2023/12/8
散歩に出かけると空っぽの「横断旗入」が目に止まった。道路向こうの「横断旗入」も空っぽだった。おや!これは!もしかすると!・・・トマソン!!ではないか。
トマソンとは赤瀬川原平著「超芸術トマソン」による「不動産と一体化しつつ「無用の長物的物件」となった建築物の一部」の事である。「横断旗入」はトマソンの分類に該当する物件が見当たらない。新種の発見である。
しばらく歩くと、まだ生きている「横断旗入」を発見した。生きていると判断した理由は、こちらにも向かい側にも「横断旗」が入っているし綺麗なことだ。生きている「横断旗入」の存在が、トマソン化した「横断旗入」をトマソンたらしめる気がする。それはさておき、使いたい時に使いたい側にあるとは限らない「横断旗」と言うシステムに昔から疑問を感じていた。
散歩はトマソン探索に変わった。数分歩くと、トマソンらしき物件をまたしても発見。これをトマソンというのは強引かもしれない。全くの無用ではないからだ。しかし、転落防止としては頼りなく。両脇から溝にいくらでも落ち込む可能性があるこの柵は、もはや「境界」に分類されるトマソンと言えるのではないか。
さらに歩くと、ついに「無用門」タイプのトマソンを発見。歩道の縁石も出入り用にしつらえられ、かつては立派な門だったはずだ。今は内側が植栽で塞がれもう門としては使用できない。だが塞がれてなを門としての威厳を保っている。
住宅街を散策してもなかなかトマソンに出会わない。ところが工場や農地の広がる区域はちょっと歩いただけで3件のトマソンに遭遇した。しばし散歩は住宅地を離れ、工場・農地地帯を歩いてみよう。
散歩から帰宅して我が家をよく見ると、「高所」に分類されるトマソンがあるではないか。2階にあったベランダが朽ちたために撤去して扉が残っている。まさに普段ある場所よりも高いところに存在しているために違和感をもたらす構造物。二階にある取っ手付のドア。よく観察すればご近所さんにもあるかもしれない。
「超芸術トマソン」に出会ってかれこれ30年。出会った頃は街中にトマソンを探したこともあったが、記録をつけることもなく忘れていた。トマソンは探そうとしてもどういうわけか見つからない。出先でふと不思議な構造物を見つけると「トマソン」かなと心のどこかで思いつつ忘れてしまう。今回は幸運だった。近所にはトマソンの様にも思えてしまうモニュメントがある。トマソンを見つけるとわけもなく嬉しくなるのはなぜだろう。
2023/12/15
工場・農地地帯を歩いてトマソンを発見して以来、しばし住宅地を離れた散歩をしているが、その後トマソンの発見には至っていない。看板の褪色や、記念碑の一部損壊などで、もともとの意味がわかりにくくなった「蒸発」タイプならありそうに思ったが、ご近所さんはこまめに修復をしていて残念なことにトマソンになり損ねている。
2023/12/8
Wikipediaより
トマソンの分類
無用階段:純粋階段ともいわれる。上って下りるだけの階段。もともとは階段の先に扉などがあったものが多い。設計変更などの原因で、新設当時から無用階段になってしまっていたものも存在する。
無用門:塞がれてしまってもいまだ門としての威厳を保っている門。また、塀や壁などが無く、本来なら門を必要としないはずの開放された場所に設置されている門も「無用門」(『トマソン大図鑑』では松田が「逆無用門」という呼称も用いている)に分類される。
無用庇:下にあった窓や扉が無くなってしまったにもかかわらず、雨を防いでいる庇のこと。
無用窓:塞がれた窓。塞ぎ方に念が入っているものが美しい。
ヌリカベ:無用門や無用窓と重なる。塞いだ窓や門の跡。コンクリートで塗り込めても完全には隠しきれていない領域。周囲との微妙な差異を楽しむ。
原爆タイプ:平面状のトマソン。建物などの痕跡が、壁にシルエット状に残っている物件。密集して立てられていた建物群の一部が取り壊された場合などに出現する。水により発生した場合は「水爆」、看板などがはずされたときにできたものは、「中性子爆弾」と言う。なお、トマソン観測センターのFacebookでは、報告者に「原爆タイプ」の名称を避け「影タイプ」等の名称に言い替えるよう推奨している。
高所:物体そのものは正常だが、普段ある場所よりも高いところに存在しているために違和感をもたらす構造物。二階にある取っ手付のドアなど。階段が取り壊された場合に出現することが多いが、内側にクレーンなどが格納されている実用的な扉であり、汎用の扉部品を使ったためにそうなったというものもある。
でべそ:塗り込めた壁からわずかに飛び出た、ドアノブや蛇口などの小さい突起物。
ウヤマ:看板や標識の文字が一部消えているもの。最初の物件が「(文字欠落)はウヤマ/卯山(文字欠落)店」というものだったのでこの名前が付いた。
カステラ:壁面から飛び出した直方体状の部分。出窓の塗りつぶしなどで発生する。また、逆に引っ込んでいる部分は「逆カステラ」と呼ばれる。
アタゴ:道路脇にある意味不明の突起物。車の駐車禁止のため役に立っている可能性もある。トマソン探索初期、赤瀬川らが新橋から愛宕山に向かう途中でこれの第一号を発見したため、アタゴという名前が付けられた。
生き埋め:路上の物件の一部がコンクリートなどで埋められているもの。
地層:地面に断層が形成されたもの。同一箇所を複数回工事したときなどに見られる。
境界:ガードレール、柵、塀など、境界を表示する物件で、意味が即座に理解しがたいもの。
ねじれ:通常、まっすぐ直角に作られている建築物のなかにおいて、微妙なねじれを有する物件。垂直並行規格で出回っている商品を、斜めに使用した際に発生する。
阿部定:途中で切られた電信柱の跡。阿部定事件から命名。平面状の原爆タイプ。広義では地層物件に含まれる。
もの喰う木:木が、柵やワイヤーなどを飲み込みながら成長しているもの。ただし、これ自体は植物の成長に伴う「巻き込み」などと呼ばれる現象であり、さほど希少な現象ではない上に、障害物の設置以外の要素には人間はからんでおらず、単なる自然現象である。『超芸術トマソン』に於いては「植物は強しタイプ」という呼称も見られる。
無用橋:埋め立てられた川に架かる橋など、無用となっている橋。ただし、暗渠化されているケースでは、地下に空洞があるため、自動車などの重量物を通す道は橋梁構造にしておく必要がある。そのため、本格的に無用であるとは言い切れず、「外見的に無駄に見える」というだけの理由による。
純粋タイプ:分類不能で、実用的意味が考えられないもの。開けると壁面の「純粋シャッター」、山の無い場所にトンネルだけが存在している「純粋トンネル」など。四谷階段もこちらに分類される。
蒸発:看板の褪色や、記念碑の一部損壊などで、もともとの意味がわかりにくくなっているもの。物質の材質的寿命によることが多い。特に看板では目立つ色として使われる赤系統のペイントは褪色しやすく、一番のキャッチコピーや商品名が時間経過とともに読めなくなるといった現象が現れやすい。