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大友克洋

  • 執筆者の写真: napple
    napple
  • 2023年2月20日
  • 読了時間: 2分

更新日:2024年5月24日

大友克洋との出会いは「もう気分は戦争」だった。

私が出会った大友克洋の作品。

  1. 1982年:もう気分は戦争

  2. 1983年:童夢

  3. 1983年:AKIRA 1-6

  4. 1983年:幻魔大戦 キャラクターデザイン

  5. 1987年:ロボットカーニバル

  6. 1986年:迷宮物語

  7. 1991年:老人Z

  8. 1995年:MEMORIES

  9. 2001年:メトロポリス 脚本

  10. 2005年:スチームボーイ

  11. 2006年:FERRDOM-PROJECT

  12. 2018年:犬ヶ島 イラスト

  13. 2018年:NHKスペシャル 東京リボーン デザイン監修

「もう気分は戦争」は妙に気になりながら読む機会を逃していた。そして、社会人になりたての頃友人に頂いた。自分でお金を出して手に入れないと、どこか疎かになる。絵のタッチに興味を持つのだがストーリーに乗ってゆけなかった。  ところが次に出会うこととなった星雲賞、日本SF大賞を受賞した「童夢」の緻密さに心を奪われ。団地をこんなにも印象的に描けるなんて。  そして「AKIRA」に出会う。ついに、絵も物語も装丁もクールな作品が現れた。なんと言っても絵がすごかった。童夢の団地が大都会に拡張され緻密に描かれて、破壊され、俯瞰で魅せられた世界図は驚愕だった。登場するマシンもいちいちかっこいい。唯一女の子が魅力的に描かれていないのが不思議だった。こんなに絵が上手いのに・・・おしいことだ。  その後も幻魔大戦のキャラクターデザイン、ロボットカーニバル、迷宮物語・・・とどれも絵が素晴らしく、女の子が可愛くない。  だからだろうか、老人Zではついに女の子がとても可愛くなる。江口寿史がキャラクターを担当したのだ。大友さんは、原作脚本メカニックデザインを受け持っているのだが、キャラクターをよりによって、かわい子ちゃんを描かせたらピカイチの江口さんに頼んだのだから、相当色々なことを思ったに違いない。  MEMORIESでは菅野よう子を音楽に迎え、画風にも新たな面白みが加わり、女の子が可愛くなくてももうそんなことは気にならない、そんな方向性が見える。  メトロポリスでは脚本に徹し、アメリカでは史上最も優れたアニメの一つと評されている。  スチームパンクを素晴らしい映像で描いたスチームボーイだったが、なにかが物足りない。またしても女の子問題だった。ここに来てはっきりしたことは、大友さんの作品はとにかくマシーンや街並みの構成映像映し方が抜群なんだけど、人がどこか死んでいる。生きた人の感じがしないのだ。特に女の子が操り人形のような空虚な感じがしてのめり込めない。  カップヌードルのコマーシャルと宇多田ヒカルの音楽を得てかっこいい世界を見せてくれた。大友さんはキャラクターデザインに徹していた。



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napple
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Apr 11

2025年3月30日 大友克洋


 浦沢直樹の「漫勉neo」を観た。今回の回は、大友克洋である。


 番組が始まるとすぐに、画面の中にその人が現れた。あれほどの名を持つ人なのに、姿は少し照れくさそうで、肩をすぼめて座っていた。神々しいどころか、むしろ気のいい町の本屋のご主人といった風情で、少し拍子抜けする。だが、その気安さの向こうに、長年培われた鋭さが、ふとした言葉や眼差しに滲む。


 大友氏のことは、ずいぶん昔に「気分はもう戦争」で知った。そのタイトルの不穏さと、妙に寡黙な表紙絵に引かれて手に取ったのだが、読んでみると、どうにも要領を得なかった。だが、その何かが心に残ったのか、「ショートピース」「ハイウェイスター」「さよならにっぽん」と、次々に読んでみる。やはり、どれもすっきりとは腑に落ちない。けれど、描かれる一場面一場面が、なぜか忘れがたく、折にふれて思い出す。


 そんな折、「童夢」に出会った。これは驚いた。物語の入口に足を踏み入れたとたん、もう引き返せない。団地の俯瞰、夜の気配、壁にめり込む老人の背。擬音の一つ一つにさえ、異様な実在感があった。


 続いて「AKIRA」を読み、言葉もなかった。画面が走る。音が聞こえる。描かれた線が、静かに紙の上で爆発する。


 その後は、「幻魔大戦」のベガのデザインに感心し、「老人Z」ではキャラクターデザインをしていなかったことに妙な納得を覚えた。どうにも彼の描く女の子は、私には響かない。そこへいくと、江口寿史の女の子は、もうそれだけで世界が一つできてしまう。


 「スチームボーイ」は映像が美しかった。蒸気と機械と少年の姿。それでも、物語の芯がどこか淡く、心にしっかりとは残らなかった。思えば「童夢」と「AKIRA」があまりに強烈だったのだ。


 それでも、大友克洋という名前を目にするたび、私は自然と期待してしまう。「ロボットカーニバル」「迷宮物語」「MEMORIES」――どれも映像は見事だが、登場人物には、どこか体温が感じられなかった。


 すごい、と思う。けれど、物足りない。それでもやはり、すごい。そういう作家なのだろう。


 今回の番組もまた、静かな感動に満ちていた。できることなら、彼が机に向かって絵を描く様子を見てみたかった。それだけが、少し惜しまれる。けれど、それを差し引いても、見てよかったと思える時間だった。


 春の風が、ふとカーテンを揺らしていた。

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