ものの位置
- Napple
- 4月19日
- 読了時間: 2分
2025/4/19

身の回りの道具というのは、時に思いがけず、心の在りかを映してくれる。たとえば引き出しの中に収まっている文房具や、いつも決まった場所に置かれているハサミやボールペン。そうしたものたちは、ただそこにあるだけで、私を安心させてくれる。
道具には、それぞれ「居場所」があるように思う。使うたびに戻されるその場所が、道具にとっての家のようなものだ。そこに収まっている姿を見ると、なんだか心の中の景色も整ってくる。逆に、何かがずれていたり、いつもと違う場所に置かれていたりすると、それだけでどこか落ち着かない。
そんなことを思うのは、私がきっと、道具好きだからだろう。眺めるだけで嬉しくなったり、持ち上げたときの重みや質感に、心がほどけたりする。そしてそれがきちんと収まる場所にあるとき、私は自分の中にも、秩序のようなものを感じるのだ。
けれど時には、そんな道具たちが居場所を失って、机の端や床の片隅に身を寄せていることもある。はみ出した物たちは、まるで心のざわつきをそのまま現しているようだ。
物の位置。それは物のための位置であると同時に、自分の気持ちの位置でもある。だから、整えるということは、ただ片付けるということではない。静かに耳を澄ませながら、物と気持ちを、そっと元の場所に戻すこと。
きっと私は、今日もそれを繰り返しながら、自分の暮らしの輪郭を確かめている。
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