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執筆者の写真Napple

「三体」

2021/7/20

「三体」は、異星人との戦いを描いた劉慈欣のSF三部作である。中国のSFってどんなだろうと、昨年の夏読み始め、先程完結編を読み終えた。

 三つの恒星の引力で乱れた軌道を取る三体世界の三体星人が450年後に地球侵略にやってくる。これを知った人類がどう対処してゆくのか。結末はいかに。壮大な時間を想像を遥かに超えた展開で物語る。独創的だが、時としてヤンウエンリー、ハリ・セルダン、ジュール・ベルヌ、時計仕掛けのオレンジ、2001年宇宙の旅、といった古今東西の名作を引き合いに出すあたり、小憎い演出である。


 物理学者エンリコ・フェルミが指摘した「地球外文明の存在の可能性の高さと、そのような文明との接触の証拠が皆無である事実の間にある矛盾」というフェルミのパラドックスに対する一つの回答が三体IIの中核となる黒暗森林理論だ。物語に貫かれているのは民主主義と友愛なのだが、「全てのよそ者は敵なのだから早いうちに叩いておけ。」と言う、黒暗森林が大前提というところに中国の現状が重なり恐ろしい。


 三体IIの結末があまりに鮮やかなので、これで終わりでなんら不思議はないのに、さらに何が語られるのだろうと、「三体III 死神永生」を紐とくと。上巻のあれよあれよと展開する内容に呆気に取られ、壮大な展開にその終焉には少々拍子抜け感があるが、思わず感想を書きたくなるぐらい、良くできた作品だった。西遊記や水滸伝の荒唐無稽さ、三国志のスペクタクルに引けを取らないアイデアがあり圧倒される。

 ただ、どうしても気になるのは、現代の中国で生きている人の感覚であったりする。劉慈欣氏の考えが中国を代表しているわけでは勿論ないのだが、物語のそこかしこに中国の人々の心情が現れているように思える。世界に対する認識に一抹の不安を感じたのは私だけだろうか。日本という国をどうみているかというのもなんとなく窺える。「忍者、侍、日本刀、神風。」相変わらずステレオタイプの色眼鏡だが一種の畏怖を感じているように思えた。


閲覧数:62回1件のコメント

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1 Comment


Napple
Napple
3日前

2024/11/9


 Amazonプライムで「三体」を見る。面白い。ミステリアスな感じがどうなるのだろうと期待させてくれる。まだ3話だから宇宙戦争なんてとても感じられない。ただどうなってるのって感じがいい。そして怖い。でも本を読んでいないとわからなくて面白くないかも知れない。そして原作を読んでかれこれ3年経つから、細かいディティールはこんなだったかなって思い出せない。


 「SシューターとFファーマー」「射撃手と農夫」2次元世界の科学者、七面鳥の科学者。これからどのように映像化されるのだろう。シーズン1は30話、智子計画(プロジェクト・ソフォン)まで。ほぼ1冊分かな。宇宙人との接触はその先だ。シーズン1はミステリー的な要素が強くて、解けない謎解きが続く。


 三体のゲーム映像は、本を読んだ時のイメージをよく映像化している。オープニングもエンディングも音楽が物語に同期して変化している。むしろ音楽にヒントが隠されているようだ。それにしても最後に流れるテロップは字が細かすぎてスクロールする速度も早すぎるだろ。誰も読めないよ。すごい量が流れていく。


 三体ってどんな話?、そもそも三体ってどう言う意味だろう?、そう思って検索すると、「三つの恒星の引力で乱れた軌道を取る三体世界の三体星人が450年後に地球侵略にやってくる。これを知った人類がどう対処してゆくのか。」こんな概要がわかってくる。ところがドラマ「三体」は10数話見ても検索した内容に合致するような展開が見えない。どう言うことだろう、そんな不審が芽生えた頃、パーっと話が見えてくる。


 ファウンデーションは話を知っていても何をやっているのかわからなくなることが多く、ついには見る気が失せていった。モナークは初めて見る物語で新鮮な気持ちで見た。日本が大きく関係するところが嬉しい反面、話に深みがない。三体は面白い、話を知っているからついていけるところはあるにしても。話の深みといい着想と言いつい続きを見たくなる。


 本編は中国語で語られるが、日本語が聞こえるシーンが数箇所ある。不思議と日本語はすぐに聞き分けることができる。ブレードランナーもそうだった。


どんなふうに映像化されるだろうと楽しみにしていたシーンがいくつもある。


  • 三千万の人力コンピューターシステムの映像化は面白い。

  • 審判の日号が引き裂かれるシーンは見事。

  • ソフォンの映像化もすごいが、結局何がどうなっているのかわからなかった。


 ゲーム世界の映像はいかにもゲーム画像というCGになってる。それはあえてしているのだろう。その点現実世界の映像でCGによるもの、たとえば紅岸基地や審判の日号切断シーンはCDだと思うがとてもリアルだ。


 圧倒的な人類の不利が明らかになったところで、最後のイナゴの飛翔する大地での演説は素晴らしい。物語の続きを知っているから楽しめたが、先を知らない人は、この終わり方では釈然としないだろう。

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