1978/7/19
鹿島槍を超えて冷池に向かう頃、合宿の中盤だった。先頭を歩いていたコースリーダーの2年生が錯乱状態になった。連日の12時間行動の強行軍に加え、先頭を歩くコースリーダーとしての責任で参ってしまったのだった。数日前別の2年生が調子を崩し下山して現地本部入りしたため、残った2年生の負担が増えてもいたのだ。1週間前に下見で入山した時の記憶と混じったような言動を取り、上着を脱ぎ、身につけているものをまき散らし始めた。サブリーダーにパーティを任せて先行してもらい。木陰で休息させ、雪渓にコンデンスミルクをかけ食べさせた。数日後に予定していた沈殿日を繰り上げ、一日休息を取った。ちょうど次から先頭を交代するタイミングでもあり、錯乱した2年生は下山することなく最後まで行くことができた。苦しい山行だった。思い出深い山行だった。ブロッケン現象に出会ったのもこの合宿だった。気象条件と時間とポジションが揃わなければ見られない現象で、東から昇った太陽を背に、西側の雲海に自分の影を見るのである。影には深さがあり周囲にリング状のハレーションが見える。不思議なことに全員自分が中心の影を見ることになる。午前中冷えて沈んでいた雲海が温められて昇ってゆき、稜線を超えて、湯船の湯気が溢れるようにトロリトロリと流れるのも不思議な景色だった。
ルート B-party
1978/7/19 蓮華温泉△
1978/7/20 蓮華温泉△→天狗の庭→大池小屋△
1978/7/21 大池小屋△→乗鞍岳→白馬岳→天狗山荘△
1978/7/22 天狗山荘△→不帰キレット→唐松岳→五竜山荘△
1978/7/23 五竜山荘△→五竜岳→鹿島槍ヶ岳→冷池山荘△
1978/7/24 冷池山荘△→爺ヶ岳→スバリ岳→針ノ木岳→針ノ木小屋△
1978/7/25 針ノ木小屋△→蓮華岳→北葛岳→船窪キャンプ場△
1978/7/26 船窪キャンプ場△→船窪岳→不動岳→烏帽子岳→三俣山荘△
1978/7/27 三俣山荘△→双六岳→西鎌尾根→槍ヶ岳→殺生小屋△
1978/7/28 殺生小屋△→一ノ俣小屋→横尾山荘→徳沢園△→小梨平
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