彼を知ったのは、映画「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」だった。映画の中盤でメガネが日常を語る語り口に押井さんを感じた。そしてTVの「うる星やつら」の印象的な作品も手がけていたことを知った。その後「天使の卵」の難解さに呆れつつ不覚にも尊敬してしまった。「パトレイバーThe Movie」でこれぞ押井さんだと密かにワクワクしていたら、2でさらにワクワクを極めてくれた。ところが「GHOST IN THE SHEL/攻殻機動隊」は海外の賞賛を得たが自分としては今一つピンと来なかった。むしろ攻殻機動隊は神山さんのS.A.C 2nd GIGが気に入っていた。しかしこれも押井さんが噛んでいた事を知り、なるほどと思った。とにかく押井さんが噛んでいる作品は面白い。非日常的な出来事を日常のように抑えた口調で淡々と語る演出がたまらない。
ところで、押井さんというのは何者なのだろう。映画監督、演出家、小説家、脚本家、ゲームクリエーター。いろいろ肩書きがあり、彼の作品を少なからず楽しませてもらったが、よくよく考えると、押井さんの絵を見た記憶がない。うる星やつらは高橋留美子だし、天使のたまごは天野喜孝、パトレイバーはゆうきまさみ、攻殻機動隊は士郎正宗だ。どこにも押井さんの絵らしいものがみあたらない。絵コンテをみるとあまり上手くないように見える。それでも出来上がった作品は素晴らしい。手塚さんや、宮崎さんみたいな立ち位置の人ではないようだ。変な例えだがジョブズ的な感じか。
見たことがある押井作品。
1977年 ヤッターマン(TV)
1978年 科学忍者隊ガッチャマン(TV)
1980年 ニルスのふしぎな旅(TV)
1981年 うる星やつら(TV)
1983年 うる星やつら オンリーユー(映画)
1984年 うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(映画)
1985年 天使のたまご(OVA)
1989年 機動警察パトレイバー The Movie(映画)
1993年 機動警察パトレイバー2 The Movie(映画)
1995年 GHOST IN THE SHEL/攻殻機動隊(映画)
2000年 人狼 JIN-ROH(映画)
2001年 アバロン(実写)
2004年 イノセンス(映画)
2006年 立喰師列伝(実写)
2008年 スカイ・クロラ(映画)
2014年 THE NEXT GENERATIONーパトレイバーー(実写)
押井さんは竜の子プロに入社して「ヤッターマン」で演出デビュー、スタジオぴえろに移籍して「ニルスのふしぎな旅」の演出を手掛け、テレビ版「うる星やつら」のチーフディレクター。「うる星やつらオンリー・ユー」で映画監督デビュー「ビューティフル・ドリーマー」以降フリーで活躍する。押井さんの印象は髭面にニット帽をかぶって斜に構えた感じ。口を開くと辛辣なことをいう。宮崎さんも辛辣な点では同類かもしれない。
没になった企画が興味深い。いっぱい没企画があったようだが下記の作品は見たかった。
押井版ルパン三世
押井版銀河英雄伝説
押井版鉄人28号
ガメラ2レギオン襲来の自衛隊のシーンの監督
押井版南総里見八犬伝
「天使のたまご」制作に庵野さんが参加していたらしい。想像を絶する仕事量による修行僧の世界に耐えかねて2週間で逃げ出したらしい。
声優榊原良子は「押井さんを知ろうとしないし、アプローチしないし、俯瞰で見ていたい。分かりたくないし、分からなくていい。何が出てくるのかを見ていたいと思っています。」とコメントしたという。きっととんでもないことがあったのだろう。ただ彼らは、どんなことがあろうと、それを乗り越えて良い作品を生み出している。
素晴らしい作品の裏には、いっぱいいろんなことがあったのだろう。Appleもジョブズと戦った大勢の社員たちがいたみたいだし。
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