珈琲の美味しさを数値化する方法に濃度と収率がある。
収率の計算式
抽出量 ml × 濃度% ÷ 豆の量g = 収率%
珈琲にどれくらい珈琲の成分が抽出されたかを調べるわけである。
濃度:珈琲液にどれほど溶け込んだものがあるかを示した数値
収率:珈琲豆のエキスがどれぐらい溶け出しているかを表した数値
濃度はTDS計で計測することができ、収率は濃度を基に計算することができる。珈琲の成分を完全に抽出できれば収率100%となるわけだが、実際には抽出できないし、美味しいわけでもない。一般に美味しい収率は18〜22%だという。収率によって珈琲の状態をこんなふうに表現できる。
理想の収率より低い場合:アンダー、抽出不足
理想の収率より高い場合:オーバー、過抽出
これがどう言うことなのか、実際に測定しながら確かめる。
実験1(アンダー)
いつも通りに珈琲を淹れて測る。
豆の量:14.5g
抽出量:327.5ml
濃度:0.722%
収率:16.3%
327.5ml × 0.722% ÷ 14.5g = 16.3%
その他の条件
豆の種類:エチオピア・イルガチャフィー
焙煎度:中煎り(ハイロースト)
メッシュ:中細挽き(目盛り6)
ドリップ方法:コーノ式
湯温:80℃
焙煎日:2019年11月17日
試験日:2019年12月1日(焙煎2週間後)
抽出時間:1分30秒
実験を開始した頃は珈琲を淹れるたびに豆の量や抽出量を測っていたが、最近は計量カップに2杯の豆を使い、抽出はサーバーに人差し指の第二関節あたりまでと大雑把で、詳細な計量はしていない。久しぶりに計量すると、2人分としては豆の量が若干少なめだが、珈琲のできとしては、香り高く、程よい酸味と苦味も整い美味しい。
考察
実験1の珈琲は、理想の収率が18〜22%であるとした場合、アンダーである。十分に美味しいが、収率を上げるともっと美味しくなるのだろうか。単純に豆の量を増やせば良いぐらいに思っていたが、計算式から、抽出量を増やす、濃度を上る、豆の量を減らすことで収率が上がることがわかる。つまり豆の量を減らすほうが目的を達成できることになる。まず濃度を上げる方法を探ると、以下の方法に行き当たる。
豆の量を増やす
抽出量を減らす
メッシュを細かくする
抽出時間を長くする
湯温を上げる
濃度を上げれば収率は上がるが、豆の量を増やしたり抽出量を減らして濃度を上げた場合、収率は下がるかもしれない。濃度を上げる方法に収率を照らして整理すると。
豆の量を増やす→収率を下げる
抽出量を減らす→収率を下げる
メッシュを細かくする→収率を上げる
抽出時間を長くする→収率を上げる
湯温を上げる→収率を上げる
このことから、今回の実験では、豆の量や抽出量はそのままで、メッシュや抽出時間や湯温を変えることで収率を上げることができそうだ。
実験2(理想の収率)
メッシュ:細中挽き(目盛り3)
湯温:80℃
抽出時間:2分00秒
メッシュを細かくすると抽出時間も長くなる傾向にあり、変動要素を少なくするため湯温は変えずに実験する。
豆の量:14.5g
抽出量:327.5ml
濃度:0.89%
収率:20.0%
豆の量、抽出量を変えずにメッシュを細かくすることで濃度を上げることができた。収率も目標に収まった。さて美味しくなっただろうか。味わいは微妙で正直わからない。前回も今回も香り高く、程よい酸味と苦味の整った美味しい珈琲である。
実験3(オーバー)
メッシュ:細挽き(目盛り1)
湯温:85℃
抽出時間:2分30秒
さらに収率を上げオーバー気味にするため3要素を全て変える。
豆の量:14.5g
抽出量:327.5ml
濃度:1.02%
収率:23.0%
酸味が薄れ、苦味や甘み、渋みが増え、コクも強く、味が濃くなった印象がある。振れ幅が大きいと味の違いがはっきりする。アンダー気味は好みだが、オーバーは遠慮したい。濃度と収率をコントロールすることで味をコントロールできることが確認できた。
濃度と味の関係
濃度が薄い:香りや風味を感じやすい
濃度が濃い:甘み、コクを感じやすい
収率と味の関係
収率が低い:酸味を感じやすい
収率が高い:苦味や渋みを感じやすい
追記
豆の量、メッシュの細かさ、湯温、抽出量、抽出時間など今までも幾度となく条件を変えて実験したが、それがどう言うことか、どう言う結果と結びつくか、判然としていなかったが、ここにきてようやく結びついてきた。
焙煎してからの日数で豆の状態が変わるから、同じ配分で珈琲を淹れても日によって濃度も収率も変化する。毎朝テストすることで、安定した珈琲を抽出することができることになる。ブルーボトル コーヒーでは「TDSメーターで珈琲に含まれているエッセンスを毎朝バリスタが計測し、ターゲットレンジに入っているか数値と視覚で確認している」これがどう言うことかようやく分かった。SCAAは濃度と収率と抽出量と味わいの関係を示したグラフ「The SCA Brewing Control Chart」を提示している。
収率がアンダーだからオーバーだから美味しくないと言うことではない。香りや風味、甘みやコク、酸味や苦味をコントロールする術として利用すればよいのである。一流のバリスタはその日手元にある珈琲豆の状態を把握した上で、客の好みを聞いて、天気や気分に応じて、珈琲の味をコントロールする術を知っているのだ。
淹れてみて、お店の珈琲も試してみて、自分はあっさりした珈琲が好みであることがわかってきた。味が濃すぎると、えぐみ雑味を感じてしまう。爽やかな酸味はおいしいけれど、濃すぎる酸味はちょっと辛い。苦味の中にほんのり甘味を感じる珈琲が好きだ。収率がアンダー気味が好みの領域かもしれない。
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