブロンド)は面白い着想だと思う。
2020/9/1:スターバックス プレミアム ソリュブル ダーク ロースト
2020/9/1:スターバックス プレミアム ソリュブル ミディアム ロースト
2021/3/1:スターバックス プレミアム ソリュブル ブロンド ロースト
スターバックスによると
ダーク:しっかりとした深みのある力強い風味
ミディアム:バランスの取れたまろやかで豊かな風味
ブロンド:軽やかで穏やかな風味
ということだが、わかったようでわからない。実際に飲んだ感想は、淹れたての熱いコーヒーは苦味が目立って似た感じだが、少し冷めるとブロンドは酸味が、ダークは苦味の中に甘みが感じられ、ミディアムは中間的な感じだ。