2023/1/25
彼との出会いは「石の血脈」が最初だった。
大学時代、角川文庫は元気がよく美しい背表紙が多かった。そんな中で一際目を惹きつけたのが半村良だった。たくさん並んだ中でなぜ「石の血脈」を手に取ったのか思い出せない。偶然だったのだろうか、書評を読んで興味を持ったのか。ようやく本を読む楽しさを知り、分厚い本でも読める気になっていた時だった。血脈とか秘録とか伝説といった言葉に惹かれたのかもしれない。よし半村良を読むぞと決意して「石の血脈」を読み始めると、その面白さに勢いづいて、またしても分厚い「産霊山秘録」に手を伸ばし、次々と彼の小説を読んでいった。
私が出会った半村良の作品。
1971年:石の血脈
1973年:産霊山秘録
1973年:黄金伝説
1973年:英雄伝説
1974年:闇の中の系図
1974年:亜空間要塞
1974年:戦国自衛隊
1974年:男あそび
1974年:平家伝説
1975年:亜空間要塞の逆襲
1975年:妖星伝 1ー7
1975年:雨やどり
1976年:闇の中の黄金
1977年:邪神世界
1977年:獣人伝説
1978年:魔女伝説
1978年:闇の中の晎笑
1980年:太陽の世界 1−14
1986年:楽園伝説
日記に綴られた半村良にまつわる思い。
2013/8/30
半村良の「石の血脈」を読んでいる。何度目だろうか。
2013/9/6
1:00 「石の血脈」半村良著を読み終える。少なくとも3回は読んでいる。年を重ねたためだろう、若い頃の身悶えするような思いはさほどわかなかった。
「石の血脈」は、いつか自分が辿るかもしれない道のりのように思う、倒錯した感覚を持ちながら読んだ不思議な物語だった。それは、失踪した妻を探す男が、巨石文明とかアトランティス文明や北欧神話が絡み合い、吸血鬼や狼男、魔女やサバトといった愛欲の渦巻く不思議な出来事に遭遇してゆく。そこには強大な権力といにしえからの力が働いていた。という、サスペンス的で幻想的で伝奇的でSF的で官能的でファンタジー的でと、今までに読んだことがない種類の物語だった。このなんでもありの物語こそ、半村良の処女作だった。彼は長かった下積み生活を生かした人情小説や、奇想天外な物語を巧みな話術で語りかけ、不思議な世界へ誘ってくれる。1970年代昭和真っ只中だった。
「妖星伝」を読み始めると、暴力的かつ官能的な展開にクラクラしながら飲み込まれて行った。物語はどんどん膨らんでゆきどうなるのだと楽しみにしていると突然途切れてしまった。20年の時を経た1995年、ある日、本屋で見覚えのあるタイトルが新刊として並んでいた「妖星伝」の最終巻だった。壮大な終局にホッとしたような物足りないような気持ちになった。同じように進展を楽しみにしていた「太陽の世界」は未完のまま終わった。
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