222 古文書読解講座 第3回目
2018年10月20日土曜日
「土地を担保とした借金の証文」を読解する。1700年代は既に何度も検地が行われ田地の地価は定められていた。地方凡例録(ジカタハンレイロク)などで詳細を知ることができる。これを元に貸し手・借り手双方の合意で金額を決め貸し借りを行なっていた。この「質地証文」は売主西恩地村の佐兵衞と金主安松村の治兵衞との間に取り交わされたもの。
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本證文左之(裏書)
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五年季売渡申名職田地之事(質入れ期間5年の申し入れ)
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高合壱石五斗七升八合七夕壱才目 御納所高(1.57871石の価値)
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此代金拾両弐分成(借用金子10.2両)
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右は我等身体まかりならず候につき銘々御年貢の借り金当御年貢明米
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さしつまり我等持ち高壱石五斗七升八合七夕壱才目金子十両二分に
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値段相決め五年季にその方に売り渡し金子残らず只今受け取り
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御年貢並び銘々の借り金諸払い仕り所の田地御年貢お役等の儀は
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当村みなにその方よりお勤めなさるべく候すなわち坪帳書付相渡し申し候
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もし畝歩相違そうらわばいつ時なるもとも證人立会い改め相渡し申すべく候
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・・・(略)
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正徳5年未(ひつじ)12月(1715年12月)
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西恩地村 売主 佐兵衞 印
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同証人 次郎 印
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・・・(略)
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安松村 治兵衞殿 参(まいる)
こんな感じ。ここに登場する「名識田地」とは「借金のかたとして手に入れた田畑を売るよ」ということで本田を売るわけではないらしい。この「質地証文」はほぼ型通りの形式で書かれている。1.端書(はしがき)、裏書、2.質地証文・質入れ期間、3.質地の価値、4.借用金子、5~11.質入れ田地に付随の権利、返済条件など、12.年号、13.置主、14.証人、名主、16.金主となっている。
古文書を読む上で知っておきたい江戸時代の度量衡
漢数字
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
壱 弐 参 肆 伍 陸 陸 捌 玖 拾
容積
コク ト ショウ ゴウ シャク サイ
石 斗 升 合 勺 才
面積
チョウ タン ウネ ツボ
町 反 畝 坪
実際には筆による書き文字なので、人それぞれの崩し方をしている。読み解くためにはこれを見定める必要がある。本証文の書き手は糸偏を金偏のような崩し方で書いているため、そのままでは読めないそうだが、そのような癖、あるいは覚え違えによるものと推定して読む。本文の「候(そうろう)」などにあたる箇所はほとんど「、、」と書いてあるだけだが。定型の文言を知ることで、音読すれば自ずと判読できるようになる。なかなか奥が深い、ちょっと聞きかじったぐらいで読めるようになるものではない。