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執筆者の写真Napple

平井和正

更新日:5月23日

2023/1/25


 平井和正との出会いは「ウルフガイシリーズ」が最初だった。

私が出会った平井和正の作品。

  1. 1968年:メガロポリスの虎

  2. 1969年:アンドロイドお雪

  3. 1969年:狼男だよ

  4. 1971年:サイボーグ・ブルース

  5. 1971年:超革命的中学生集団

  6. 1971年:狼の紋章

  7. 1972年:狼の怨歌

  8. 1973年:狼よ・故郷を見よ

  9. 1973年:魔境の狼男(リオの狼男・人狼地獄編)

  10. 1973年:死霊狩り1−3

  11. 1974年:狼は泣かず

  12. 1974年:人狼戦線

  13. 1975年:狼のレクイエム1−2

  14. 1975年:怪物はだれだ

  15. 1976年:悪霊の女王

  16. 1976年:人狼白書

  17. 1976年:ウルフランド(狼の世界)

  18. 1978年:人狼天使1−3

  19. 1978年:新・幻魔大戦

  20. 1979年:真・幻魔大戦1−11

  21. 1979年:幻魔大戦1−20

  22. 1979年:若き狼の肖像

  23. 1987年:狼のバラード

 

 子供時代に大好きだった「8マン」や「幻魔大戦」の原作者だったことを知ったのは、「ウルフガイシリーズ」を読んでからだった。軽快で読み心地の良い彼の作品をがぶ飲みするように読み始めると、「ゾンビーハンター(死霊狩り)」に登場する林石隆が「超革中(超革命的中学生集団)」や「ウルフガイ」にも登場するなど、深みを増してゆく平井ワールドにどっぷりハマってゆく。楽屋落ちや内輪受けする内容こそオタク文化の始まりだったのだろう。


 ウルフガイシリーズでハードボイルドに出会ったわけだが、平井さんにすると大藪春彦がいたからだったと聞き、大藪春彦の作品にも手を出した。なるほどそうかーと思っていると、その大藪春彦はレイモンド・チャンドラーがいたからだという。そこでチャンドラーを読む、そんなふうに読書対象が広がって行った。大藪春彦レイモンド・チャンドラーも面白かったが、結局平井和正ほどのめり込むことはなかった。

 

 ある日、結末が気になって仕方がなかったあの「幻魔大戦」が復活した。それは「新・幻魔大戦」と題されていた。狂喜して読み始めてしばらくすると「真・幻魔大戦」が登場し、さらに「幻魔大戦」が登場する。似て非なるパラレルワールドが林立している。とにかく読み続けてゆくのだが、日々が過ぎて書店に新刊が登場しなくなりまたしても結末を得ないまま見失ってしまった。


 はちゃめちゃとハードボイルドで人類批判的な平井さんが、幻魔大戦では神妙になり「人類ダメ小説家」にピリオドを打つ。今までただ楽しく読んでいただけだと思っていたが、どうやら作者と一緒に成長していた自分は、「幻魔シリーズ」にとても大切なことが語られていると感じていた。それは時を同じくして出会った宗教であったりしたのだろう。平井さんも宗教的な出会いがあって作風に変化が生じていたのだ。


 未消化なものを残しつつ時間が色々なことを希釈して、我が物として熟成したかのような気になっていた。果たして本当に熟成したのだろうか。この世のカラクリに触れたような気になっていただけかもしれない。結末を見ずに終わっている「幻魔シリーズ」は「ハルマゲドンの少女」「ハルマゲドン」と語られ、2000年を過ぎて「幻魔大戦deep」「幻魔大戦deep トルテック」が執筆されていることを知った。ちょっと気が重いが読んでみるしかない。


 

 エイトマンヘの鎮魂歌     平井和正


 エイトマンのことを書きたいと思う。エイトマンといえば、かつて一世を風靡しながら、ある関係者の拳銃不法所持などというスキャンダラスな事件によって、マンガ史から消去された作品である。なにしろ天下の大新聞に〈エイトマン逮捕さる!〉とばかり、かなり凶悪な煽情主義の好餌にされてしまったのだからたまらない。事件にはまったく無関係の原作者の僕まで巻添えをくって謹慎を強制される破目に陥ってしまった。カフカの主人公ならずとも、「不条理だ!」と、叫びたくなったものである。

 しかし、いまさらその怨みごとをならべようという気はない。作家にとって怨恨はよき肥料となるし、いずれもとをとるつもりだからである。

 では、なぜエイトマンのことなぞ書こうとするのか? いささか屈折した感慨を持ちつつ、SFマガジン一九六九年二月号覆面座談会から引用することを、諸関係者の方々にお許し願いたい。・・・以下略


 これは平井さん自身が「エイトマン」について語った一部だ。桑田次郎が拳銃不法所持で騒がれ、エイトマンという物語自体まで否定された時期があったのを覚えている。読者として歯痒い思いをした。当然原作者はもっと不条理を感じていたのだ、ということを、彼の言葉で聞いて、長らく支えていた溜飲が降りた。エイトマンは今も大好きな物語なのだ。


 
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