怪人案単多裸亜
- Napple
- 2024年12月6日
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2024/12/6

静かな街に不意に起こる喧騒。その中心に現れる謎の存在、怪人案単多裸亜(かいじんあんたんたらあ)。「あんたんたらあ」とだけ呼びかけてくる奇妙な男。彼の存在は、ただの偶然なのか、それともこの世界の何かを体現しているのか。
第一章:夜の騒動
冬の夜、冷たい風が街を吹き抜ける。人気のない公園の片隅で、二人の男が激しい口論をしていた。一人は中年のサラリーマン風、もう一人は学生らしき若者。互いの言葉がヒートアップし、ついには拳が振り上げられたその瞬間——。
「あんたんたらあ」
どこからか、その声が聞こえた。二人が振り返ると、そこには薄汚れたコートに身を包んだ男が立っていた。年齢不詳。目元はどこか穏やかだが、その存在感は得体が知れない。
「なんだお前は?!」
サラリーマンが怒鳴ると、男は近づいてきて、ポケットから何かを取り出す。それはコンビニで売っている安物の飴だった。
「これね、意外と、あったかくなるんだよ。」
唐突にそう言って飴を二人に差し出す。サラリーマンも学生も呆気に取られたが、気づけばなぜか飴を受け取っていた。そして二人は口に入れると、口論していた内容が急にどうでもよく感じられてきた。
「あんたんたらあ、何をそんなに焦ってる?」
男はそうつぶやくと、くるりと背を向けて去っていった。
第二章:彼の正体
喧嘩を収めようとしているわけでも、何かを説こうとしているわけでもない。彼の言動はまるで筋が通らない。だが、なぜか心に残る。そして、その場にいた人々の感情の波がスッと鎮まるのだ。
街の噂では、「案単多裸亜」は天使か、あるいはただの奇人だと言われている。だが、彼を追うジャーナリストの羽咲は、彼の行動に何かの法則があると考えていた。
羽咲は彼を何度か目撃したことがあるが、彼の言葉には不思議な力があることを確信していた。例えば、こうだ。
「人間なんて、いつも面白いね。まるで、雪を食べて水だと怒る子供みたい。」
彼が喧嘩の最中に放ったその言葉に、当事者たちは自分たちの怒りがばかばかしく感じられ、笑い出したという。
第三章:事件と介入
ある日、街を揺るがす大事件が発生する。地元の政治家と実業家の汚職疑惑を巡る対立が暴露され、大規模な抗議デモが起きた。怒号とプラカードが飛び交う中、広場の片隅にまたしても案単多裸亜が現れる。
彼はデモ参加者の一人に近づき、こう尋ねた。
「この看板の字、君が書いたの?」
「え?……あ、そうだけど?」
「ずいぶん力強いね。でも、君、字を書くとき、いつもこうやって力入れる?」
その一言に参加者はハッとする。怒りで振り回されている自分に気づいたのだ。
次に彼は反対側に立つ警官隊の隊長に近づき、こう言った。
「あなたは、お父さんに怒られるとき、どんな顔をしてた?」
隊長は一瞬戸惑った後、幼少期の記憶を思い出し、なんとも言えない表情を浮かべた。
デモはその日、なぜか大きな衝突もなく自然解散に至った。
最終章:彼の役割
案単多裸亜はどこから来て、どこへ行くのか。誰も知らない。彼はただ人間の営みに惹かれ、そしてその些細な感情を面白がるようにそこに現れる。
羽咲はついに彼に直接問いかけた。
「あなたは、何者なんですか?」
案単多裸亜は少し考えた後、答えた。
「わたし?わたしは、ただの、覗き見好きさ。」
そう言って彼はふわりと笑い、再び雑踏の中へと消えていった。
この物語は、案単多裸亜という存在が人間の根源的な感情に触れ、私たちに大切な何かを思い出させてくれる様を描いています。彼は善悪を判断する者ではなく、ただ心に響く一言を残す観察者。あなたは、案単多裸亜に出会ったら何を感じるだろうか?
「怪人案単多裸亜」完
あとがき

高校生の頃ラジオばかり聴いていた。ある日「ヘゲナとガガンボ」というラジオドラマが始まる。そこに「かいじんあんたんたらあ」が登場する。どんな物語で、彼がどんなだったか全く覚えていない。ただその名前が記憶に残った。そして彼を幾度も絵に描くようになる。こいつはいった何者だ?だんだん知りたくなる。しかし答えはどこにもない。そこで自分で彼のことを書くことにした。
補足
「あんたんたらあ」とは三河弁で「あなたたち」と言う意味。名古屋弁だと「あんたんたあ」になる。
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