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062 清里へゆく
1983年8月2日火曜日
もうどのくらい前の事だろう 何もできないくせに 何でもできると思ってた時代の事。一人の青年が いつかするであろう何かに憧れながら 何もできない今を 不思議そうに見つめていた。美しい娘に出会い 自分の夢物語を話した。娘は 夢物語にうっとりとした この人と一緒にいれば 素敵な何かが起こりそうな そんな予感がした。いろいろなところへ一緒に行き たくさん一緒の時間を過ごした 一年、二年、三年と 月日が立つうちに少しずつ 何かが違っているような気がしてきた。そう 青年はなかなか夢を叶えられそうもなっかた もう 子供のように 何もかもが叶うなどとは思わなかったけれども 少なくとも 一つくらいは叶うだろうと 思っていたし 叶うべきだった。四年、五年、六年が過ぎた 何かとっても素敵な夢があったはずなのに それが何であったかわからない自分に気がついた 自分は 本当に 素敵な 夢を持っていたのだろうか もしかすると・・・。ふと気がつくと いつもそばにいた娘が 他人を見る目で 青年を見つめていた。
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