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紙と記憶その13「舟を編む」

  • 執筆者の写真: Napple
    Napple
  • 5 時間前
  • 読了時間: 2分

2025/8/6

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 この物語の時代は2019年。令和に年号が改められた年。第8話は用語と紙の話。すでに10年以上前から編纂が始まり、資料は手書きがベースで、データ入力が置き換わろうとしているが、まだコンピューターでチェックできるところに至っていない。用語のチェックは人力で行うことになる。巨大な棚に100万件収められた用語。ハンドルを回して開かれるラック。物理的な紙の存在がそこにある。


 ついに紙が完成。ぬめり感という言葉を、この物語で知った。辞書の特殊な紙に込められた思いというもの。何気なく手に取ってきた本を形作る紙。物理的な本の存在価値を改めて感じる。一つの完成を見た矢先に、抜けている言葉を見つけた主人公。それは「血潮」だった。一つの過ちを見つけたことで、全てを疑う必要性と、その労力への恐れを滲ませて話は続く。


 「全ての言葉には、その言葉が生まれてきた理由があります。誰かが、誰かに、何かを、伝えたくて、伝えたくて、必要に迫られて生まれてきたんです。」「見つけて追いかけるんです。これだけ、言葉を集めても、解釈して、定義づけをしても、その瞬間に言葉は飛んでいっちゃうんです。形を変えて、色を変えて、温度を変えて・・・。捕まえられるものなら捕まえてみろと、挑発されている様な気になる。」


 これは今回気になった台詞。誰もが言葉を使って思いを形にしようとする。何気なく選ぶ言葉。でも思いを確かにしようとする時、言葉は選んだ途端に、どこか違う様な気がする。そんなことを思いつつ、言葉の面白さ、不思議さを感じる。言葉はコミュニケーションの主役だ。そして、言葉に命が宿る。


続く

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