マティーニ

2026/10/13

マティーニというと、ジェームズ・ボンドが「ウォッカ・マティーニを、ステアではなくシェイクで」と注文する場面がまず浮かぶ。『七年目の浮気』では、マリリン・モンローが出されたドライマティーニを「辛い」と言って、砂糖を入れる。ヘミングウェイはモヒートやダイキリが好きだったそうだが、それでも作品にはマティーニを登場させている。どういうわけか、前からなんとなく憧れていた酒である。
作り方は簡単である。氷と水でカクテルグラスを冷やしておき、ミキシング・グラスにジンとドライベルモットを3対1で注ぐ。氷を入れて20回ほどかき混ぜ、冷えた液体を氷が入らぬようにグラスへ移して、オリーブを添える。度数は35から40パーセントというから、なかなか強い。味はキリッとした辛口で、ハーブの複雑な香りと、爽やかな苦味と、ジンの香りがひろがり、甘味はほとんどないのだそうである。
ベルモットが少ないほど辛口になるらしい。標準はジン3に対してベルモット1、ドライマティーニは4対1、エクストラ・ドライになると7対1で、こうなるともうほとんどジンを飲んでいるようなものである。
今回用意したのは、サントリー・クラフト・ジンの「ロク」(度数47%)と、マルティーニのエキストラ・ドライ(イタリア産、度数18%)である。ジンの有名な銘柄は、レモンやライムなど、かんきつ類で香りをつけたものが多いが、ロクは桜花、桜葉、煎茶、玉露、サンショウ、ユズという六種類の和素材を使っている。これが名前の由来でもある。2014年に買収したアメリカのビームと共同で作った、会社としては力を入れた品だったという。欧米では評判がいいらしい。久しぶりに出かけた酒屋で見つけた。
ベルモットというのは、白ワインにニガヨモギなどのハーブで香りをつけた薬草酒で、名前はドイツ語でニガヨモギを意味する「ヴェルムート」から来ているそうである。「マティーニ」という名前そのものも、マルティーニ・エ・ロッシ社のドライベルモットを使ったからだという説があるので、せっかくだからと同社のものにした。
オリーブは、チェリーの入った甘口のマティーニと見分けるための目印だったのが、そのまま定着したという説がある。塩気と油気が口の中をさっぱりさせ、味の変化を楽しませてくれるのだという。
飲んでみると、ジンの香りが立って、思ったほど辛くは感じない。ところが、しばらくすると、カーッとアルコールが体に回って、酔いを感じた。これがマティーニか、と思った。ロクの和素材の風味については、残念ながら、どれがどれやらさっぱり気が付かなかった。
母のために作ったドライマティーニは、ひと口味わうと、案の定「きついね」と言う。そこでライムジュースと炭酸を加えて、度数を落とし、甘くした。我が家のモンローは「これは美味しい」と、たいへん喜んでくれた。



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