2015年7月2日
2014年5月26日iTunes Match の利用を開始した。これはiTunes Storeで購入した曲やCDからパソコンに取り込んだ曲などをクラウド上に保存して、いつでもネットに繋がっていればダウンロードできるサービスであった。とりあえず使ってみたがメリットは感じなかった。
2015年7月1日にApple Musicが始まった。定額でiTunesのほとんどの曲を利用できるストリーミングサービスだ。サービス開始当初これほどハマるとは思わなかった。Apple Musicなしでは過ごせない。
その魅力
エンドレスの幸せ:CDやレコード、テープなどの時代は頻繁なメディアの交換が当たり前だった。いまではメディアを沢山持つ必要もなく、何時間でも何日でも聴き続けられる。終わりなく再生してくれるラジオもある。
若い頃買えなかったアルバムが手に入る幸せ:好きなミュージシャンでさえアルバム全てを持つことは叶わなかった。ましてちょっと気になるぐらいではアルバムを手に入れることは難しかった。今やかつて気になったミュージシャンのアルバムを片っ端から聴くことができる。知らなかった名曲や、忘れていた曲を見出す喜びは計り知れない。この歳になてようやくYESのアルバムを貪るように聞いた。
探せる幸せ:読書をしていると、物語の中で色々な楽曲が登場する、例えば「蜜蜂と遠雷」では沢山のピアノ曲が文章で表現されている。読んでいると、聴きたくなる。そんな時さっと聴くことができる。
聴き比べられる幸せ:例えば「牧神の午後への前奏曲」をAppleMusicで検索するとベルリン・フィル、チェコ・フィル、シカゴ交響楽団、東京交響楽団、日本・フィル等演奏者が違うアルバムが見つかる。じっくり聴き比べてお気に入りを探せるのだ。こんな贅沢今までなかった。
どこにいても聞ける幸せ:部屋にいるときは、MacやAppleTVで、車で移動するときは車載スピーカーで、車を降りればAirPodsでシームレスに音楽を楽しめる。かつて車で音楽を聴くときはカセットやMDでお好みの音楽集を用意したり、その後ミュージックサーバーが登場すると、沢山の曲を聴けるようになったが、一旦車のサーバーに取り込む必要があった。今やiPhoneを持ってさえいれば、いちいち取り込む必要もない。場所を選ばずに音楽を持ち出すことができる、魔法のようだ。
知らなかった曲を発見できる幸せ:自分好みの音楽を提案してくれるサービスは、知らなかった多くの曲を知るチャンスを与えてくれる。冒険をして、聞いたこともないような曲を気軽に聞いてみることができる。
PlayListを自分で作る幸せ:お気に入りの曲をカセットに録音した時代があった。同じことをもっと手軽に、PlayListにして楽しむことができる。好きな音楽を好きなリストにすることができる、かつてカセットに録音したようなテープに収まるよう曲の長を気にする必要もなければ、ダビングの時間も必要ない。フォルダに好きな曲を放り込んで、好きなように並び替えれば良い。ユーザーどうしでPlayListを交換し合うこともできる。お気に入りの曲を集め、まったり自分の好みを聞けるのがありがたい。
ミュージックビデオを見れる幸せ:はじめは少なかったが、どんどん増えてきたミュージックビデオ。ビートルズのビデオクリップやマイケルジャクソンの「スリラー」もフルバージョンで見ることができる。
行き届いたサービスの幸せ:Appleのサービス対応はピカイチだ。MacでもiPhoneでも画面共有ができるので、問題を的確に伝えることができる。ほとんど待たされないし、今のところ問題を100%解決してくれている。とにかく「できません」という言葉を聞いたことがない。気持ちよく製品を使わせてくれる。
大切なデータを失わない幸せ:メディアを持つと失う可能性がある。現に父は伊勢湾台風でクラッシックのコレクションを失った。Apple Musicを利用している今、もしものことがあっても、失うことはない。
今聞けないミュージシャンも聞けるように:4500万曲という膨大な音楽が楽しめるわりに、聴きたい曲が見つからない場合がある、世の中にはなんと音楽が多いかと改めて驚かされる。中島みゆきや森田童子のアルバムが聴きたいのだがまだ聴くことができない。
ライナーノーツや内ジャケットの絵も見たい:かつてレコードやCDには必ずライナーノーツが付いていた。歌なら歌詞が付いていたし、裏ジャケット、内ジャケットの絵や写真は楽しみを倍増させてくれた。そもそも、レコードだけじゃなくて、ジャケット込みで作品だったはずだ。最近歌詞がついているものも増えてきたが、是非ともこれらの情報をつけてほしい。YESのアルバムの絵を楽しませてほしい。
ハイレゾへの対応:これは、じきににそうなってしまうだろう。
サービスの継続:契約を継続する限り、全ての曲は手元にあるのと同じだが、契約を打ち切ると、購入していない曲は、聴くことができなくなる。3年使って見て、家計への影響はほとんどなく、契約を打ち切ることは考えられない。むしろ、そんなことはないと思うがAppleがサービスを継続しなくなる場合が恐ろしい。いつまでもサービスを続けてほしい。止めることは考えられない。
他の定額聴き放題のストリーミング配信サービス
Apple Music以外にもたくさんあるが。Apple使いにとってApple Musicが最も親和性が高く、使い心地がいいので、他のサービスを検討する必要性さえ感じない。
Deezerを利用してみたが、Apple Musicの方が格段に使いやすい。
日々進化するサービスをたっぷり楽しませてもらっている。
ストリーミングサービスの功罪
1990年代に数年間有線放送を利用したことがある。非常にたくさんのチャンネルがありストリーミングサービスに似たところもあるが、持ち出しができるわけではないし、決定的な違いは、検索ができず、好きな時に好きな曲が聴けないことだった。結局使わなくなってしまった。
ストリーミングサービスは一度使うと手放せなくなる。今やCDが売れなくなり、アメリカではタワーレコードが全店舗閉店に追い込まれたという。
私も手持ちのCDは取り込んでしまい、CDプレーヤーを使うことはない。手持ちのCDを聴く機会はほぼなくなり、片付けても差し支えない状態だ。置く場所に困ってさえいる。今後CDを買う気はない。
かつてレコードやCDを購入して持つ喜びがあった。
レンタルショップの登場でその喜びは希薄になった。
ダウンロード配信が始まると、メディアを持つ意味すらなくなってしまった。
ストリーミング配信による聴き放題は、いながらにして全ての音楽にアクセスできる快感をもたらし、所有する喜びに打ち勝ってしまった。すでに全てを所有しているのであり、これから発表される新曲さえ含まれているのだ。
かつてジャケ買いした時代もあるけれど、今やどんどん聞きかじって気にいった曲は何度でも聴くけれど、そうでもない曲は聞かない、好き嫌いがはっきり反映される。ミュージシャンにとってこのシステムはどうなのだろう。
ユーザーとしては使用料を払っているので、違法コピーを聞いたり、レンタルを聞いたり、友人にダビングしてもらったものを聴くといった後ろめたい気持ちを、一切持たずに音楽を純粋に楽しめる。
ユーザーにとって嬉しいように、ミュージシャンにとっても嬉しいシステムであってほしいと願う。
音源としての価値
かつて音源はレコード、テープ、CD、DVD、MD、BD、SACDなどのメディアで所有した。ちょっと前ならネットワークオーディオも魅力的に見えたのだが。ストリーミングデータが利用できるようになった今。それらは魅力を失ってしまった。リッピングする手間や、大量のデータを管理するサーバーを用意したりバックアップをする必要もない。音質が問題とされるのだが、聞いていて問題だとは感じない。特にデジタル音源は、技術の進歩に伴い、音質の改善がされている。ストリーミングデータは時代とともに品質が良くなる可能性がある。ところが物理的に持っているデータは劣化したり傷つける事はあっても、よくなる可能性はない。変わりようがないのだ。
音源データを持たずに、音源データを自由に利用できるというのは魔法のようなことだ。日々増えるコンテンツを楽しむこともでき、管理する必要もなく、まだ途上ながらも音質は日増しに向上するだろう。
不思議なことにアナログレコードはまだ聞いてみたいと思うが、もうCDもSACDもNASも必要だとは思わない。
気に入ったアルバムはデバイスにダウンロードすることができるため、ネットワークに繋がらない場所でも聞くことができる。256GBのiPhoneはずいぶん曲をダウンロードしたつもりでもまだまだ余裕がある。
Apple Musicで採用されているのは最大ビットレート256kbpsのAACという不可逆圧縮フォーマットで、ハイレゾではない。音質傾向は、ビットレートの低さや圧縮に伴うダイナミックレンジや周波数レンジの狭さを感じさせないために、全体的にエネルギー感を上げているような印象だという。
Home Podは音楽を継続的に分析し、滑らかで臨場感のある音を実現するために、低域を動的に調整する、高度なアルゴリズムを採用している。「音楽を継続的に分析し」のところが曖昧で、実際のところ、何をどこまでやっているのかよくわからないのだが、スピーカーが再生し、反射して返ってきた音をマイクで拾い、元の音源データと付き合わせることで、音質を高めている。つまりAppleは音を加工しているのだ。そういう意味ではピュアオーディオのソースとしては適さないのかもしれない。
Appleを受け入れている者は、より良いものを提供しようとしている企業姿勢を評価しているし。だからこそ受け入れるに至ったわけだ。すでに現状の音質を受け入れ満足している者にとって、今後さらに音質が向上するのは喜ばしいことであって、決して現在の状況を嘆いてはいない。
Apple Musicを音源とするメリットこそあれデメリットなどありはしない。
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Apple Musicは全てではないが歌詞を表示できる。曲の進行に合わせて、歌詞がスクロールし、現在演奏中の歌詞が強調表示される。また歌詞をクリックするとそから演奏を聞くこともできる。レコードジャケットを見ながら演奏を聴き、歌詞を見ることができるこの機能は素晴らしい。
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