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思いを奏でる

  • 執筆者の写真: Napple
    Napple
  • 3月13日
  • 読了時間: 2分

2025/3/13

 音というものを奏でてみたいと思ったのは、いつのことだったか。ギターを手に取ったこともあったし、ハーモニカを吹いたこともある。しかし、どれもしっくりとはこなかった。好きな曲を真似てみても、それは誰かの音楽であって、どうにも「自分の音」という気がしないのである。


 それならば、と、別の方法を試してみた。アプリを使えば、指一本でループサウンドが作れたし、音を組み合わせるだけでそれらしい旋律もできた。プログラムを組んで、機械にランダムな音を出させたこともある。しかし、それもやはり「私の音楽」ではなく、どこか借り物のように思えた。


 結局、私は楽器を並べて、それらを順に鳴らしてみることにした。ディジュリドゥ、カホン、タンクドラム、パンフルート。気の向くままに叩いたり、吹いたりする。それらを録音して、あとから重ねてみると、意外にもしっくりきた。旋律らしい旋律はないが、それでも、これは確かに「私の音」だった。


 AIを使って音楽を作ることも考えた。「静かな森の朝」や「未来都市の喧騒」などと入力すれば、それらしい音楽を作ってくれるという。しかし、それは本当に「私の音」なのだろうか。AIに作らせた音楽を聴いて、「これは私の音楽だ」と思うことができるのだろうか。


 それよりも、私はやはり、楽器を前にして、手を動かしながら音を探すほうが性に合っているらしい。録音した音を並べたり、少しずつ整えたりしていると、不思議と形が見えてくる。ああ、こういうことをやってみたかったのだなと、ふと思う。


 昔、こうしたことに憧れていた。けれど、そのころは機材をそろえるのも大変で、結局、途中で諦めてしまった。今は、スマートフォンひとつで録音も編集もできる。便利になったものだ。便利になったぶんだけ、失われたものもあるのかもしれないが、それでも、こうして音を紡ぎながら、何かを確かめている自分がいる。


 思いを奏でる。そんなことができるのかどうか、よくわからない。けれど、楽器を鳴らしていると、かすかにそれらしい手応えがあるような気がするのである。


My Song 7 take2

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