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これが最後です

  • 執筆者の写真: Napple
    Napple
  • 22 時間前
  • 読了時間: 2分

2025/10/9


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台風が来ているというけれど、爽やかな朝だった。

窓を開けていると、電話が鳴った。


「こちらは保健局です。何度もご連絡しています。これが最後です——」


機械のような声だった。

留守電の赤いランプが一度点滅して、また静かになった。


私は窓を開けながら思う。

「これが最後です」なんて、よく言えるものだ。

世界には、最後にならないことばかりが転がっているというのに。


午後、もう一度同じ番号から電話があった。

同じ声、同じ文句、同じ間の取り方。

「これが最後です」と言いながら、今日のうちに二度もやってくるなんて、

どうやら“最後”の定義は彼らの方に委ねられているらしい。


ニュースでは北川博士が笑っていた。

「最初は詐欺電話かと思ったんですよ」と。

ノーベル賞受賞の知らせも、

留守電の赤いランプの中に閉じ込められていたかもしれない。



あとがき


 今朝怪しい電話がかかってきた。電話番号181118793515である。無視したら、午後に、これが最後と言いながら、その日のうちに2度目の電話がある。検索すると厚生労働省のホームページに「不審な電話やメール等にご注意ください。」とあった。あぶないあぶない。これが最後と言われるとつい出てしまいそうになる。そしてノーベル化学賞を受賞した北川博士の話を思い出した。


追記


 作品を書いているとまた懲りずに電話してきた。これが最後と言いながら3度目。いやまだかかってくるかもしれない。よく聞いていると「〇〇な方は」という箇所を「〇〇な“ほう“は」と言っている。AIに読ませているのか。外国の詐欺集団なのか。


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