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花粉の飛ぶ頃

執筆者の写真: NappleNapple

2025/1/28

 花粉症に苦しむ同僚を笑ったことがありました。くしゃみを繰り返し、鼻を真っ赤にしている姿がどうにも滑稽に思えたのです。それがいけなかったのでしょう。その翌年、私自身が花粉症になりました。人を笑うものではありません。以後、春になるたびに私は花粉に悩まされることになったのです。


 最初は鼻水と鼻詰まりがつらい程度でしたが、年を追うごとに症状は重くなり、そのうち目も開けていられなくなりました。花粉防止メガネをかけることにしましたが、サングラス仕様のものしか見つかりません。仕事中にサングラス姿というのはどうにも奇妙ですが、やむを得ず許可を取りました。その顔つきが胡散臭いと言われたのは、まあ仕方のないことだったでしょう。


 一度、思い切って鼻腔を焼く治療を受けてみたこともありました。しかし、効果はなく、むしろ鼻詰まりがひどくなり、それ以来その手の治療には頼らなくなりました。10年、20年と経つうちに、体も少しずつ花粉に慣れてきたのか、症状は落ち着いてきました。ただ、目に花粉が入るとどうしても目を開けていられなくなるのは変わりません。最近はグリセリンを鼻腔や、目の周りに塗ると良いと知り、外出時にはそれを欠かさないようにしています。それでも、できれば外出を控えるのが一番です。


 今年の花粉は早くから飛び始め、量も多いと聞きます。私は4月いっぱい外出を諦め、早朝散歩の代わりに室内で運動をすることにしました。物置から「Twist & Shape」というステップマシンを引っ張り出してきました。ずいぶん昔に買ったもので、表示部は壊れているものの、ステップを踏む分には支障がありません。試しにやってみると、思いのほかきつい。散歩よりずっと負荷がかかります。30分も続ければ、それなりに運動になるでしょう。


 ステップを踏みながら黙々と考え事をしていると、ふと妙なことが頭に浮かびます。なぜ人間はこんなふうに、自ら苦労を買って出るのでしょう。筋肉への負荷を楽しむだけで終わらせるのは、どうにも惜しい気がします。例えば、この運動で発電ができたらどうでしょう。世界中の筋トレマシンに発電機をつけたら、どれほどのエネルギーを生み出せるでしょうか。いっそのこと、負荷のかかるあらゆる装置を発電機に連動させてみたら――。


 こんな運動を通して湧き出る妄想が、私にとって日常のささやかな楽しみなのです。

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