村田沙耶香
- Napple
- 8月28日
- 読了時間: 5分
2025/8/28
村田沙耶香との出会いは「コンビニ人間」だった。

私が出会った村田沙耶香の作品。
2016年:コンビニ人間
日記に綴られた村田沙耶香にまつわる思い。
2025/8/22
「あの本、読みました?」は村田沙耶香さん特集だった。まだ読んだことのない作家だ。代表作は「コンビニ人間」。新作「世界99」は面白そう。
彼女の言葉は気になる言葉ばかり
「典型的人間」とは環境によって性格が変わる。
「呼応」と「トレース」。
何か人ならざるもの。
常識を覆してくる。
誰も傷つけていないってすごい楽。
被害者は辛いし苦しいけど楽。
人類にとって不都合な言葉を見つけてしまうかもしれない。
どの小説にも書かれていない感情。
小説は楽譜で読者が演奏する。
人によって同じ音が聞こえるわけではない。
血糖値が上がることでゾーンに入る。
彼女の作品は今多くの国で読まれている。アルメニア人が「アルメニア人の名前に書き換えたらこれはアルメニアの物語だ」と言う。普通から逸脱した人を何故と問う社会は、どの国も同じらしい。誰の味方もしないけれど、誰にも門を開いている作家。
「え、自分の人生に干渉してくる人を嫌っているのに、わざわざ、その人たちに文句を言われないために生き方を選択するんですか?」それは結局、世界を全面的に、受容することなのでは、と不思議に思ったが、「僕はもう疲れたんだ」と白羽さんが言うので頷いた。「疲れるのは非合理的ですね。結婚をしただけで文句を言われないなら、手早くて合理的ですね。」コンビニ人間より
「正常ほど不気味な発狂はない。だって、狂っているのに、こんなにも正しいのだから。」消滅世界より。この言葉が生まれる世界を見たくて書いた物語だという。
地球星人。書く前からわかっている実験をしてもつまらない。無意識を探らないと、好奇心を刺激することがつかめない。もしかしたら小説家ではないのかもしれない。
これから読む人はデビュー作「授乳」から始まって「コンビニ人間」「消滅世界」「地球星人」「世界99」と繋がっていくといい。リアリズムからそうじゃない方へ。
以上は番組で語られた言葉だ。こういう人がいるなんて知らなかった。この人にはとても興味を感じた。何だかすごいという思いと。そのくせ、どこか自分が感じてたことと似てる。という錯覚のようなもの。それは誰もが感じることかもしれない。ただ、感じていたけれど、言語化できていなかった。そういう意味で新発見をさせてくれそうな期待感を持って、彼女の作品を読んでみたいと思った。
2025/8/22
村田沙耶香が芥川賞を受賞したとき、正直に言えばそのタイトルの語感から「自分の好みではない」と勝手に距離を置いていた。ところが「あの本、読みました?」で彼女の言葉に触れたとき、不意に同じ感覚を共有しているような気がして、一挙に興味を持った。そして次の瞬間に『コンビニ人間』を購入し、読み始めていた。
物語は子供時代や学生時代、コンビニでの日常、同窓会の会話へと移っていくが、章立てがなく、ただ一筋に流れていく。けれども違和感はなく、自然に引き込まれる。まるで身の上話を聞いているような塩梅で、気づけば一気に読み終えていた。
読み進めるほどに違和感は広がっていく。最初は主人公の異質さに驚き、次に彼女と同居する男のとんでもなさに呆れる。ところが読んでいるうちに、彼の言い分にも筋が通っているように思えてきて、「ああこいつ、僕かもしれない」とさえ感じるようになる。社会不適合者の会話に共感してしまう自分が恐ろしく、しかし同時にそこから目を離せない。
この物語は、楽しいわけでも、苦しいわけでもない。けれども一気に読ませる力がある。なぜか。登場人物たちの異質さに引き込まれるからだ。そしてその異質さは決して他人ごとではない。自分の中にある異質さに照らし出されていることに気づき、驚き、さらに目が離せなくなる。だから『コンビニ人間』は僕にとって「不条理の物語」として響いた。
著者は「無意識を探らないと、好奇心を刺激することがつかめない。もしかしたら小説家ではないのかもしれない」と語っていた。それにはどこか同感するものがあった。ところが実際に『コンビニ人間』を読んでみると、村田沙耶香が描き出した世界は、僕の思いとはずいぶん違う地点に立っているようにも感じられた。そのことに唖然とした。
だから『コンビニ人間』は、僕にとってただの読書体験ではない。読後に不条理の余韻を残すと同時に、僕が自分の無意識から紡ごうとしている物語を映す鏡でもあったのだ。
2025/8/25 今までにない物語
「第5の季節」はダブルクラウンに輝いた今までにない物語だということで読み始めた。確かに今までにない物語かもしれないけれど、語り方が変わっているという点が強く、物語の独自性という意味では、多くのSFの域を超えているとまでは思えない。ところがSFでも何でもない「コンビニ人間」は今までにない物語そのものだった。しかも語り口は、奇をてらった風でもなく、至って普通で読みやすい。あっという間に読んでしまった。ところが、その内容は、じわりじわりと、今までにない物語感が広がっていく。感動するとか、泣けてくるような物語ではないけれど、ドスンとじわりじわりとボデーブローが効いてくる感じだ。
「百年の孤独」も鳴物入りで登場した感があって、しかも電子書籍ではなく、本屋で山積みされているのを見て思わず衝動買いした本だった。期待して読み始めたけれど、文庫本の文字は小さく読みづらい。そして物語にもなかなか入って行けず、結局積読になってしまった。
今までにない物語は特別な世界を創出しなくても、こんなにも身近に出現しうることを「コンビニ人間」は教えてくれた。
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