彼方からの音
- Napple
- 2月24日
- 読了時間: 2分
更新日:3月8日
2025/2/24

前書き
星の光が何万光年も届くように、音もまた、何万年も昔の音が届くことはないのだろうか?もしそうならば、とても素敵だ。でも、もしもそんな音があふれていたら、世界は騒がしくて仕方がない。きっと、光が遠くから届いたからといって眩しすぎることがないように、音もまた限りなく小さいのだろう。ただあまりに微かすぎて、誰にも聞き取ることができないだけ——。
それでも、確かに音の波はそこにあるかもしれない。そして、時折、そのかすかな音を耳にする人がいる。そんな想像から生まれた物語。
その音は、確かに届いていた
遥か昔、誰かが奏でた旋律。誰かが笑った声。誰かが呟いた愛の言葉。
それらは時の彼方へと消えてしまったわけではなかった。ただ、誰の耳にも届かないほど微かになり、世界のどこかに漂い続けていただけなのだ。
そのことに気づいたのは、年老いた一人の男だった。彼の耳は、最近耳鳴りがする。最初は、気のせいだと思った。しかし、ある日、彼は気づいてしまった。そこには言葉や旋律があり、あまりにも明確で、あまりにも懐かしいものであることに。
彼は、長い間亡くなった友の声を聞きたいと思っていた。静かな夜、耳を澄ませた。やがて、風に乗ってかすかに聞こえたのは、友が昔歌っていた唄だった。老人は目を見開き、涙を流した。
音はどこへでも届く。光が宇宙の果てまで旅をするように、音もまた、時を超えてさまよい続ける。そして、もしそれを拾い上げることができる者がいるならば——
彼は思った。この世界には誰にも聞かれない声が、無数に眠っているのではないかと。
彼はその夜、空を見上げた。星が光を届けるように、音もまた、どこか遠くから届いている気がした。
「彼方からの音」了
あとがき
光は宇宙空間を伝わることができるが、音は媒質が必要であり、真空の宇宙では伝わらない。ただし、もしも「音の記憶」を残す何かがあったとしたらどうだろう。たとえば、太古の地層に刻まれた振動、あるいは重力波のささやきのように空間そのものがわずかに震えていたとしたら——。いや!全ての音はホワイトノイズの海に紛れて漂っているに違いない。
そんな微かな「音」を拾うことができる技術があれば、過去の囁きを聞くことができるかもしれない。
ふと涙を流す人は、もしかすると無意識のうちにそうした「彼方からの音」を感じ取っているのかもしれない。
追伸
最近聞こえるようになった耳鳴りとともに・・・(笑)
2025/3/2 水平線のうた
NHK土曜ドラマ「水平線のうた」前編を見た。まだ全体はわからない。それでも、どこか「彼方からの音」と似たところがあるように思えた。この物語を見た人の中には、これから僕がインスピレーションを得たのではと思う人がいるかもしれない。けれど、そうではない。大元が違う。ただ、それでも、どこか似た雰囲気があった。
楽譜に想いが残される、という話でもある。僕は楽譜が読めない。だからといって楽譜を否定したわけではないが、楽譜なんかなくたっていい、と思ったことはあった。でも、思いを楽譜にできる人がいて、それを読み取れる人がいる。そんなことを、あらためて思った。