2024/12/14
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「路地裏」と聞くとなんだか懐かしい。不思議と時間の流れを止める力がある。大通りの光を一歩逸れると、そこは静けさと喧騒の狭間にある別の世界のようだった。シャッターの下りる音が、ひそやかに一日の終わりを告げる。ラーメン屋のスープの匂いが、ほっとした温もりを運んでくる。学生時代、くたびれた身体を引きずりながら辿る夜道も、彼女と並んで銭湯へ通う道も、いつの間にか暗がりの中に染み込んで、そんな記憶が懐かしさと共に込み上げる。ごちゃごちゃとした景色の向こうに、確かにあった時間。それはまるで、路地裏だけに漂う、ひそやかな青春の香りのようだ。
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