可愛い
- Napple
- 1 日前
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2025/4/27

テレビの音が、ぼんやりした昼下がりにふと耳に引っかかった。「脳科学的に、“可愛い”は“正義”と結びついているんです」と誰かが言っていた。人間が可愛いと感じるのは理屈ではなく、反射のようなものだという。つまり、考える前に、もう心が動いてしまっているらしい。
なるほど、だから子供が可愛いのは、自然が用意したプレゼント、いや、もっと言えば「守らせるための鎧」のようなものかもしれない。言葉も話せず、何もできないその小さな生きものが、こちらの中でどこか熱いところを突いてくる。たしかに、あれに敵う者はなかなかいない。
ところで最近は「あざと可愛い」という言葉を耳にする。「可愛い」と「ずるい」の距離は、案外近いのかもしれない。「あざとい」は、計算して愛嬌を振りまくことを言う。つまり、「相手の気持ちを動かす手段」としての可愛さだ。思うに、自然が仕掛けた“可愛い”そのものが、実はこの「あざとさ」をすでに持っているのかもしれない。
……などと、うだうだ考えていたら、とうにコーヒーは冷めてしまっていた。なんのことはない、誰に頼まれたわけでもないのに、「可愛いとは何か」を考えていたわけで、そもそも考えるようなものじゃない気もしてくる。感情には、理屈を超えてくる瞬間がある。
それでも、なお不思議なのだ。なぜ、あんなにも簡単に心を許してしまうのか。なぜ、あんなにも自然に、こちらの中にぬるりと入り込んでくるのか。そう思ってしまうあたりが、私のへそ曲がりたる所以かもしれない。
まあ、それでもいい。可愛いは、可愛いのだ。たとえそれが自然の策略だったとしても、私は抗わない。いや、抗えないのだ。それで困ることは、たぶん、ないのだから。
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