2024/12/7
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序章:放浪社のはじまり
1980年代初頭、とある大学の一室。仲間たちは西陽が差し込む部屋に集まり、ワクワクとした空気の中で「放浪社」のアイデアを語り合っていた。「まずはお揃いの制服を作ろう。それを着て南の街を歩きながら、何をするかみんなで決めればいい!」と誰かが言うと、みんなは笑顔で頷いた。
彼らは自由を愛し、自然を愛し、そして街を愛した。モシカモシカという奇妙なマスコットを生み出し、それを自分たちの象徴にした。モシカモシカは「もしかしたら、できるかもしれない」という希望の塊だった。誰もが「いつか本当に飛ばせるかも」と思いながら、真剣に夢を描いた。
だが大学生活も終わり、放浪社のメンバーは散り散りになった。仕事や家庭、現実の忙しさが彼らを飲み込んでいく。
第一章:有限会社放浪社
30代半ばで会社員生活を辞め古びた事務所を借り「有限会社放浪社」を立ち上げた者がいた。理念はシンプルだ。「放浪社は、あなたの夢を叶えるお手伝いをします。」
初めてのプロジェクトは「イカした制服を作ること」。依頼主は友人の経営する小さなカフェで、スタッフのユニフォームをデザインする仕事だった。かつて語り合った夢を思い出しながら、モシカモシカのロゴを胸にプリントしたシャツを提案。これが思いのほか好評で、徐々に仕事は広がっていった。
放浪社は単なるデザイン会社ではなく、人々の小さな夢を形にする場所になった。バンドのロゴ、子ども会の旗、街のマラソン大会のトロフィーなど、依頼は多岐にわたった。どんな小さなプロジェクトも全力で応えた。なぜなら、それが仲間と語り合った「夢を叶える」という約束の延長線だったからだ。
第二章:モシカモシカが飛ぶ日
ある日、一通の手紙が届いた。それは、かつての放浪社メンバーの一人からだった。彼は家族旅行で訪れた自然公園で、鴨と鹿をモチーフにしたアートを見つけ、モシカモシカを思い出したのだ。「まだ夢を追ってるか?」と書かれた短い一文があった。
「いつかモシカモシカを空に飛ばしたい。」かつて語ったこの夢を形にするため、ドローンを使ったプロジェクトを立ち上げた。地元の子どもたちや、かつての仲間たちを巻き込んで、ドローンで夜空にモシカモシカが飛ぶ姿を描くイベントを企画した。
イベント当日、夕焼けの空にモシカモシカがふわりと飛び立つと、集まった人々から歓声が上がった。その瞬間、大学時代の仲間たちと夢を語り合った日々が蘇る。夢を共有する力、そしてその夢を一緒に叶える喜び。それは、歳を重ねた今でも変わらない。
終章:夢のその先へ
イベントが成功した後、新たなプロジェクトに着手する。今度は、かつて語った「ログキャビン」や「クルーザー」の夢を叶える番だ。放浪社は人々の夢を叶えるだけでなく、仲間たちの夢をもう一度呼び覚ます場所になった。
放浪社とは、夢を共有し、叶えるための小さな奇跡の場だと。そして、その奇跡は仲間がいる限り、どこまでも続いていくのだ。
モシカモシカのロゴを描いたトレーナーを着て、今日も事務所で夢を描く。「次はどんな放浪をしようか。」そんなワクワクした気持ちを胸に。
「放浪社」完
あとがき
こんな物語があったらなと。
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