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208 涅槃図の解説と絵解き

2018年2月11日日曜日

今回のお話ダイジェスト

■ ネズミと猫
お釈迦様が涅槃に着くときに、天上界からお釈迦様のお母さんが駆けつけます。涅槃図の右上の雲に乗った一行がお母さん達です。ところが間に合わないと見て、不老長寿の薬の入った袋を投げるのですが、沙羅双樹の木の枝にひかかります。ネズミがそれをお釈迦様に届けようと駆け上ろうとするのですが、猫がこのネズミを食べてしまったので、お釈迦様は薬を飲むことができなかったのです。
そうしたことから涅槃図には描かれないという猫、そんな猫が描かれた涅槃図は珍しいとされて来ましたが。じつは目立たないようにひっそりと描かれた涅槃図が全国に多くあるようです。

■奇妙な動物
涅槃図には多くの奇妙な動物、架空の動物が描かれています。その中にジャコウネコがいます。ふさふさの尻尾の猫でも犬でもない格好をしています。岡崎の大樹寺に雌雄のジャコウネコの絵が伝わっています。どうやらこのジャコウネコが涅槃図にも描かれているようです。ジャコウネコは民間信仰の中で小正月に現れて、ジャコウネコが座ったところが薬になるとありがたがられた存在のようです。香水やコーヒーで有名なジャコウネコとは別物。

■学術的な価値
涅槃図は室町時代、鎌倉時代、江戸時代いずれも古い時代に描かれたもので、そこに描かれた動植物から、当時の動植物の姿が垣間見れるようです。京大の教授から涅槃図に描かれたミミズの絵を送って欲しいという要請があり、見てもらったところ、日本古来のクソミミズが描かれていたそうです。ナメクジ学会やミミズ学会では古い文献に、ミミズやナメクジの絵はなかなか見つからないが、涅槃図には多く見ることができるため貴重な資料となるそうです。

■唐獅子牡丹、獅子身中の虫
涅槃図に唐獅子が牡丹を咥えた姿が多く描かれています。百獣の王である獅子も唯一敵わない相手が獅子身中の虫でした。この虫を退治する薬が牡丹の梅雨だったということから、牡丹を咥えた獅子が描かれるようになったそうです。

■末期の水
涅槃図には沙羅双樹の木の間に隠れるように川(バツダイガ)が描かれています。お釈迦様が水が飲みたいと言われてので、阿那律尊者がバツダイガに汲みに行くと、上流を大勢が渡ったために濁ってしまって飲める状態ではありません。お釈迦様にそのことを話すと、もう一度汲みに行ってくださいと言われる。再び汲みに行きますがやはり飲めそうもありません。そのことを伝えると三たび汲んで来ておくれというお釈迦様。普通ならもう無駄ですと言い出しそうですが、日所も不平を言わずに汲みにゆくお弟子さん。ついに3度目に水は澄み飲むことができるようになっていたと言います。ヒマラヤの神々が水を澄ませてくださったのです。こうして最後にお水を飲んだことから末期の水と言われるようになったとか。

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