そもそも、なんのために蒸らしを行うのか。という観点から、蒸らしの時間を変えて、テイスティングを行い、蒸らしの必要性と、美味しく飲む蒸らしの条件を実験した。
蒸らすと膨らむ理屈
なぜ蒸らすと膨らむのかを調べたところ、珈琲豆は焙煎すると多孔質になり、焙煎によって発生した炭酸ガスが空洞に溜まっているらしい。お湯を注ぐとお湯がこの空洞に染み込み炭酸ガスが押し出される。その結果コーヒー豆がモコモコと膨らむ。この炭酸ガスの放出が落ち着くのに約20~60秒かかる。この時間を蒸らしと言っているわけだ。この空洞は焙煎が深いほど多く形成され、浅いほど少ない傾向にあるが、深煎りはガスが抜けてしまうのだろう。浅煎りや深煎りが膨らまないのはこのためであった。また炭酸ガスは時間の経過と共に自然放出されるため古い豆は膨らまない。
なんのために蒸すのか
ドリップなどの透過法は、蒸らしの時に高濃度の珈琲を空洞内に作り出し、2投目以降のお湯を注ぐことで浸透圧をかけ抽出する。透過法は繰り返しお湯を注いで雑味成分が溶け出す前の珈琲エキスを抽出することを狙っている。蒸らしをしっかり行わずにお湯を注ぐと、珈琲エキスが十分に抽出できていないまま珈琲が出来上がってしまい薄いコクのない珈琲になる。
フレンチプレスなどの浸漬法は、お湯を注ぐとガスが出るためしばらく置いて第2投を注ぐ、この間が蒸らしに相当する。粉の空洞内の濃度と粉の周りのお湯の濃度差によって浸透圧がかかり、お湯の濃度が一定になった段階で抽出が終わる。浸透圧が止まっても雑味成分が溶け出すため、適当な時間でカップに抽出液を移すことで抽出をコントロールする。
理屈がわかったところで、実際に蒸らしを行なった場合と、蒸らしをおこなわかった場合、蒸らしを長めに行なった場合どうなるかをドリップとフレンチプレスで実験した。
実験1 蒸らし時間を変えたドリップ
実験方法
抽出方法:コーノ式ペーパードリッパー
抽出条件:中挽き10g、80℃
豆:焙煎11日目のトラジャママサ中煎り
蒸らし時間:0秒/20秒/60秒
結果
蒸らさずに淹れるとコクもなくあっさりすぎて物足りない。蒸らし時間を長くするとえぐみが出た。
実験2 蒸らし時間を変えたフレンチプレス
実験方法
抽出方法:HARIO カフェプレス ウッド コーヒー & ティー プレス
抽出条件:中挽き10g、80℃
豆:焙煎11日目のトラジャママサ中煎り
蒸らし時間:0秒/20秒/60秒
結果
甘さの出具合が蒸らしでかなり変わる。蒸らさない場合や、長めに蒸らすと甘く感じるのは、蒸らしがちょうどの時、珈琲本来の味が出ているということなのかもしれない。
結論
豆の焙煎度合い、挽き具合、鮮度などで条件が異なるから、一律何秒蒸らすということではなく、実際に第1投のお湯を注いでから粉の動きを見て落ち着いた頃合いを見計らって、第2投目を注ぐのが合理的でおいしく淹れられる方法だ。何れにしても蒸らすことで、しっかりとした珈琲が抽出される。
追記
今回テスト項目を見直した。初めてテイスティングを行なった時は「甘味」の判定が抜けていたし、修正版でも「苦味」が抜けていた。これはSCAAのカップテストを参考にしたせいだが、SCAAには苦味の判定がない。しかし珈琲の味を評価するのに苦味は不可欠だとおもうので追加した。また最初の頃はせっかくのスコアが美味しさの判定に直結しなかった。それらを改良しながら今回のテイスティングを行なった。ドリップの20秒蒸した評価が96点というのは高すぎるようだが、今回6種類を飲み比べた結果、感覚的な美味しさと評価点がそれなりにあっているように感じている。
このテストを行うまで、ドリップに今一つ自信が持てずにちょっと構えてしまったのだが、ようやくそんなことを気にせずに、気楽にドリップできるようになった。
トラジャママサの焙煎したてに出会ったことで一段と珈琲を美味しく感じ始めている。最近はこんな感じで毎日のコーヒーを楽しんでいる。
朝:深煎り細挽きカプチーノ 深い苦味にほんのりとした甘みで目がさめる
昼:浅煎り中挽きペーパードリップ 爽やかな酸味
夜:中煎り中挽きペーパードリップ 酸味と苦味のハーモニー
ちょっと前は実験のために何杯もコーヒーを飲むとしばらくいらない感じだったけれど、最近は、何杯飲んでもまた飲みたく感じてしまう。これはカフェイン中毒になったということだろうか?
2018/6/28
浅煎り深煎りは膨らまないというわけではないことを自家焙煎して体感した。豆によるのか、焙煎によるのか、焙煎からどれだけ時間が経ったかによるのか。様々な理由があり、こうだからこうとは一概に言い切れないようだ。新鮮な豆は大抵膨らむかな。
2019/5/5
焙煎から2週間目のトラジャママサ 浅煎りが、ドリップでもっこり膨らんだ。1週間前は膨らまなかったのに、数日前からなんだか膨らんでいるような気がし始め、昨日確かな膨らみを認識。今日はもっこり膨らむのである。爽やかな酸味がとても美味しい。今ぐらいがちょうど飲み頃なのかもしれない。