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スクリュードライバー

執筆者の写真: Yukihiro Nakamura
Yukihiro Nakamura
1 時間前
読了時間: 2分

2026/10/24



 スクリュードライバーと云うと、懐かしいような、少し気恥ずかしいような気持になる。学生時代、この酒は女性を口説くための道具と相場が決まっていた。別名をレディー・キラーと云う。ウォッカをオレンジジュースで割ったもので、口当りが良いから、ついスイスイ飲んでしまう。気が付いた時にはだいぶ酔っている。そこで洒落た青年は、バーで彼女のためにこれを註文して、いい塩梅に酔った相手を口説く。そう云う段取りだったらしい。らしい、と書くのは、僕にはその経験がないからである。


 由来は至って色気がない。油田で働く男が、ウォッカにオレンジジュースを混ぜようとして、マドラーが見当らなかった。仕方がないので工具箱のドライバーでかき回した。それで、この名前がついたと云う。


 学生時代、アルバイトをしていたバーでは、スクリュードライバーを註文する客は一人もいなかった。あまり有名になり過ぎて、かえって頼み難かったのかもしれない。もっとも、僕自身も誰かのために註文したことは一度もない。


 半世紀が過ぎて、家で母とそんな話をしながら、スクリュードライバーを作った。僕のはウォッカ1にオレンジジュース3。母のはウォッカを薄めにして、4か5にした。これはオレンジジュースの味に相当左右されそうだ。今回使ったウォッカはスミノフNo.21、イギリスのディアジオ社製で、アルコール度数は40度。オレンジジュースは東海牛乳の「あじわいオレンジ100%」で、甘みが少なく酸味が強かった。オレンジジュース好きの母は、これも悪くないと云う顔をしたが、カンパリソーダの方が好みのようだ。


 ウォッカは白樺の炭で濾過してあるので、匂いも味もないものだと聞いていた。ところが、スミノフを舐めてみると、鼻先をアルコールの匂いがすっと掠めた。口に含むと、ギュルルンと云う感じで刺激が広がる。それから、妙に甘かった。無味無臭のはずなのに、と思ったが、誰に文句を云うわけにもいかない。

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