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執筆者の写真Napple

七草粥の日、本屋について思うこと

更新日:5月25日

2023/1/7


 お粥を炊いて、塩漬けされた桜の花びらと一緒に、フリーズドライされた七草粥の元を入れた。ほんのり桜と畳のような香りを楽しみながら季節の風物を楽しんだ。昔からある風習だけど、実際に七草粥を食すようになったのは、フリーズドライのセットを見つけた最近のことだ。


 さて、久しぶりに本屋に寄った。ワクワクしながら店内を見回ったが、読みたいものが見当たらない。なんだか昔感じた感覚とは違っている。本という紙の集合体の物理的な質感が持つ魔力はあるけれど、何か違う。書店はかつて宝の山だった。読みたい本がたくさんあって、次はあれを読もう。そう思っているうちに新しいのが次々に登場して、読む機会を逃した本で溢れかえっていた。同じように本がたくさんある図書館はちょっと違う。どこか標本箱のイメージ。本屋の活気はなくなり墓地の静けさがある。近所に図書館ができて喜んだはずなのに一度しか利用していない。

 手触り、匂い、重さ、表装の風合い、開いた時の感触とか、本棚に並んだ集団的本達の持つ雰囲気や、迫力など、感覚的な事柄では物理的な本に勝るものはない。でも文字も絵も電子媒体で見ることが多くなった。拡大できるおかげで、視力の低下を気にせず読むことができるし、気軽にマーキングしたり、検索したり、見たい時にすぐに手に入る手軽さや、あまり使っていないが、読み上げてもらったり、翻訳してもらうこともできる。入手しても場所を取らないなど、電子媒体はありがたい機能に満ちている。物理的な本は、ものを所有する魅力に比重が移り、読むということに関しては電子媒体が優れているかもしれない。


 電子媒体で情報を得ることが日常となり、おすすめの本や新刊情報を目にすると、その場で検索して、気になるものは立ち読みして、面白そうなら購入している。購入した本は、PCの大きな画面で読むこともできるし、携帯端末で寝転びながら、あるいは出先で読むこともできる。購入日や読書日などの記録も自動的に溜まり、本棚を眺めるように、本を画面に並べて眺めることもできる。いつでも全てが手元にある手軽さ。かつて書店で手に入れていた情報が、いつでも手に入るようになり、本屋の魅力が本屋に行かなくても得られるようになってしまった。だから、本屋に昔のようなワクワクを感じなくなってしまったのか。


 極端なことを言えば、ちょっと前まで、図書館や古本屋は過去を、本屋は現在と未来を手に入れることができる唯一の場所だった。今やネットにどちらもある。何もかもがある、そんな勘違いをしてしまいそうだ。実際はまだ、全ての本が電子媒体になっているわけではないから、検索してもどうしても見つからないものがある。でもそのうちに本当にネット上にないものはない日が来るだろう。そうなるとより一層本屋や図書館に行かなくなってしまう気がする。でも旅先の本屋は覗きたいし、国会図書館には行ってみたい。


 季節の風物といい、本屋といい、時代が変わっているのを感じた日だった。


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1 Comment


Napple
Napple
Jan 07, 2023

行ってみたい図書館


https://diamond.jp/articles/-/315448


角川武蔵野ミュージアムも行ってみたい。


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