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美しさというものについて

  • 執筆者の写真: Napple
    Napple
  • 4月5日
  • 読了時間: 1分

2025/4/5


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美しさとは、なんだろう。

ただの好みの違い――そう言ってしまえばそれまでだが、

桜が咲いたとき、

人は、だいたい「きれいだね」と言う。

誰に教わったわけでもないのに。

それはもう、主観と呼ぶには少し整いすぎていて、

かといって、客観というには、あまりにかすかで、

空気のようで、風のようで、

言葉の間にこぼれる水のようだ。

あるいは、たくさんの人の心が

同じ方向にふるえる瞬間のことを、

私たちは「美しい」と呼んでいるのかもしれない。

そう思ったとき、

量子の話を思い出した。

観測されるまで揺れていた粒子が、

誰かの眼差しによってひとつの姿をとる――

あの、小さな不思議。

桜の下でも、似たことが起きているのではないか。

人の心が、ゆっくりと

同じ波にふるえはじめて、

どこかで「きれいだ」と、そっと収束してゆく。

それは誰の中にもあるけれど、

誰のものでもない。

名付けえぬもの、

けれど、確かにそこにあるもの。

共鳴的な主観。

あるいは、美の共振場。

そんなふうにしか言えないが、

それでも私は、

桜が咲くと、やはりきれいだと思うのだ。


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