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執筆者の写真napple

川瀬巴水

更新日:5月24日

2023/2/24


 川瀬巴水の名はスティーブ・ジョブズが彼の絵を好きだったということを聞いた時に初めて知った。それはNHKの日曜美術館だった気がする。彼は衰退した浮世絵版画を復興すべく、吉田博らと共に新版画を確立した。日本の美しい風景を抒情豊かに描いた彼は「旅情詩人」「旅の版画家」「昭和の広重」と呼ばれた。おりよく駿府博物館で生誕一三〇年 特別展「川瀬巴水展-郷愁の日本風景」 を見ることができた。彼が描く日本の風景は独特の美しさがある。自分でも描きたいと思うのだが、なかなか描くことができなかった。


 

川瀬巴水の絵をイメージして描いた絵がある。

2016/7/13 伊勢神宮内宮神楽殿

 版画は何枚でも刷ることができる。刷るたびに色彩が違う作品ができる。それは再生するディスプレイによって色彩が異なる、コンピューターで描いた場合に似ているかもしれない。オリジナルの色はあるけれど、それ以外の色もありなのだ。今私の描く絵は、版画というよりはシルクスクリーンに似たものかもしれない。コンピューターの力を借りて描く作画方法には、もっと面白いことができそうだ。そんなものに出会えれば素敵だとおもう。今回の伊勢神宮は友人と訪れた時に撮影した写真をもとに、吉田博や川瀬巴水をイメージして描いた。「ねずみ版」と呼ばれるぼかし専用の版木をイメージして陰影のレイヤーを何層か挟んで描いた。

2016/7/14 芦ノ湖平和の鳥居

 友人と箱根を訪れたときの一枚、実際の写真の富士はもっと小さく写っているのだが、記憶の中の富士は大きく感じた。そこでこの絵では富士を大きく位置も少しずらして描いている。写真を見て絵を描くとき、その写真がどんな絵になってゆくのか、それが見えるときと見えないときがある。見えないときはそのまま写真を写しただけの絵になる。たまに、こんな感じというのが見えるとき、写真とは違う個性を持った絵になる。 

2016/7/15 舘山寺

 昨年の今頃、友人と温泉卓球をしようと訪れた舘山寺の、静かな水面と雲、水面の反射が映る船のある風景。水の質感を描きたい。流れる水、逆巻く水を描いてみたい。刻々と姿を変える水の流れを、先人たちはどのようにして捉えたのだろう。そんな景色もいつか描くとしよう。




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