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061 ポケバイレース参戦

1982年8月28日土曜日

​スポニチ争奪杯:あやめ池遊園地

ゼッケン32番をつけた俺は、ヘルメット、パット、軍手を身につけ、バイクにまたがりスタート合図を待った。唸りを上げるエンジンの排気音。高まる緊張、俺のレースが今始まろうとしている。この時の心境を表す名言がある。「ホットマインド、クールハート」いい言葉だと思う。チェッカーから合図が出た。1レース6周、この6周走り終えるまで高き緊張が続くのだ。4周目、少しレースに慣れてきた頃だ。6人中第5位、この序列を破るには、やはりコーナーでの追い越ししかない。前を走るバイクがコーナーに入りかけている。彼も俺と同じことを考えているに違いない。俺が勝つには、減速せずにコーナーを回るしかない。やるぞ!!・・・きつい、きつすぎる。ハンドル操作と重心移動がぎこちない。次の瞬間、目の前の景色が回転し、俺の体は空中に放り出され、地面に強く叩きつけられた。緊張しているせいか、どこも痛くない。再び気を取りもどし、バイクを立て直し、キックをかけた。1回、2回、3回、かからない。俺はもうレースに再び参加できないのではないかと考えながら、物言わぬマシーンを見ていた。スタッフが俺の方にやって来て「かからないんですか」と言って、俺に代わってキックをかけてくれるが、かからない。スタフが俺の顔を見て「エンジンが焼けています」と言った。耳にはまだ続いているレースの音が入ってくる。だが俺のレースは終わったのだ。このマシーンのように。これはレースに参加した放浪社の仲間の物語。

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