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執筆者の写真Yukihiro Nakamura

調べるということ

更新日:2020年2月15日


 ネットで調べればなんでもわかる気がしていた。でも毎日のように使う検索機能は、自分に特化したフィルターがかかり。自分好みの結果が知らず識らずのうちに出るようになっている。検索結果に偏りが発生していても気がつかない。今回図書館の「調べ物相談」を利用して、自分では検索できなかった情報が手に入ることを改めて実感し、視点を変えることも必要だと感じる。


 


 「日常生活や趣味、ビジネスといったいろいろな場面で、何かについて疑問を持ち、調べたいと思ったことはありませんか。そんなときには、図書館のレファレンスサービス(調べもの相談)をご利用ください。どんな分野の問い合わせであっても、必要な情報を探すお手伝いをします。」というもので、個人的でニッチな調べ物でも丁寧に応対してくれる。今回はエスプレッソについてなぜ圧力をかけて珈琲を淹れようと思ったのかを知りたくて利用したところ、下記2冊の本の紹介と抜粋を連絡してくれた。

  • 「図説コーヒー」UCCコーヒー博物館/著

  • 「コーヒーの歴史」マーク・ペンダーグラスト/著

以下に本を読んだ感想を記す。

 

「図説コーヒー」


 UCCコーヒー博物館/著 河出書房新社 2016年 p78~『エスプレッソ』より19世紀後半よりイタリアとフランスで、蒸気圧を利用してコーヒー抽出する試みが盛んに行われていた。鉱山や工場の機械に蒸気機関が使われ始め、蒸気機関車が登場し、人々が蒸気というものの威力と扱い方を知った時期である。1855年のパリ万博では、蒸気を利用した巨大なコーヒー抽出器で、1時間に2000杯分を抽出しサービスしたと言われる。これが人気を博してヨーロッパに広まった。という記述が見られます。(図書館からの案内より)

 本書は珈琲の起源、栽培、鑑定、焙煎、抽出、文化と広範囲にわたる内容をわかりやすく教えてくれる。知りたかったエスプレッソの発明は、図書館からの案内の一文が最も参考となるもので、それ以上の情報は見つけられなかったが、イスラム世界で発見され一部の僧侶が服用していたコーヒーがアラビア半島を北上しヨーロッパ世界へ流れ、十字軍との戦いの中で逃走したイスラム軍の残したコーヒー豆がヨーロッパ伝播を助けたなど。珈琲に着目した世界史は面白い。明治ごろ日本に入ってきたことや、インスタント珈琲、缶珈琲を発明したのが日本人で、大阪万博で評判になったことなども興味深い。愛用しているKALDIの名前は珈琲発見伝承の一つ「山羊飼いカルディの伝説」が由来だった。どのページもいま調べたり実験していることを裏付けてくれて読むのが楽しく、久しぶりにあっという間に読み終えてしまった。


 

「コーヒーの歴史」


 マーク・ペンダーグラスト/著 河出書房新社 2002年 p261~『ヨーロッパのコーヒー事情』より二十世紀初頭に即席コーヒーの需要に応えるために考案されたエスプレッソは、すぐに熱心なファンを獲得した…という記述が見られます。(図書館からの案内より)

 本書は、珈琲に関わる人たちの右往左往してきた歴史にスポットを当てて書かれている。いわくどれほど農園で人が酷使されたか。いわくどれほど儲けた人がいてどれほど損した人がいたかなど。人類の珈琲歴史の暗部に焦点が当たっている。知りたかったエスプレッソの発明についてはすでに調べた内容と同等の内容だったが、エスプレッソについて「珈琲を一挙に抽出する淹れ方の利点は、どんな質の良くない豆でも使えることだった。実際、安いロブスタ豆を混ぜた方が、表面にたっぷりクリームが浮かぶ。」と書かれているあたりに、筆者の悪意が潜んでいるような気がする。555ページという分厚い本には有益な情報もたくさん詰まっているのだが、心おだやかに楽しんで読むことができない。いつしか飛ばし読んでいる。珈琲を楽しもうと思っていたら、環境問題から、権力者の思惑、係争などを垣間見ることになり、楽しむどころではなくなってしまった。


 

あとがき


 今回の調査は、正しく珈琲の清濁合わせた二面性を知ることとなり、とても有意義なひと時を過ごすことができた。知識とは、自分に都合の良いことばかりではない。珈琲を楽しもうと思い、いろいろなことを調べてゆくと。一杯の珈琲に世界中の人々が関わっていることを感じる。そこには素敵なこともあるけれど、問題も山のようにある。珈琲を楽しむこととそれらのことは全く別ごとだけど、簡単に割り切れない。自分だけで調べていたらダークサイドは見落としていたかもしれない。そんなことを思いながら今日の一杯を淹れる。


追記


 図書館のレファレンスサービス(調べもの相談)には大変感謝している。あまり大勢からこのような問い合わせがあると対応が難しくなるのではと心配しつつ、多くの人にこのようなサービスがあることを教えてあげたい。


 そして私の与太話に付き合ってくれたり、図書館のレファレンスサービスのことを教えてくれた友人に感謝。


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