地震のあとで
- Napple
- 7 時間前
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2025/4/27

誰のものでもない村上春樹
ドラマ「地震のあとで」
村上春樹の小説を映像化した連作に
僕は期待を抱いていた
マッキントッシュが並ぶオーディオショップ
そこに、ほんの少し惹かれた僕がいた
物語の始まりは、いつだって重要だ
だけど
地震のニュースに魅入る女と
そのそばにいる男
ただそれだけの時間が、延々と流れる
待つべきか
離れるべきか
迷いながら
それでも見続けた
唐突に、女は去った
置き手紙ひとつ
「あなたの中に私に与えるものが何一つない」
そして、僕は気づく
このオーディオを手入れする男に
どこか自分を重ねていたことに
物語は
始まったのか
それとも
ただ流れ去ったのか
わからないまま
第一話は終わった
⸻
それから
次の物語、またその次の物語へと進んだ
焚き火を囲むおっさん
家出した少女
静かな時間
空々しい他人事
生々しすぎる映像に
僕は馴染めなかった
村上春樹の物語を読むとき
僕の中に
自分が登場する物語が生まれていた
けれど
映像化されたそれは
どこまでも「他人」のままだった
⸻
僕は、考えた
村上春樹に関する公式
それはこうだ
僕の読んだ村上春樹=僕の村上春樹
誰かが読んだ村上春樹=誰かの村上春樹
だから
僕の村上春樹≠誰かの村上春樹
読む者それぞれが
自分の内に作り上げる村上春樹
それを映像で、共有することはできない
そう思った
⸻
そして
最後の物語がやってきた
「カエルくん、東京を救う」
異形のカエル
不思議な存在
なのに
驚くほど自然に
僕は物語に入り込んでいた
期待しなかったからか
それとも
物語そのものが
最初から「誰のものでもない村上春樹」だったからか
重なり合うことを拒まない物語
ただ、そこにいる物語
僕は知った
公式は、絶対じゃない
すれ違うこともあれば
重なることもある
⸻
物語は
与えられるものではない
いつも静かに
心の奥で
見つけるものだった
⸻
ありがとう、村上春樹
ありがとう、誰のものでもない物語
ありがとう、地震のあとで
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