2018年4月10日
試聴用ハイレゾ音源をダウンロードして聴き比べを行なった。
■その1
AutoGate(KORGのPC用アプリ)の音源情報画面
Blue Monday FM “Bee Moved”より
圧縮音源(48 kHz/16 bit AAC 192 kbps)サイズ 1.3MB
ハイレゾ音源(96 kHz/24 bit FLAC)サイズ 16.7MB
ハープで始まり、パーカッション、ベース、女性ボーカルとコーラスのノリがいい音楽。サイトの説明では、ハイレゾ音源の特徴として高音域が出力されると書かれているのでそこらへんに注目して試聴を繰り返し行った。また自分の耳だけでは頼りないので、FFTWaveVer1.1(iPhoneXの波形解析アプリ)を使用して4312MIIの音をFFT解析した。
圧縮音源(AAC)の周波数特性
ハイレゾ音源(FLAC)の周波数特性
AudioGateに取り込んで再生しJBL4312MIIから出力される音を評価した。同じ楽曲をAACとFLACにした音源で、ファイルサイズがずいぶん違うから確かにデータは別物なのだが。ほとんど同じに聞こえる。ブラインドで聞いて、どちらがハイレゾか答えることは、私にはできない。FFT解析の結果、緑の波形は現在波形のため無視するとして、赤はピーク値、紫は平均値でそれぞれの音源の周波数成分を示している。10kHz以上のあたりでピーク値がハイレゾの方が若干高くなっているような気もするが、大差ないようにも見える。耳で聞いて違いが感じられないのが裏付けられているように思う。
■その2
AutoGateの音源情報画面
iTunesの音源情報画面
ファインダーで見るダウンロードデータ
曲名:Keep your side(各45秒試聴版)
ハイレゾ音源 (WAV/192kHz/24bit) サイズ 50,593KB ハイレゾ音源では力強いピアノタッチやグランドピアノの残響感が緻密に表現され、それでいてすっきりとした透明感のある音の響きが聴き取れます。
CDレベル(WAV/44.1kHz/16bit) サイズ 7,747KB CDレベルでは、音場感は維持しているもののハイレゾに比べると透明感が落ち、グランドピアノのメリハリ表現がやや不足しています。
MP3 (圧縮音源/128kbps) サイズ 760KB MP3になると音の奥行き感やキータッチの滑らかさが消え、平面的な音になっています。グランドピアノのダンパー音は実際の音と異なり、ダンパーが軽いように聴こえます。
上記はJVCの解説。これをAudioGateとiTunesに取り込んで6通りの再生を聴き比べた。同じに聞こえる。違いがわからない。当然ブラインドで聞いてハイレゾがどれか答えられないだろう。周波数特性は3種類の音源をiTunesで再生しMacのスピーカーの音と、JBL4312MIIの音の6パターンで比較した。
ハイレゾ音源 Macのスピーカー
CDレベル Macのスピーカー
MP3 Macのスピーカー
ハイレゾ音源 JBL4312MII
CDレベル JBL4312MII
MP3 JBL4312MII
同一スピーカーでは音源による違いは少ないが、明らかにスピーカーの周波数特性の違いは見ることができる。全般的にJBLの方が特性が滑らかだ。耳でも聞き分けることができる。
■その3
AutoGateの音源情報画面
you (mora ver.) 24bit 96.0kHz
VOICES 24bit 96.0kHz
VOICES tilt-six Remix feat. Miku Hatsune 24bit 96.0kHz
VOICES 能楽 ver. ~featuring 一噌 幸弘 24bit 96.0kHz
VOICES Marimba ver. featuring SINSKE 24bit 192.0kHz
VOICES Piano ver. ~featuring 大井健 24bit 96.0kHz
VOICES Heartbeat ver. 24bit 96.0kHz
VOICES Sax ver. ~featuring 矢野 沙織 24bit 96.0kHz
VOICES guitar ver. feat. YUKI 24bit 96.0kHz
VOICES ハーモニカ ver. ~feat. 南里沙 24bit 96.0kHz
24bit 96.0kHzと24bit 192.0kHzの音源でフルバージョンの楽曲をAudioGateに取り込んで再生した。同じ楽曲でファイル違いがないので比較はできないが、この後Apple Musicで適当に聞いて感覚を比較。音のクリアーさ、キレ、息遣い、小さな音の鮮明さ、空気感など、聴き比べる。音源のデータ量の差は感じることができない。Apple MusicのAACオーディオファイルの音とハイレゾ音源の音で明らかに質感が違うというものは見出せない。耳をそばだててさえそうであるのだから、通常音楽を楽しむような状況で、混ぜて聞いても、なんの違和感もなく聞いてしまうだろう。
■現状のまとめ
12曲(ポップな女性ボーカル、ピアノソロ、シンセ、初音ミク、能楽、マリンバ、サックス、ギター、ハーモニカ)の曲調の異なる楽曲を6種類のデータ形式で聴き比べた。
24bit 192.0kHz(WAV)
24bit 192.0kHz(FLAC)
24bit 96.0kHz(FLAC)
16bit 48 kHz(AAC192kbps)
16bit 44.1kHz(WAV)
MP3 128kbps
非圧縮のハイレゾからMP3まで聴き比べた結果、同じ楽曲でデータの違いは、私の耳では明らかな差を聞き分けることができなかった。どれがハイレゾ音源か答えることは不可能。MP3でも十分に楽しめる。
原因と思われること
私の耳では聞き分けられない程度の差しかなかった。
真空管アンプの出力トランスの特性の影響でほぼ同じ結果となった。
操作を誤って全て同じ再生条件になっていた。
DS-DAC-10Rのインジケータが曲のサンプリング周波数に応じて緑、紫、白に切り替わっていることから3ではない。2については、TRK-3488の周波数特性が20Hz~40KHz、4312MIIの周波数特性が55Hz ~ 50kHzであることから、可聴上限の22kHzをじゅぶんにカバーしている。出力先を4312MIIとMacの両方で実験したが、いずれも耳で聞く限り音源の違いを聞き取れなかったので、出力トランスの特性のせいでもないと思われる。このことから1の私の耳では聞き分けられないということになる。
参考までにMacのサウンド設定とオーディオ設定は以下の通り
■結論
世間の噂に惑わされハイレゾは良いに違いないと飛びついたが、私に認識できるレベルの違いはないかもしれない。つまり現状のApple MusicのAAC256kbpsの音源で十分ということになる。ハイレゾに関しては引き続き調べようと思う。近日中に参加するオーディオ店での「2018年デジタルファイル再生試聴会」で、もう少し何か分かるかもしれない。
■追記
かつてFFTアナライザーは非常に高価であった。今や無料のアプリで手軽に測定の真似事ができる。たいしたものである。無響室で測定しているわけではないので、環境音のあるいい加減な測定ではあるが、大雑把な比較ができるのはありがたい。資料がそれらしくなる。願わくば20kHz以上の特性も見たかった。
2018年6月1日
宇多田ヒカルの「初恋」がハイレゾで配信開始された。そこには「ハイレゾ音源はCD音源と比較すると、情報量(ビットレート)が約3倍~6倍、AAC-320kbpsと比較すると約14~19倍となり、ファイルサイズも比較的大きくなるため、回線速度によっては10分~60分程度のお時間がかかる場合がございます。」と書かれていた。1曲を聴くために60分もかかるなんて実用的ではないこと甚だしい。音質にさほど差を感じられらないならAACは誠に実用的な音源なのだろうと改めて思う。