2024/12/22
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第一章:愛を求める孤独
私は、昼下がりの喫茶店「1.9Lの魔法びん」に足を踏み入れる。外の世界とは違う、時が止まったような空間。壁に掛かる古びた柱時計の音がかすかに響き、窓辺には枯れたドライフラワーが並んでいた。カウンター越しに、店主のマスターが静かにコーヒーを淹れている。その様子をぼんやりと眺めながら、私は心の中で繰り返す。
— 愛とは何か。
マスターは無口な男の前にブラックコーヒーを置いた。その男はほとんど会話をしない。しかし、私の視線を受けると、不意に言葉を落とした。「愛は、何かを壊すことかもしれない。」その一言に私は驚く。壊す? 愛は与えるものではなかったか? 求めるものではなかったか?
第二章:怪人案単多裸亜の言葉
翌日、私は再び店を訪れる。そこで出会ったのは奇妙な男――怪人案単多裸亜だった。派手な装いに不釣り合いな古びた帽子を被り、口元には煙草を咥えていた。
「愛? そんなものを探してるのか。」
怪人は鼻で笑い、テーブルを指で叩いた。「愛なんてものは、ひとつの真実を隠すための嘘だよ。」私は反論しようとしたが、言葉が出なかった。その言葉が妙に心をえぐる感覚に陥ったからだ。「でもね、嘘でもいいんだよ。」怪人は続けた。「それが誰かを救うなら。」私はふと、若かりし頃の恋愛を思い出す。好きだと口にしながら、相手に求めるばかりだった自分を。
第三章:父と愛犬の死
私は愛を求めることに疲れ、すべてを諦めかけていた。しかし、父の死が訪れると私の内側で何かが変わった。
「愛していたんだ。」
静かに手を握ったあの日、私は確かにそう思った。そして愛犬が老いていく姿に涙を流すたび、愛の形が変わっていくのを感じた。それは決して完璧ではなく、不完全であるがゆえに美しいものだった。
最終章:愛を受け入れる
再び喫茶店を訪れた私は、無口な男にこう話しかけた。「愛は壊すことだって言ったよね。」男は黙って頷いた。「でも、壊れたあとで初めて気づくものもある。」怪人案単多裸亜はそのやり取りを遠くから見守りながら、ニヤリと笑う。
「愛とは何かを知ったか?」
私は静かにコーヒーを飲み干し、こう答える。「わからない。でも、わからなくてもいいと思えるようになった。」店の扉を開けると、風が吹き抜けた。彼はどこか軽くなった心を抱きながら、次の一歩を踏み出していく。
あとがき
「愛がわからない」そんな言葉が日記にいくども現れる。
愛とは何かへの疑問
愛がわからない(2024/12/22、2024/9/29、2023/12/7)
愛は惜しみなく与えるものなのか(2024/9/29)
自分の中に愛があるのか(2018/10/14)
愛と人間関係の矛盾
人恋しさと孤独を求める矛盾(2024/9/29)
愛を語ることの難しさ(2024/7/5)
好きという感情の裏に潜む嘘(2023/9/5)
愛の経験と思い出
初恋、失恋、結婚、離婚、さまざまな愛の形(2023/12/7)
過去の甘酸っぱい記憶(2019/1/14)
愛の普遍性と不完全性
愛と戦争、幸福、不幸などの哲学的問い(2024/1/3)
他人と比べられない愛の悲しみ(2022/3/12)
自己と愛の探求
自分を知ろうとする試み(2024/1/3)
ほんとうのじぶんを取り戻す努力(2024/1/3)
これはそうした疑問から一つの光を見出そうとした試みの一つ。
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